mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

阪神に先勝 “勝ち切る覚悟”の詰まった試合だった





シーズン終盤を迎えて、新たなチームスローガンが発表された。


“勝ち切る覚悟 all for the win”


そうだった。これがベイスターズに欠けていたものだったのだ。


長い暗黒時代を抜けて、


“良いチームになった”とか


“ベイスターズの試合は面白い”とか言われることが増えたが、


“でもね、大事なところで勝てないんだよね”


という一言が付け足される。



この状況について、選手たちそして監督やコーチたちが考え抜いた結果、欠けているものが、


“何がなんでも勝ってやる”


“勝つためだったら何でもやる”


というなりふり構わぬdevotionだったと言うことなのだろう。


それは恐らく正解だ。


そして、3位タイガースと4位ベイスターズの直接対決となった3連戦の初戦には、その“勝ち切る覚悟”が随所に詰まっていた。




最初にその覚悟を見せてくれたのは宮﨑敏郎。


初回、タイガースに先制され1点ビハインドの1回裏、二死満塁からタイガース先発の伊藤将司投手のインハイのストレートを腕を畳んでセンター方向に打ち返す執念のバッティング。


決して良い当たりではなく、つまっていたが、二遊間を抜ける2点タイムリーとなった。


そして、2-2の同点に追いつかれた後の3回裏にも二死一、三塁で再び伊藤投手の真ん中高めのボールをセンター返し。


サードから蝦名達夫が還って3-2と突き放した。


序盤戦、宮﨑は追い縋るタイガースを1人で跳ね返す気概を勝負強いバッティングで見せてくれた。




このところ勝ちから見放されている大貫晋一は慎重になり過ぎて不安定な立ち上がりだった。


初回と2回に1点ずつ失い、どことなく不安げな表情をしているように見えた。


そして、何故か、不安そうな顔で投げ込むボールはわずかずつ甘く入る傾向がある。


4-2と2点リードの4回表にもフォアボールとヒット2本で一死満塁の大ピンチを迎えた。


しかし、大貫はここから開き直ったように攻撃的な投球を見せ、代打の渡邉選手をスプリットで空振り三振、苦手としている近本選手もセカンドゴロに打ちとり無失点で切り抜けた。


前回登板では4回二死で無念の降板をしたが、今日は強い気持ちを持って投げ切った、と試合後に本人が語っていた通り、ベンチも彼の向かっていく気持ちを汲んでの続投指示だったと思う。


その後、大貫は5回、6回も無失点で抑え、QSを達成した。4回表のピンチ以降は大貫投手らしい投球ができており、次回登板に期待が持てる内容だった。


彼は勝利への執念で自分自身の投球に対する不安に打ち勝ったのだろう。





続いては、7回表ウィック投手の乱調で無死満塁で登板した坂本裕哉とその後を引き継いだ佐々木千隼の2人のリリーバー。


坂本が代わりばなに森下選手に投じた初球、膝下へのクロスファイアのストレートが彼の気概を表していた。


“打てるものなら打ってみろ”


この大ピンチでこれほど素晴らしいボールを投げられるようになったのか。


伊勢大夢や入江大生、ウェンデルケンまで不在になった今季のブルペンで矢面に立ち続けた経験が彼を育てたのだろう。


その後、ワイルドピッチと犠飛で2点を失ったが、ヒットは一本も許さず、大貫の勝ち投手の権利を守り通した。


佐々木千隼は大山選手を申告敬遠して二死一、二塁となった状況で登板し、代打の小野寺選手と対峙した。


三浦監督は百戦錬磨の佐々木投手の経験と技術、特にスライダーの精度に賭けたのだと思う。


期待に応えて、彼は4球スライダーを続け、外角ギリギリのコースの出し入れで1-2と追い込んだ。


そして、最後はこの日唯一球のストレート。


外角に目付していた小野寺選手は内角高めからシュートライズするようなボールに手が出て空振り三振。これが佐々木投手の移籍後初のお立ち台につながった。




5-4と辛くも1点リードを保った7回裏の攻撃では、先頭のオースティンがレフトフェンス直撃のツーベースを放ち、続く牧秀悟が勝利への執念を見せた。


初球を打って深く守ったセカンドへのゴロ。


打ちたいと言う自分の気持ちを抑え、追加点のために自ら選んだ進塁打。


主将のこの献身は若手の選手たちの心に訴えるところがあったはずだ。


その後、二死一、三塁となったところで打席に入った林琢真は石井大智投手の外角のストレートを左に打ち返すことをイメージしていた。


2球目のストレートを打ったが振り遅れてファウル。


しかし、この試技で3球目には調整することができた。


サードの頭上を鋭く越えるタイムリーツーベースで6-4とリードを広げることに成功し、セカンドベース上で感情を爆発させるように何度かガッツポーズを繰り返した。



さらに、代打で登場した筒香嘉智が久しぶりのヒットで2点を追加して8-4と一気にリードを広げた。


石井投手の151キロの高めのストレートに上からかぶせるようにバットをぶつけ、二遊間を抜ける2点タイムリーを放ったのだ。


“勝ち切る覚悟”と言うスローガンを考え実践した牧の執念が林へ、そして前々キャプテンの筒香に伝わり、チーム全体で追加点をもぎ取ることができた。



そう言えば、筒香嘉智がキャプテンだった頃、やはりシーズン終盤で


“一生残る一瞬にために”


と言うチームスローガンを掲げて戦ったことがあった。



考えてみると、この二つの言葉は繋がっているのではないだろうか?


“一生残る一瞬にために勝ち切る覚悟”


その後、勢いに乗った打線は8回にも2点を追加し、14安打で二桁得点、10-4の大差で勝ち切った試合だった。


最後にもう一つ。


7回表無死満塁で交代を拒否したウィック投手に対して、一人でマウンドに向かい、通訳を介さずchangeと叫んで腰のあたりを押しながら強制的にベンチに戻した三浦大輔監督。



牧秀悟も初めて見たと言う監督の激情は“勝ち切る覚悟”の塊のようなものだったと思う。


さらに言えば、何としてももう一人投げて打ちとりたいと言うウィック投手の気持ちも、造反というようなものではなく、彼なりの“勝ち切る覚悟”だったと思う。


なりふり構わない二人の“勝ち切る覚悟”がぶつかって、滅多には見られないマウンド上での感情のぶつかり合いになった。


試合後に話し合いの機会を持ったそうだが、今回はペナルティというようなことはなく、それぞれの強い気持ちを前に向けていけるような措置になることを祈っている。



皆がこれほどの覚悟を見せてくれたのだ。


我々も


“勝つまで応援しきる覚悟”


を持って、再びベイスターズ愛を恥ずかしげもなく発揮しまくろう!