千回の辛い負けを力に変えられるチームだけが優勝を目指すことができる
4時間以上を要した熱戦に非常に残念な形で決着がつき、7-8のルーズベルト返しをされてスワローズに連敗した。
ネット上では早くも敗因とその当事者をめぐって色々な主張がなされている。
それらの意見はどれも間違ってはいないし、的を射ている指摘も多いと思う。
しかし、負けた試合に関して、何が上手くいかなかったかを言うことは容易く、いわゆる結果論に陥りがちだと言うことも忘れてはならない。
もちろん、全くの無策でことにあたり、当然考慮すべきリスクを見逃して失敗したのであれば、それはファンとしても批判すべきだ。
今日の敗戦は、本当にベンチや選手が何も考えずに選手起用やプレイをした結果なのだろうか?
私には、どうも、そうとは思えないのだ。
ネット上で取り沙汰されているポイントはいくつかあるが、代表的なものについて少し考えてみたい。
【牧のエラーと度会の記録には残らないミス】
これは言い訳できない。私もネット上の皆さんと同様に苦言を呈したい。
2人とも反省して守備練習に時間を割くとともに、ビジターの各グラウンドの特徴や対策についてしっかり勉強してほしい。
そして、毎日何度も繰り返す守備のプレイの全てで集中を切らさないこと。
そう言えば、今年から千葉ロッテに移った愛斗選手が西武時代にこんなことを言っていた。
“守備は本当に、投手の人生が懸っている。それを一番に、忘れずにやりたい”
2人とも分かっていることだとは思うが、もう一度、「投手の人生がかかっている」という言葉の本当の意味(入団後数年かかってやっと1軍での登板機会を与えられた試合でエラーから炎上して即抹消され2度と陽の目を見ることなく退団した投手も居るのです)をしっかり考えて常に丁寧なプレイを心がけてください。
【7回表 梶原のホーム突入】
3-4とリードされて迎えた7回表、梶原の内野安打とオースティンのポテンヒットで無死一、二塁となり、さらに佐野恵太がライト前ヒット。
ここで二走の梶原昴希は三塁を回ってホームに向かったが外野からの好返球もあって惜しくもタッチアウト。
次が4番の牧秀悟であることを考えれば、ここは持重して無死満塁のチャンスを作るべき、というのは誰しも考える妥当な意見だ。
しかし、実は、得点打率が2割を少し下回っている今季の牧秀悟の満塁での打率は.125、そして犠牲フライも0と非常に確度が低いのだ。
そもそも、その牧を何故4番に固定しているのだ、という批判はあると思うが、ここはチーム編成上の長期的な措置であり簡単にいじることはしない確固たる方針がある、と理解している。
だとすれば、8回に1回しか上手くいかない満塁での牧の打席にかけるよりは、俊足の梶原をホームに突入させ、まずは同点に追いついて無死一、二塁で牧を迎えるという作戦は少なくとも的外れではないと思う。
現に、外野からの返球が少しでもズレていれば梶原はセーフだったと思う。
そして、走者一、二塁の状況だと牧秀悟の成績は打率.316、出塁率.350にまで跳ね上がるのだ。
つまり、この作戦が上手くいって同点で無死一、二塁のチャンスを迎えた場合、牧のタイムリーで逆転することが期待しやすいことになる。
【同点の9回裏 森原康平の起用と回またぎ】
同点で森原を使って、仮に逆転できたとしても、ビジターのベイスターズはその後のヤクルトの攻撃を抑えなければ勝てない。
そして、森原の後はもう三連投となる坂本、京山、中川といった経験の少ない若手の投手しか残っていない。
だから、セオリー通り、逆転するまで森原は温存すべきだった、という意見も多い。
もちろん、これも正解だと思う。
しかし、今日のベイスターズベンチは違う作戦を選んだのだ。
一言で表すと、負けのタイミングをなるべく遅くする、というのが彼らの狙いだったのだと思う。
通常の試合であれば、負け試合に多くのリリーバーを注ぎ込むことは避けるべきであり、継投の中で弱いパーツは先に出して、いずれ打たれるのであれば早いうちに、というのが合理的だ。
しかし、今日はオールスター休みの直前であり、投手を出し惜しみする必要はない。
9回あるいは10回に打たれてサヨナラ負けをするのをなんとか阻止して、その間に逆転することを目標にしよう、そのためには9回から森原を回またぎも辞さずに使うのがベストだ。
そして、この作戦は佐野恵太の逆転ツーランホームランでまんまと成功したのだ。
【坂本裕哉の起用と丸山選手の巧打】
11回裏の時点でブルペンに残っていたのは坂本、京山、中川、堀岡の4人。
昨夜まで2日続けて被弾している中川と支配下登録されたばかりの堀岡はこの局面では使えないだろう。
そして、荒れ球で何故か毎回3-0までカウントを悪くする京山は走者がたまれば上位に帰る打順では使いたくない。
消去法的に坂本裕哉が選択されたのも私は間違いではないと思う。
そして、最初の打者である丸山選手への投球は悪くなかったと私は思う。
1-1から坂本の投じたボールは低めにコントロールされた落ちる変化球であり、これは打った丸山選手が上手かった、と諦めるしかない。
そして、坂本投手もそのように割り切れるボールだったはずだ。
しかし、次打者の青木宣親選手を打ちとったはずの打球がレフト前に落ち、これを関根大気が後逸して無死二、三塁となったところで、彼は平常心を失ってしまったようだ。
この投球も高さはやや甘かったがコースは外角ギリギリで悪くはないように思えるのだ。
若く経験の少ない投手が初めてのセーブシチュエーションでこの窮地に追い込まれては抑えるのは難しい。
その後、坂本が長岡選手に2点タイムリーを打たれて同点にされたのも、次の京山が自身のエラーも絡みオスナ選手にサヨナラタイムリーを打たれたのも私には必然のように思われる。
【関根大気はダイビングキャッチを試みた訳ではない】
スポーツ誌では「関根がダイビングキャッチを試みたが捕球できずに後逸してツーベースヒットになった」と書かれていたが、私はこの表現に違和感があった。
そこで、動画を何度も再生してみたところ、違和感の正体がわかった。
関根大気はギリギリ追いつくかどうかの打球に飛び込んでキャッチしようとはしていないのだ。
動画を見ると、彼は打球に追いついているのだが、落下地点を通り過ぎてしまいそうになり、右手のグラブ(関根選手は左利きなので)を慌てて斜め後ろに出している。
考えられる理由は一つ。高く上がった飛球が落ちてくる途中で一塁側後方の照明と重なり、見失ったのだろう。
そして、グラウンドに落ちる寸前に視界に現れたので慌ててグラブを出したと考えるべきだ。
プロである以上言い訳は出来ないが、目測を誤ったというような単純なミスではなく、関根選手の守備範囲と技術からすれば、見えていたら捕れていた打球だったと思う。
そして、これが捕球できて一死一塁となっていたら、坂本投手のメンタルはあれほど追い込まれはしなかったと思う。
【千回の辛い負けは本気で優勝したいチームをふるいにかける過程だ】
三浦監督は試合後、坂本や京山を責めなかった。
“最後の最後まで諦めずによくやったと思います”
“この粘りは後半に生きると思いますし、生かさなきゃいけない”
というのが彼のコメント。
9回、10回でのサヨナラ負けを回避してその間に逆転するために、後の投手の脆弱性を承知の上で森原を投入したのだから、彼としては選手を責める気にはならないだろう。
今日の負けは今季1番というほどこたえるものだった。
それは監督や選手にとっても、我々ファンにとっても間違いないことだと思う。
しかし、今日のような無様な負けはどのチームにもあることだ。
問題は無様に負けたことではなく、その負けから教訓を得、課題を明確にして精進することで前よりも強いチームに成長することができるかどうかだと思う。
ベイスターズは今までもこうした無様な負けを何度となく味わってきたし、これからも味わうことになるだろう。
そして、これらの負けを力に変えるための最大限の努力を惜しまないことが、「優勝を狙っている」と胸を張って言うための資格なのだ。
頑張れベイスターズ!
どれほど格好悪く負けても、それがさらに強くなるキッカケになることを信じて応援し続けよう。
“時に、良いことはバラバラに壊れてしまう。でも、そのおかげでさらに良いことが訪れるんです”
マリリン・モンロー
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