打てるキャッチャーと守れるショートが必要だ
少し前のことだが、球団別の長所と短所ということで、各チームのポジション毎に得失点貢献度を比較した記事があった。
https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/202201080002-spnavi
ベイスターズは、野手の8ポジションのうち5つでプラス(橙色)となっている。
特に、主としてオースティン選手がスタメンをつとめたライトの+25.8というのが目立つ。
リーグ全体を見渡しても、ヤクルトの山田哲人選手と村上選手、巨人の坂本勇人選手、広島の鈴木誠也選手に続く高い貢献度だ。
その他にも、レフト(佐野選手)、サード(宮﨑選手)、ファースト(ソト選手と牧選手)、セカンド(牧選手と柴田選手など)はプラスとなっている。
意外なところでは、桑原選手のセンターがマイナスなことだ。
これについては後で少し詳しく見てみることにしよう。
さて、今日の本題は、上の図で濃い青つまり目立ったマイナスの評価(どちらも-20程度)を受けているキャッチャーとショートだ。
この二つのポジションを除いた合計は+56.7なので、その大半をキャッチャーとショートのマイナスが相殺してしまうこととなる。
これではなかなか優勝という威勢の良いことは言い出しにくくなってしまう。
ベイスターズのポジション毎の得失点貢献度をもう少し詳しくみてみると、次のようなものであることがわかる。
ちなみに、先ほど触れたセンターのマイナスは、守備によるものであることがわかる。
桑原選手の守備の指標UZRはDeltaの評価を見ても-3.0と芳しくないが、中でも、送球の指標ARMが-5.1と悪い。
彼がゴールデングラブ賞を獲得した2017年には+6.2だったので、かなり悪化したことになる。梶谷選手の時のように肩の故障があるのではないかと心配にもなる。
そして、2017年には+11.4と圧倒的だった守備範囲の指標RngRも2.6に下がっている。
盤石と思われた外野陣にもかかわらず日本ハムから大田泰示選手を獲得した背景にはこうしたこともあるのかも知れない。
問題のキャッチャーとショートについても見てみよう。
攻撃と守備の合計はどちらも-20程度だが、内訳はかなり異なっている。
まず、キャッチャーについては、守備は-0.5だが、攻撃が-19.7という極めて大きなマイナスになっている。つまり、打てない、出塁できない、ということだ。
ショートは、攻撃が-12.5で守備が-7.6であり、どちらの面でもマイナスだ。
守備の名手と思っていた大和選手と柴田選手がいるのになぜ、と思うが、実は、大和選手はショートとしての守備範囲の指標RngRが年々低下しており、最も良かった2017年の5.6から昨年は-5.5に下がっている。
柴田選手のUZRはプラスなのだが、これはセカンドでの貢献が評価されたものであり、ショートに限ってみると-1.5となってしまう(セカンドは+5.5)。彼もRngRがマイナス(-1.3)だ。
もちろん、打てて守れるキャッチャーとショートが同時に誕生してくれればそれに越したことはないのだが、長年にわたって辛酸をなめ続けてきたベイスターズファンとしてはそんなに幸せな未来を思い描くことが難しい。
キャッチャーについては、守備のマイナスは微小だし、個々の捕手間の差も小さいので、できるだけ打撃の良いキャッチャーを先発させて攻撃のマイナスを少しでも減らすというのが現実的な対策だと思う。
一方、内野の要であるショートについては、やはりまず守備を優先して、-7.6という数字を0に近づけるあるいはプラスに引き上げることが必要だろう。
一言でいえば、打てるキャッチャーと守れるショートを確保して、この二つのポジションのマイナスをどちらも最低でも-10以上、できれば-5以上にしたい。
まず、打てるキャッチャー探しの方はどうしようか。
幸い、伊藤光捕手と戸柱恭孝捕手の場合は、昨年もシーズンを通して打撃が低調だったわけではない。
伊藤選手の場合は、5月と6月に高いOPS(打撃面での得点貢献に相関の高いと言われる出塁率と長打率の合計)を記録している。彼の場合は、打率以上に出塁率が高いこと、つまり選球眼が良く四球を選べることが強みだ。
伊藤選手の打撃結果を詳しく見てみると、Hard%が40%以上になっており、しっかり振って強い打球を放っていることがわかる。バッテリーが好調時の伊藤選手の長打の可能性を無視できないことも彼の高い出塁率に貢献しているように思う。
戸柱選手は9月と10月のOPSが高く、この時期の彼は2割8分前後のキャッチャーとしては十分に高い打率をあげていた。ひょっとすると、この時期に彼は打撃の感触で何かを掴んだのではないかと思うほどの好調ぶりだった。
一方、若手の代表、山本祐大捕手の打撃はまだまだだ。月別に見ても7試合出場した6月に打率 .222を記録した以外はいずれも1割前後という低打率だ。
Hard%も低く、強区コンタクトできていないため、フェアゾーンに飛んだ打球が安打になる確率(BABIP)も .169と極めて低い(通常は3割程度と言われる)。
むしろ、少なくとも2軍ではしっかり振って強くコンタクトできていた益子京右捕手(BABIP .312)の方が打撃に関しては見込みがあるかも知れない。
ということで、打てる捕手については、まずは、肩のクリーニング手術を終えて体調万全となった伊藤光選手が毎週6試合のうち4試合程度に先発して、シーズン通算で打率 .250、出塁率 .350、OPS .700をそれぞれ上回る成績を上げてくれることに期待したい。
プランBとして、戸柱選手の打撃開眼が本当にホンモノで、昨年後半のように打率 .270、出塁率 .320、OPS .700をそれぞれ上回る成績を上げてくれる可能性もあるのではないかと思っている。
この二人については、昨年の5月、6月が伊藤選手、9月、10月が戸柱選手の好調期であったように、調子の良い方を重用するという時期をずらした併用パターンでも良い。
山本選手と益子選手については、どちらかが第三捕手として一軍に常時帯同し、正捕手の疲労を考慮して週一回程度先発するという起用を続けることで経験を積むことが良いように思う。年齢から言って山本選手の優先度が高いと思うので、その場合は、益子選手は引き続き2軍でキャッチャーのスキルを勉強してほしい。
ショートは事情が違う。まずは打撃には目をつぶって、指標をプラスに改善できるような安定した守備を常にできるようにして欲しい。
そのためには、レギュラー遊撃手を固定することが必要で、私は、守備範囲と肩そして走力といった運動能力で最も優れた森敬斗選手を一年通じて我慢して使うべきだと思う。
彼のショートの守備指標UZRは-0.7だが、それでも先輩たちより上である。
また、1軍の3倍程度の出場イニング数のあった2軍では、守備範囲の指標RngRが7.6とかなり高いレベルにある。
打撃はともかく、1軍に定着すれば、守備の指標は2021年の2軍レベルには向上すると予想できる。また、昨年の秋季トレーニングで石井琢朗コーチにつきっきりで教わっていたように、基本に忠実な確実性が身につけば弱点のエラー指標も改善するはずだ。
ただし、打順については、昨年7月の好長期のように2番ではなく、当面は下位を任せるのが良いだろう。そして、守備と走塁を磨いて欲しい。
打てるキャッチャー作戦と連動するわけだから、彼の打順は8番で、塁に出ている時には投手のバントで確実に進塁することを狙う。
試合終盤のチャンスでは、森選手自身の調子によっては代打を出しても良い。そして、その後の守備は先輩たちがしっかりとこなしてくれるだろう。
以上から、今シーズンのベイスターズの打線を次のように見直すことにした。
1番 センター 桑原将志
2番 サード 宮﨑敏郎
3番 ライト T.オースティン
4番 セカンド 牧秀悟
5番 レフト 佐野恵太
6番 ファースト N.ソト
7番 キャッチャー 伊藤光(時々戸柱、ところにより山本)
8番 ショート 森敬斗
9番 ピッチャー
※ 1番〜4番の並びは、以前の記事に書いた「ワクワクするような上位打線を組んでみよう」をそのまま使ってみた。
今冬の間、打線のことを考えて幾つのオプションを検討したか数えきれないほどだが、ふと気がつけば、明日はもうキャンプインだ。
これ以上コロナの感染者が出ることなく、キャンプを通じて、チーム全員が無事に心ゆくまで練習と調整ができることを祈っている。
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