どんなに苦しい投球でも我々は東克樹の50勝を祝福しよう
菊池選手、末包選手、小園選手と大の苦手としている打者の並ぶカープ打線はいずれにしても東克樹にとって鬼門と言って良い。
そして、今日の東投手は決して良い状態ではなかった。
ツーストライクまでは比較的すんなりとれるのだが、決め球が真ん中寄りに甘く入ってしまう。
それに加えて、今日の東投手は球審の秋村さんとの相性が悪かった。
相性が悪かった、というのはやや婉曲な表現だが、かねてからこの方はかなりストライクゾーンが狭いという印象がある。
今日も末包選手へのアウトローのストレートなど、バッテリーとしては狙った通りのコースに投げ切っているにも関わらず手が上がらないことが何度かあった。
もちろん、ストライクゾーンはどちらのチームに対しても同じであり、ある意味では公平なのだが、東投手のようにゾーンいっぱいのところに投げ切るコマンドが生命線の投手の方が影響は大きいだろう。
さらにもう一つ、今日の東投手は随分と顔を赤くして投げていた。
日焼けしたのかとも思ったが、今日の横浜はそこまで強い日差しだったわけではない。
これは完全に私の憶測なのだが、微熱でもあったのではないだろうか?
途中、オースティンからの要求で大原さんがマウンド上の東投手に水を届けたシーンもあったので、或いは熱中症のような状態だったのかも知れない。
今日の東投手のピッチングは良く言えば粘投、言い方を変えれば超低空飛行だったが、その背景にはこうした諸々の事情があったのではないかと邪推してしまった。
初回こそ三者凡退に抑えたが、この時も捉えられた当たりがあった。
その裏の攻撃でベイスターズはカープ先発の玉村投手を攻めて2点を先制したのだが、この攻撃は良かったね。
先頭の桑原将志が初球をセンター前に運ぶとすかさず二盗を決める。
度会、牧は倒れたが4番タイラー・オースティンが詰まりながらも三遊間を破ってまず1点。
外野から本塁への送球間にオースティン選手がセカンドまで進む超積極的な走塁を決めたのが素晴らしかった。
彼は時折こうした挑戦的な走塁をするのだが、ほとんどアウトになるのを見た記憶がない。走塁判断が優れているのだろう。
そして、続く佐野恵太のセンター前ヒットで2塁から生還したことでこの走塁が生きた。
ところが、東克樹が2回先頭の末包選手をストレートの四球で歩かせ、坂倉選手、小園選手の連打で無死満塁の大ピンチを作ってしまう。
この時も1点差ではなく2点だったことが効いていたように思う。
カープベンチとしてはどうしても下位打線に打たせることになる。
そして、こう言う局面でギアを上げられるのが東投手の勝てる投手としての資質なのだ。
7番堂林選手を落ち着いて見逃し三振に打ちとり、8番に入った山足選手を注文通りのダブルプレイに嵌めて無失点で切り抜けた。
3回にも二死からヒット2本と四球で満塁のピンチを迎えたが、ここで打席に入った坂倉選手を外角いっぱいのストレートで見逃し三振にうちとってことなきを得た。
その裏、ベイスターズ打線は先頭の牧秀悟のヒットに続いてタイラー・オースティンの久し振りの長打となる右中間を破るタイムリーツーベースで加点。
故障から復帰して6戦目となるオースティン選手はやっと状態が上がってきたようだ。
彼が柱として打線を牽引してくれれば得点力は大きく向上するだろう。
さらに、佐野恵太がヒットで繋ぎ、山本祐大が犠牲フライを放ってもう1点。
4-0として玉村投手をノックアウトした。
しかし、4点のリードをもらっても今日の東投手はピリッとしなかった。
4回には小園選手の今季初となるソロホームランで1点を失い、5回にも先頭のファビアン選手のライト線のツーベースヒットからさらにヒット2本を浴びて失点。
なおも一死一、二塁のピンチが続き、これは5回を投げきれないかと心配させられたが、堂林選手にピッチャーゴロを打たせ再び併殺で切り抜けた。
5回、92球、被安打8、奪三振4、与四死球4、失点2という結果だったが、本人も体感的には10失点くらいしているイメージ、と言っていたように、良く2点で収まったなというのが正直な感想だ。
その後は、6回に登板した2番手の颯投手が一死二、三塁のピンチを作りながらもなんとか凌ぎ、7回と8回はウィック投手が力強いストレートとカットボールで回跨ぎで無失点。
ウィック投手はどちらのイニングも先頭を四球で歩かせており油断ならない部分もあるのだが、投球の強さ自体は素晴らしく、連打されるような不安は全く感じなかった。
そして、9回はクローザーに定着しつつある入江大生が150キロ台中盤の非常に力のある直球とフォークボールでカープのクリーンアップを三振二つと詰まった外野フライで制圧した。
これで今季7セーブ、どんどん成功体験を積み重ねて自信に満ちたクローザーとしての貫禄を身につけて行って欲しい。
そうなってくれたらチームとしてどれほど心強いことか。
ベイスターズは今日の試合に勝ってこのカードの勝ち越しを決めた。
これで5カード続けて負け越しなし、借金も完済して勝率5割に復帰した。
今日は非常に苦しい投球に終始した東投手だったが、これで記念の50勝到達。
しかも23敗というのは球団としての最少記録だそうだ。
エースがこんな状態で大丈夫かという声も聞こえてくるが、これほど苦しい投球でもチームを勝たせた東克樹の気持ちに強さと投球術はまさにエースに必須の要件だと思う。
再調整のために今日ファーム行きが公示された森原康平も言っていたではないか?
“勝ちゃえんよ”
この言葉の裏を返せば、どれほど素晴らしいボールを投げても勝てなければ意味がないということになる。
プロ野球の投手というのはそういう極めてタフで冷徹な職業だということを思い起こせば、今日がどんなに苦しい投球だったとしても、東投手の積み上げてきた50勝という記録を我々は盛大に祝福するべきだと思う。





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