mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

三浦ベイスターズの心





2016年にベイスターズの監督が中畑清からアレックス・ラミレスに代わった時、私はチームの雰囲気が大きく変わったと感じたことをはっきりと覚えている。


外国人監督ということもあり、親会社であるDeNAはパブリックリレーションズの内容を一変させたのが大きかったのかも知れない。


簡単に言うと英語が増えた。


DeNAベイスターズになってから歴代のチームスローガンを(関係ないかも知れないが)各シーズンの成績(セリーグでの順位)と一緒にまとめてみた。



中畑監督が指揮をとった2012年は、当時モバゲーという商品名に隠れがちだったDeNAという名前を定着させる意図もあって“熱いぜ!横浜DeNA”というスローガンだったが、その後は、“勝”、“心”、“導”という漢字一文字のものだった。


前任の尾花監督が言っていたように、その当時のベイスターズは技術以前の問題だった。


“野手にしても投手にしても、もうちょっとちゃんとできるチームかと思っていた。



「当たり前」のレベルが低い。


強いチームではあり得ないが、自分の打席と関係ないときは ベンチ裏に行ってたばこを吸ったりしている。


それが当たり前と思っているから、そういうところから 意識改革しなければいけなかった。


「ベンチにいて応援しなきゃいけないんだよ」とか、子供に「お礼言いなさい」と教えるレベル。


ギャップを感じたね。“



中畑監督は、こうしたチームの意識改革から始めることになり、次のように言っていた。


“まず挨拶から、という基本中の基本から叩き直す”


“ベンチで選手に声出しを徹底させる”


彼の仕事は、ベイスターズをプロ野球選手としての意識を持つチームとして戦う集団に変えることであり、その後の漢字一文字のスローガンにもそれははっきりと表れていると思う。


中畑監督の最終年となった2015年。


“導”の文字のもと結束したチームは、前半戦を首位で折り返すこととなった。私たちファンはとても嬉しかったが、長い暗黒時代の中で喜び方を忘れてしまっていたので、呆然としている人も多かった(私のことだ)。


そして、案の定、交流戦からベイスターズは唐突に失速し、いつも通り最下位でシーズンを終えた。
しかし、以前のパリーグのように前後期それぞれで順位を決める方式だったら、前期優勝ということになる。


私たちは、ベイスターズがAクラスに入る可能性はゼロではなくなったことを感じた。



その「勝ち」というものを現実的な目標として捉え、ともかく勝つための野球をしよう、勝てる戦術を考えようという意志が、ラミレス監督就任時の”WE PLAY TO WIN”には込められている。


そして、球団初のクライマックスシリーズ進出を果たした。


翌2017年には、前年に得た自信が“THIS IS MY ERA”という言葉となっているし、その年の日本シリーズ進出という実績は、“VICTORY is within US.”というさらに自信に裏付けられた言葉へと進んでいった。


しかし、ラミレス監督最後の2年間のスローガンには、そうした強いメッセージは感じられない。球団の任期延長の判断もやや消去法的なものに見えたし、勝ちを最優先したラミレス監督の采配が独断専行という批判を受けていたこともあったと思う。


ラミレス監督が最後に指揮をとった2020年のベイスターズは期待されたが4位に終わり、クライマックスシリーズ進出はならなかった。


2017年の日本シリーズ進出までの勢いをかって一気に1998年以来の優勝を夢みた我々ファンは落胆していたし、その雰囲気はチーム内にもあっただろう。


そして、チームの要だったキャプテンの筒香嘉智がMLBに挑戦するためにベイスターズを退団することになって、チームの求心力が一気に低下したように見えた。


三浦大輔が監督を引き受けた時のベイスターズは、中心にぽっかり穴の空いたドーナツのようなチームだったように思える。


だからこそ、彼は「横浜一心」というスローガンを選んだ。
そして、チームはこの言葉通りにもう一度結集して上位を狙う、はずだった。


くどくどと同じことを書きたくないので、昨年のことは省略するが、チームは結果的に中畑監督時代以来の最下位に沈んだ。しかし、また、挨拶もできない、ベンチにもいないで裏でタバコを吸っている、そういう集団に戻ったわけではない。


中畑監督の作った職業として観客の前で野球をしてみせる集団としての意識と姿勢、その上にラミレス監督の育てた勝つためのノウハウとそれを裏付ける各選手の技量はしっかりと根付いているのだ。


私は、昨シーズンの終盤戦ではチームは再び一体となったと感じている。
チームの雰囲気もDeNAベイスターズの10年間の中で一番良いもののように見える。


そう、ドーナツの穴は埋まったのだ。


ただし、この穴は誰か一人のリーダーによって埋まったわけではない。
三浦監督はチームの全員がそれぞれの能力を活かしてチームに貢献する場を作ることに長けた監督だと思う。
選手はもちろん、コーチやスタッフの皆さんが生き生きと動き回ることで穴は埋まったのだ。


三浦監督の持っている、この「人を生かす場所づくり」の能力は、今オフの球団OBたちのコーチとしての復帰や主力選手の残留にもつながっている。


彼らは皆、「三浦監督じゃなければベイスターズに戻ってくることは考えられなかった」とか、「三浦監督を胴上げするためにこのチームで優勝したい」と言っているのだ。


そして、今年のスローガンは「横浜反撃」。


三浦監督のもとに集まった選手やコーチたちの一人一人が、強制されたり命令されたりするのではなく、それぞれの意志でそれぞれの能力を活かして「霜柱のように伸び上がって」上に乗っかっている何かをひっくり返す。それが横浜反撃のイメージだと思う。


三浦ベイスターズの心は決まった。その次に何が起こるかは、次のブッダの言葉が既に示している。


“心がすべてである。


あなたはあなたの考えたとおりになる。“