mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

初めての現役ドラフトは成功するのだろうか?



12月7日 今シーズン初めて導入される現役ドラフトを二日後に控えて、インターネット上ではその狙いやルールそして現役ドラフトの対象となる候補選手などについて色々と情報が飛び交っているようだ。


このブログでも少し情報を整理して、私なりにこの新たな制度に期待する点や懸念などをまとめてみたいと思う。



【現役ドラフトの目的とルール】


現役ドラフトの目的は、現在の所属チームで出場機会に恵まれない選手の移籍を促進して彼らに活躍の場を提供することにある。


現役ドラフトのルールでは、各チーム2名の候補者をリストとして提出しそれぞれ少なくとも1名は他チームへ移籍させるとともに、少なくとも1名は新たな選手を獲得することが決められている。


ルールについてもう少し詳しく説明する。


まず、現役ドラフトの対象から除外される選手は以下の通り。


・FA権取得選手あるいはFA権を行使したことのある選手

・育成選手

・前年のドラフト会議で指名された新人選手

・複数年契約の選手

・年俸5000万円以上の選手(ただし、年俸5000万円以上一億円以下の選手は1名に限って対象とすることができる)

・外国人選手

・前年のシーズン終了後翌日以降のトレードによる獲得選手

・シーズン終了後に育成から支配下登録された選手


現役ドラフトは非公開であり、次の手順で行われる。


①各球団は上記の除外条件に該当しない選手2名を選出して申告する


②現役ドラフトに先立ち、各球団は、選出された2×12=24名の選手のリストから獲得したい選手を1名ずつ挙げる


③獲得希望の最も多かった候補選手の所属球団が最初の指名権を得ることができ、他球団の候補選手の中から1名を指名・獲得することができる(同数の場合は今シーズンの順位が下の球団が優先権を得る(ウェーバー制))


④次に、最初に指名された選手の所属球団が指名権を得て意中の選手を獲得する


⑤以下、各球団が少なくとも1名を指名・獲得するまでこの手順を続ける


⑥全ての球団が1名を指名・獲得した後、二人目の指名を希望する球団が二巡目を継続する(一巡目と逆順で実施)





【現役ドラフトの意味は何か トレードではいけないのか?】


インターネットの関連情報を見ると、現役ドラフトは各球団がトレードに出したいと考えているが交換すべき相手が見つからない場合に有効となり得る、と言う意見をよく見る。


また、一部では、現役ドラフトは戦力外通告を受けた選手たちの合同トライアウトと通常のトレードの中間にあるようなもので、トレード未満、戦力外以上の選手たちが該当する、という意見もあるようだ。


私はと言えば、現役ドラフトの最大の価値は、3チーム以上にまたがる間接的なトレードを可能にすることで移籍市場を活性化することにあると考えている。


例えば、A球団では外野手が余っており、代わりに左の中継ぎ投手を欲しがっているとする。また、別のB球団では、外野手を欲しがっており、代わりに右の先発は出しても良いが、左の中継ぎ投手に余剰人員はいないとする。


この場合、通常のトレードだと外野手の移籍についてはA球団とB球団の間で合意できる可能性があるが、左の中継ぎ投手や右の先発投手については話をつけることが難しいためトレードは成立しない。金銭でのトレードというのもないわけではないが、可能性はかなり小さくなるだろう。



他方、C球団では左の中継ぎ投手にトレードで出しても良いと考えている候補があり、右の先発を欲しがっているとすると、C球団から左の中継ぎ投手がA球団へ、A球団からB球団に外野手が、そしてB球団からC球団に右の先発投手がそれぞれ移籍するという形で3球団間での間接的なトレードが成立することになる。



この例は3球団間での選手の移籍だが、現役ドラフトではより多くの球団が絡み合うなど多様なパターンが成立することになるだろう。これはトレードにはないメリットだと思う。


それでは、現役トレードは成功するのだろうか?


規則上、最低でも各チーム1名ずつの移籍は行われることになるが、この新たな制度が成功したといえるためには、移籍した選手が新たなチームで活躍するような事例がいくつか実際に生まれることが必要だろう。


上述したインターネット上の意見のように、各チームが「トレード未満、戦力外以上の選手たち」だけを候補として選出して数合わせのような小粒の移籍だけが行われた場合には各球団やファンがメリットを感じるようなものとなる可能性は少なく、成功とはならない。


こうした可能性を回避するために、上記のルールにある通り「獲得希望の最も多かった候補選手の所属球団が最初の指名権を得ることができる」というインセンティブをつけることによって、各球団が積極的に他チームから見て魅力的な選手を選出するように仕向けている。


しかし、このインセンティブがあっても、各球団は自分たちも評価している選手をあえて現役ドラフトの候補に選出することはないだろう。


例えば、12球団のうち11球団がトレード未満、戦力外以上の選手たちだけを選出しているとすると、残りの1球団が指名優先権を得るために価値の高い選手を選出しても、実際に獲得できるのは格落ちの選手になり、損をしてしまうためだ。


良い選手を出すには、やはり、良い選手を獲得できる見通しが必要なのだ。


ここで、もし3つ以上の球団が事前に相談して上記のA、B、C球団にまたがる間接的なトレードを画策したとすれば(私が知り得た情報を見る限り、このような談合は禁止されていない)、その場合は価値の高い3選手の移籍が生じることになるが、実際にはその可能性は低いだろう。


それだったら現役ドラフトではなく当事者の3球団間で三つ巴のトレードを行えば良いだけのことだからだ。


こう考えてみると、現役ドラフトで魅力的な選手がリストアップされる可能性は、通常のトレードの場合と同様に次のような場合に限られるように思う。


・ある選手の能力を現在の所属球団も評価しているが、同じポジションに優先的に起用すべき他の選手(若手の育成を優先するチームの方針、ファンの人気や注目度が高いなど)がいるため出場機会が限られており、本人のために移籍を考えている場合


・年俸に見合う活躍ができないが何らかの事情で年俸を大幅に低減することが難しいため、コストカットのために放出したい場合


・起用法や指導法などをめぐって首脳陣との関係が悪化しており、本人も球団も移籍を望んでいる場合


つまり、本来はトレードの対象にしたいような選手なのだが、2球団間のマッチングがうまくいかないために話が進まない選手を有効活用する機会として各球団が現役ドラフトを積極的に利用しようとするのであれば、今回の新たな試みは成功することになるだろう。




【現役ドラフトの候補選手たち】


インターネット上では、現役ドラフトの候補選手について様々な推測が飛び交っている。


上に書いたように、現役ドラフトという初めての試みを各球団がどのように捉えているか、そして、その結果どのレベルの選手がリストアップされるか、が全く不確定であるにも関わらず、これらの推測には共通して出てくる名前が多い。


例えば、ベイスターズOBで解説者の高木豊さんは、細川成也(DeNA)、糸原健斗(阪神)、オコエ瑠偉(楽天)、西浦直亨(ヤクルト)、高橋礼(ソフトバンク)、国吉佑樹(ロッテ)などを挙げており、それなりに名前の通った選手が現役ドラフトの候補になると考えているようだが他の推測でも彼らの名前はだいたい含まれているようだ。


火のないところに煙は立たない、とよく言われるように、ここで挙げられた名前は上述したトレード要員の条件のいずれかに当たると考えられているのだろう。


さて、我らのベイスターズではどのような名前がネット上で囁かれているのだろうか?


全ての情報に目を通したわけではないが、インターネットで目につく記事をピックアップしてリストを作ってみると、次のようなものとなる。


細川成也


神里和毅


森原康平


田中俊太


宮國椋丞


知野直人


中川虎大


この中で、神里選手と森原投手については、個人的にはかなり可能性は低いと考えている。


安心して守備を任せられる俊足のセンターと勝ちパターンに準ずる働きの期待できる中継ぎ投手は出すつもりはないだろうと思う。


本人のためにも飛躍の機会となる可能性があるのはやはり細川成也だろう。


佐野、桑原、オースティンに加えて大田、神里、楠本、蝦名、関根という多様な人材が鎬をけずるベイスターズ外野陣ではバッティング、守備ともに荒削りさの目立つ細川選手がそれを克服するために必要な経験をつむだけの出場機会は今後も得られないと思われるためだ。


どうもわからないことが多く期待すべきかどうかもよくわからない現役ドラフトだが、初めての試みということで今後の経過を見守っていきたいと思う。