mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

タイラー・オースティンのバレル

10月13日のニュース オースティン、ソト、エスコバー、ロメロ残留決定


ネフタリ・ソトは来シーズンが3年契約の2年目、タイラー・オースティンの来年の契約オプションは球団が権利を保有しているので、この二人の残留は既定路線だったが、エスコバーとロメロについては少し(エスコバーについてはかなり)心配していたのでホッとした。


球団は、タイラー・オースティンについては、本来、年俸を引き上げて複数年契約したいところだと思うが、そのあたりの情報は未だない。東京オリンピック後の米国のスポーツニュースをYouTubeで見たが、メジャーに帰って来る気はあるのかい?と聞かれて、そりゃあね。まあ、この先のことはわからないけど、どうなるか楽しみにしているよ、と答えていた。





彼が好打者であることを示す指標としてバレルというものがあるので、少しまとめてみた(以下の内容はBaseball Geeksの森本崚太さんのコラムに基づいています)。

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201904250001-spnavi?p=2


下の図は、2018年のメジャーリーグで、打撃機会毎にシングルヒットからホームランまでの安打がそれぞれどの位の割合で出ているかを打球速度毎に整理したものである。打球速度が150km/hを過ぎるとホームランの確率が急激に上がることがわかる。また、シングルヒットやツーベースも同様の傾向を見せる。

このことは、ホームランのためには打球に速さが必要であることは勿論だが、打球速度が上がることによって、打球が野手の間を抜く確率も上がることを意味している。なお、低い速度のところにシングルヒットのピークがあるのはいわゆるポテンヒットに相当するらしい。





バレルというのは、速度と角度とが下の図の赤い小さな範囲 (Barrel Zone) に入るような打球のことで、メジャーリーグの膨大なデータによれば、この条件を満たすと50%の確率で安打となり、長打率つまり塁打の期待値は1.5を超えることになる。

図を見てお分かりいただけるように、打球が速くなるほど(下の図の半円の外側に行くほど)バレルは大きく広がっている。バレルになる打球速度の下限は158km/hだが、この時には26〜30度でボールが上がらなければいけないのに対して、速度が187 km/hまでくると8〜50度というかなり広い範囲がバレルとなる。これを見ると、オータニサンの打席で必ずアナウンサーが打球速度を言うのも良くわかる。





最近メジャーで取り沙汰されているバレルと言う指標は、ある打者が打撃をした時に、その打球がバレルとなる確率を示している。


横浜に来る前年のメジャーでのタイラー・オースティンのバレルは15.9%と極めて高く、ナ・リーグのホームラン王になったピート・アロンソ(15.8%)や40ホームラン40盗塁を達成しかけたアクーニャ・ジュニア(15%)よりも高い。三振率が高かったことを割り引いても、これだけ有望な選手がよくぞ横浜に来てくれたと思う。


ベースボールアルマナックというアメリカの野球専門情報サイトを見ると、タイラー・オースティンは17歳で進行性の精巣がんになり、幸い早期発見後手術をして転移することなく病巣を完全に除去できたと書いてあった。そして、手術のわずか1週間後には全米のハイスクールの野球大会に出場していたということだ。

彼は、お母さんにだけは試合中もかなり痛かったと言っていたそうだが、平気な顔をしてプレイしたらしい。お母さんはタイラーのことをとてもtenacious だと言っている。粘り強くて頑固だということだろう。彼らしい話だ。


タイラー・オースティンは、冒頭に書いたアメリカのインタビューで、日本のファンはチームに対して極端に忠実(extremely loyal)で、彼らの前でプレイすることは素晴らしい驚きだ、と言っていた。

極端に忠実なファンの一人である私は、彼がいつまでもベイスターズと共に居て欲しいと心から願っている。


それにしても、先日のドラフトと言い、今日のニュースと言い、来季に向けて明るい話題がふえてきた。


タイムアップの笛は、次の試合へのキックオフの笛である。 

デットマール・クラマー(元サッカー日本代表コーチ)


誤解の無いように言っておくが、今シーズンはもう希望が無いということではない。ただ、それ以上に来年の楽しみがふくらんできているのだ。

東克樹の道

10月12日 対カープ(マツダ) 0-3 負け


今日はともかく九里亜蓮を打てなかった。ベイスターズ打線に元気がないというのもあるかも知れないが、失投がほとんど無かったのではないだろうか?やはり、最多勝を狙うピッチャーらしい隙のない投球だったと思う。


一回表の先頭桑原が右手への死球で出塁。かなり痛そうだったので心配したが、ベンチ裏で治療した後元気に戻ってきた。そして、次の楠本が3-2から膝下のストレートをすくい上げた飛球が思いのほか伸びて、飛距離は十分。わずかに右に切れてファールとなったが、実はこれが一番得点に近づいた瞬間だったかも知れない。

その後何度かランナーを出したが、正直言って、もう一本が出る気配は感じなかった。

工夫のない淡白な攻撃という人もあるだろうが、まあ、負ける時はこんなものだ。


東は初回から好調。手術前の良い時ほどの球威はなかったが、丁寧にアウトを積み重ねて行く。素晴らしい制球で三振もとれていた。


最初のピンチは四回。2番小園がセカンドへの内野安打で出塁し、続く西川が上手くライト前に運んだ。そして、4番鈴木誠也は思い切りレフトに引っ張ってタイムリーツーベース。0-1と先制された。この回は、ランナーを背負ってから高めに行く球が多かった。


その後の東は、エラーからのピンチもあったが、7回を投げて失点1、106球、三振8、被安打5、与四球1でハイクオリティスタートのピッチングだった。


8回表二死二塁のチャンスでは、桑原は叩きつけてセンターに抜けようかという当たりだったが、菊池がギリギリ追いついて抜けなかった。ここで再び天はカープを味方した。いや、素直に菊池の出足の良さを褒めるべきかも知れない。

桑原は出塁したが、二塁走者の森の俊足を持ってしてもホームに戻って来ることは出来ず、0-1のまま。流れは来なかった。

嫌な予感ほど的中するものだが、その裏、エスコバーが鈴木誠也にツーランホームランを打たれて万事休す。カープの三点は全て彼の打点だ。


私事だが、土曜日に箱根の九頭龍神社に行って、東克樹投手の完全復活を祈願する絵馬を奉納してきた。今日は、残念ながら、ハイクオリティスタートを成し遂げながら不運な負け投手となったが彼の復活の道はしっかり前に向かって続いていると感じた。


復帰後の初白星をなかなか上げることができず、色々と考えることもあるかもしれないが、悩む必要はない。今のまましっかりと続けて行ってくれれば良い。大丈夫だ。私がありったけの念力を送り続けている。


迷える人よ汝

既に道へと歩みを進めていることを知れ



2021年のドラフトキング

10月11日 2021年プロ野球ドラフト会議


横浜ベイスターズ 

1位指名選手 小園健太 市立和歌山高 投手(阪神との抽選で交渉権確定)

2位 徳山壮磨 早稲田大 投手

3位 粟飯原龍之介 東京学館高 内野手

4位 三浦銀二 法政大 投手

5位 深沢凰介 専大松戸高 投手

6位 梶原昴希 神奈川大 外野手


一位指名の小園投手は、補強ポイントと言われている20歳前後の右投手にピッタリとマッチする。三浦監督も本当に嬉しそうで、やや噛み気味に一緒に横浜ベイスターズを強くしましょう、と言っていた。小園選手もベイスターズは総合力の高いチームと言っていたので、是非、入団し、活躍して欲しい。


そして私は、それ以外の指名選手にも大いに期待している。


クロマツテツロウさんの漫画ドラフトキングはベストセラーなのでご存知の方も多いと思うが、いわゆるスポーツ漫画の中では珍しいスカウトマンが主役のストーリーである。


主人公は横浜ベイゴールズに所属する郷原眼力(眼力と書いてオーラと読む)で、彼は隠れた才能を見いだし、原石たちの人生に寄り添いながらプロ野球選手として才能を花開かせるチャンスを作って行く。所属球団のモデルは、恐らく、というかほぼ確実に、我がベイスターズであろうと思われる。


彼らスカウトの腕の見せ所は、下位指名選手でありながら1位指名選手を超えるスター選手、その年のドラフトで指名された中でNo.1となるような選手=ドラフトキングを生み出すことである。





長い歴史の中には、イチロー(4位指名)、岩隈(5位指名)、掛布(6位指名)…といった数々のドラフトキングが存在している。

彼らの背後には、おそらく、郷原のようなスカウトがいたのではないかと思わせるような非常に面白いドラマなので、ご一読をお勧めする。


ところで、下のリストは、今からちょうど30年前、1991年の横浜大洋ホエールズのドラフト指名選手である。


横浜大洋ホエールズ

1位 斎藤隆 東北福祉大 投手

2位 永池恭男 福岡工大付高 内野手

3位 有働克也 大阪経済大 投手

4位 斎藤肇 星稜高 投手

5位 石本豊 藤代紫水高 外野手

6位 三浦大輔 高田商高 投手

7位 山根善伸 新日鐵名古屋 捕手

8位 川北和典 元プリンスホテル 内野手


一位指名は東北福祉大の斎藤隆。ご存知の通り、1998年に前年の肘の故障から復活して13勝2敗1セーブでベイスターズの38年ぶりの(そして最も近い)優勝に貢献し、日本シリーズでも初登板初完封の大活躍で優秀選手賞とカムバック賞に輝いた。彼はその後、海を渡って、ドジャースやレッドソックスでも活躍した。NPB通算91勝55セーブ、MLB21勝84セーブの大投手である。そして、同じ年のヤクルトスワローズの1位指名は、石井一久(東京学館浦安高)で、彼もNPBとMLBの両方で大活躍したスター選手である。


しかし、私が注目したいのは、6位指名の三浦大輔現監督である。彼は、入団当初はあまり目立った所のない高卒の投手だったが、ご存知の通り、独自の工夫と努力でホエールズ・ベイスターズ一筋で172勝をあげた。そして、この年の広島東洋カープの4位指名には、後に鉄人と呼ばれた東北福祉大の金本知憲外野手がいる。彼は、カープとタイガースで通算2539安打を放ち、名球会入りを果たしている。ドラフトキングという意味では、この二人のどちらか、あるいは両方が該当するのではないだろうか。


私は、我がベイスターズの指名した上記の選手の中にいずれは2021年のドラフトキングとしてその名を轟かせる未来のスターが含まれていることを夢想している。そして、彼らのこれからの長い道のりの中で、決して諦めることなく努力を続けていくこと、そのための才能を持っていることを願って止まない。


慶應義塾の塾長であった小泉信三氏は、「スポーツが若者に与える3つの宝」として、「練習は不可能を可能にするという体験を持つこと」「フェアプレー精神の体得」「友を得ること」の3点を挙げている。

我がベイスターズではないが、猛練習で鳴らした広島東洋カープの二軍の寮には、この言葉が代々掲げてあるそうだ。


練習は不可能を可能にする。


私は、この言葉にプロ野球の厳しさを垣間見ると同時に、ある種のロマンと希望を感じずにはいられない。

頑張れ、若き「燃える星たち」よ。私はこれからずっと君たちのことを応援している。