mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

8番と9番バッターを自動アウトにしないためにできること



DH制のないセリーグでは通常9番に座るピッチャーの打率が低いため、その前の8番バッターも低打率だと打順の最後の二人がほぼ毎回アウトということになってしまう(7番までの打者が出塁していれば彼らを犠打で送るということはあるが)。


もちろん例外はあるが、8番バッターをつとめるのはキャッチャーである場合が多い。

そこで、キャッチャーの打率というのが下位打線の力を決める重要なファクターとなる。

キャッチャーの打率が高ければ、彼らを上位に上げてショート等の他の守備的ポジションの選手を8番に座らせることもできるが、それも「打てる」キャッチャーあってのことだ。


キャッチャーの打率の高いチーム、例えば、會澤捕手(打率 .256)や坂倉捕手(同 .315)を擁するカープ、中村悠平捕手( .279)のいるヤクルト、そして木下拓也捕手( .270)がマスクをかぶるドラゴンズなどは本当に羨ましい。相手チームから見ると、下位まで気が抜けない怖い打線ということになるだろう。


さて、我がベイスターズの8番と9番バッターの昨シーズンの打撃成績を見てみよう。



8番に座ったのは大和選手を除けば、戸柱、伊藤光、嶺井、そして山本の4捕手だ。このうち、戸柱捕手の打率 .229というのは他チーム(例えば、阪神の梅野捕手や坂本捕手、巨人の大城捕手など)とほぼ同等だが、それ以外の選手の打率は1割台である(伊藤光捕手は好調時には2番バッターとして活躍していて、こちらの打率は良い時期もあった)。


例えば、山本捕手と大貫投手が8番と9番に座った場合、出塁率はそれぞれ .187と .111なので、一回の攻撃で二人のどちらかが出塁する確率は、0.187 + 0.111 – 0.187×0.111= 0.277となり(二人の出塁率を加えて、二人とも出塁するケースをダブルカウントしている分を差し引いた)、1試合に4打席あるとすると1試合で8番か9番バッターが出塁するのは一度だけということになってしまう。


いわゆる8番と9番が自動アウトという状況と言って良い。言い方を変えると、1試合で27個のアウトのうち7つ程度はこの二人で記録してしまうこととなり、残りの20個のアウトで勝負しなくてはならない。


他方、戸柱捕手(打率 .229、出塁率 .260)が8番セリーグ投手の首位打者である今永投手(打率 .270、出塁率 .289)が9番バッターとなった場合には、1試合で8番か9番バッターが出塁するのは、0.260 + 0.289 - 0.260 × 0.289 = 0.474となり、二度の攻撃のうちほぼ一度はどちらかが塁に出るということで、決して自動アウトではない。


今シーズン、ベイスターズが優勝するためには、この8番と9番バッターを自動アウトにしないということも重要になると考えられる。そのために、どのような可能性があるか?


① 伊藤光捕手の復調


伊藤捕手の昨シーズンの打率を月別に見てみると、一軍に復帰したばかりの5月と6月には .258と .250となかなか良い。しかし、7月以降は1割台と苦しんでいる。


彼は、10月11日に右肩のクリーニングを受けている。その際に、以前の腰の手術で復帰まで長い時間を要したので手術に踏み切るのに時間がかかったと言っており、躊躇している間に怪我の影響が既に出ていたのではないかと思う。


そうだとすると、手術後の回復次第ではあるものの、伊藤捕手が.250程度の打率を残す可能性は十分にある。かつてオリックスで彼の打棒を生かすために内野手転向のプランもあったほど、彼はバッターとしても実力がある選手なのだ。


② 戸柱捕手の安定


戸柱捕手は、ひょっとして昨シーズンの後半に打撃で何かをつかんだのかもしれない。

9月の月間打率は .286、10月は .275、OPSもそれぞれ .726と .618と「打てるキャッチャー」のレベルにある。


もしこれが一過性のものではなく安定して発揮できるスキルだとすると、これだけでも8番9番自動アウトを解決する決め手になる。カープの會澤捕手が最初の5年間は打率1割台だったのが6年目から急に3割を打ち始めた例もある。


加えて、戸柱捕手は左バッターにもかかわらず、左投手に強い(打率 .290)。これもアドバンテージと言って良い。


③ 山本捕手の開眼


山本捕手は強肩でリードも良く、次世代の正捕手として期待がかかる。

しかし、昨シーズンの打率 .129のままでは厳しい。


彼は2018年から20年までの一軍での通算打席数が16しかなく、昨シーズン初めて100打席以上の経験を積んだ。

シーズン後半で順位がある程度見えてきたところで捕手起用も育成に舵を切ったというところだと思うので、勝ちにこだわる今シーズンは同じようにチャンスがあるとは限らない。


春のキャンプやオープン戦で、昨年の111打席の経験と反省を活かして少なくとも1軍で .220程度の打率は残せるようになって欲しい。そうすれば、将来への布石という意味も含めて彼の一軍での起用は続くだろう。


彼は、ロメロ投手や京山投手の良さを引き出して他捕手よりも良い防御率を記録しているのだ(守備も含めた保守起用についてはいずれ改めて書くことにしたい)。


④ 今永バッティングスクール


打撃の良い今永投手が他のピッチャーに打撃を教えるというのは半分冗談だが、それでも、この記事でも書いたようにDH制のないセリーグでの9番ピッチャーの打撃や選球眼の重要性を先発投手陣全体で共有してもらいたい。


イースタンリーグはDH制のため、二軍の長い高卒投手などは打席に入ること自体久しぶりという場合も多い。

この際、こうした投手専門の打撃練習というのを行ってはどうだろうか?


ヒットはそれほど打てないかも知れないが、選球眼を磨くことやカッティングの技術そしてボテボテでもゴロを転がす技術など投手ならではの嫌らしいバッティングというのはあるのではないか?


先日、今年勝つためのショートと3年後勝つためのショートという記事を書いたが、キャッチャーの場合は、今年勝つためには伊藤光と戸柱の打撃好調の方を使うということがベストのように思う。


キャッチャーが激務であることを考えれば、打撃好調時でも一人の捕手が出ずっぱりということは難しいので、週一回例えばロメロ投手の先発時に山本捕手をスタメンで使うことによって100打席程度を確保する。こうすれば、「3年後に勝てる捕手」も育てていくことができるだろう。


うっかりしていたが、今年バッテリーコーチとして復帰した相川亮二さんも「打てるキャッチャー」だった。配球を読んだ狙い打ちのような捕手向けの打撃指導も期待できるだろう。


以上のような手を打ち、1番から7番までの強力打線に加えて、8番と9番も気が抜けない嫌らしい打線になると、もう優勝は目の前だ。めでたしめでたし。