mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

三浦大輔監督の成長曲線



10月5日 試合予定なし


10月3日のシーズン最終戦の後、南場智子オーナーと三浦大輔監督の会談が行われ、2023年シーズン以降も複数年にわたって三浦監督が続投することが決定した。


このニュースを目にしたのは昨日のことだったが、私は率直に嬉しいと感じた。


お二人の会談は10分程度だったらしいので、複数年続投の方向性というのはある程度球団内でコンセンサスが得られていることだったのだろう。


三浦さんと言えば思い出す、現役時代の有名なエピソードがいくつかある。


(プロ野球選手のサインが転売屋によって高値で取引されていることについて記者からたずねられた際のコメント)


”三浦のサインなんて価値ないって言われるくらい書いてやる”


実際、その当時彼はチームの誰よりも長い時間ファンに付き合ってサインを書いていた。


(FAで阪神への移籍が有力と言われつつ残留し150勝を挙げた際のコメント)


”150勝できて嬉しいですけど、自分の150勝をみんなに喜んでもらえることがもっと嬉しい。横浜に残ってよかった”


(そのコメントに対して、”普通の球団で投げていれば200勝していてもおかしくない。三浦は所属する球団を間違えた”という意見がありますが、違う球団にいたらもっと勝てたと思いますか、と記者に尋ねられた際の回答)


”ないです。俺は横浜の三浦大輔だから”



私はこれらのエピソードが大好きだし、彼の人柄はそこに凝縮されているように思う。


しかし、同時に、こうした人柄は監督に向いていないのではないか、とも思っていた。


というのも、こうしたエピソードの延長線上には、実力は評価しているのだがなかなか結果を出せない若手にずっとチャンスを与え続けて得点力が落ちるとか、勝ちパターンのリリーフを酷使して疲弊させてしまうといった運用があるように思えたからだ。


人柄の素晴らしい努力の天才という選手像と時として冷徹さを求められ引くべき時は引くことが必要な監督としての世界観(尾崎じゃないよ)とは一見相容れないものがある。


実際、監督就任一年目の昨シーズンはこの二つの役割の間で葛藤があったと思う。


いや、この葛藤は2019年に一軍投手コーチとして現場に復帰した時から既に始まっていたように思う。あの年の投手運用は決してうまくいっていたとは思わないし、リアリストのラミレス前監督の野球とのミスマッチ感が強かった。


今シーズンも例年通り不運な序盤戦を迎えたあたりでは未だ監督業としてはアマチュアっぽい感じがかなり出ていたと思う。


しかし、私のそうした印象は、後半戦に入ると急速に変わっていった。8月上旬に書いた記事を以下に引用する。





【三浦監督の大人の階段】


”ところで、最近の三浦監督の言動を見ていると急に”大人になった”ような印象を受ける。


来年50歳になるという野球人に対して大人になったという言い方をするのは失礼な話なので、おそらく、実際は”選手のメンタル”から”指揮官のメンタル”に変化したと言うことなのだろう。それが大人の監督、監督らしい監督になってきたと感じさせるのだと思う。


カープとジャイアンツで投手として大活躍された川口和久さんが以前、


”結果を先に考えたらピッチングにならない”


と仰っていたが、これはまさに選手のメンタルだと思う。戦術的な選択の余地はあまり与えられておらず、不利だなどと考えることは消極的なプレーにつながってしまう。


選手は常に理不尽なほど強気でなくてはならず、そして特に投手は頑固で相手を見下ろしていないとあのマウンドに立ち続けることはできない。


長年投手であった三浦大輔さんはもちろんこうした選手のメンタルで自分を鼓舞し、孤独な戦いを続けてきたのだと思う。


しかし、監督の考えるべきことは違う。むしろ逆に、


”結果を先に考えないと采配にならない”


のである。


負ける戦は避けるべきだし、どうしてもやらなければならない時は良い負け方つまりその後のシーズンに及ぼす影響をできるだけ小さくする負け方をする必要がある。


昨日(注:8月7日)の試合は結果的に0-5の大差で敗れたが、連投のクローザー山崎康晃をベンチ外とした戦いでロメロ、平田、石川の継投で勝ちパターンの3人とそれに準ずる位置付けの入江投手を温存したまま試合を完了した。


今回の中日戦では、大貫晋一ー大野雄大の両チームエース級の対戦を制し、続く第二戦は現状のローテーションでは谷間ともいえる坂本・京山組で好投手小笠原慎之介の先発試合に投げ勝った(実際に失点したのはクローザーのマルティネス投手)。


この二つの勝利は”してやったり”なのである。


ここで第三戦の7回以降、0-1の僅差のビハインドで再び勝ちパターンを投入することによってひょっとするとドラゴンズをスイープすることができたかも知れないが、2位阪神と首位ヤクルトとの対戦を翌週に控えて、その代償は大きすぎる。


目先の勝ちをもぎ取るために手段を選ばなかった昨年そして今年序盤の三浦監督は、西岡すみこさんに言わせれば、”欲しがり屋さんだねえ”ということだったと思うが、最近はシーズン全体を見通して戦術を考える余裕が出てきているようにも見える。”




その後も采配ミスと思われるものはいくつかったが、三浦監督は「大人の監督」の階段を順調に登っているように思う。


南場オーナーから複数年の続投要請があったのも、現状の三浦監督を名将として評価しているというよりは、彼の監督としての成長曲線がチームの成長にも重なることに期待してあと数年チームを率いて欲しいという判断だったのだろう。




【短期決戦での采配やいかに】


その三浦監督が今週末から初めての短期決戦の指揮をとることになる。


阪神タイガースとのクライマックスシリーズファーストステージだ。


昨日から妙に頭から離れない記憶がある。2019年のCSファーストステージ、相手も今年と同じ阪神、場所も同じ横浜スタジアムだった。


2019年10月5日の初戦、私は同じくベイスターズファンであるウチの息子(DeNAのDNA)とバックネット裏に陣取っていた。


初回から阪神先発の西勇輝を攻め、筒香のスリーランで3-0と先制し、さらに宮﨑の打球が西投手を直撃して一死も取れずに降板するという緊急事態となった。


そして、5回裏にも4番手の島本投手を攻めて4点を追加した。


当方の先発は石田が4回を0点に抑え、第二先発の今永が1失点したものの、6回終わって7-1のリード。我々ファンは勝利を確信していた。


しかし、7回表にベイスターズベンチがバリオスをマウンドに送ると流れが一変した。あっと言う間に一点を奪われ、一死でエスコバーにつなぐが、これまた打たれて一死一、二塁とされると、北條のスリーランで7-5に迫られる。


8回も続投したエスコバーは木浪にタイムリーを打たれて一点差。そして、代わった国吉が再び北条に2点タイムリーを打たれてとうとう逆転を許し、そのまま7-8で敗れた。



結局この年は1勝2敗でファーストステージ敗退となった。


この時の7回の継投は「世紀の舐めプ」などと言われていたが、当時の投手コーチは三浦さんだった。


7回表にバリオスという選択は明らかにファーストステージの先、つまり巨人とのファイナルステージを睨んでブルペン陣の負担を減らしたいという策だったが、私はバリオスの名前がコールされた時から大事な初戦は確実に勝っておくべきではないかと思っていた。



そして、エスコバーの被弾や複数失点は最近の出来事とも類似している。


バリオスの起用は策士と言われたラミレス監督の発案だったのではないかと思うが、勿論、三浦コーチも賛同しての采配だったと思う。


8日からの阪神とのファーストステージ。3年前の教訓を活かして三浦さんに素晴らしい成長曲線を見せつけて欲しいと思っているのは決して私だけではないだろう。