劇的な大逆転勝利で3連勝 これから何度もこんなことが起きる楽しい予感
平良投手の素晴らしい投球で7回までは完全に封じられていたベイスターズ打線が、ライオンズが継投に入った途端に着火し、大逆転劇を演じて見せた。
5回まで毎回のようにランナーを出しながらも粘りの投球で無失点で抑えてきたベイスターズ先発のガゼルマン投手が6回につかまり、2つの四球と4本のヒットを集中されて4点を失った時には、先発を引っ張り過ぎたなと思った。
そして、2番手の上茶谷大河がパーフェクトな火消しをした時にその印象はさらに強くなった。
しかし、この直後にライオンズ側でも継投が失敗した。難しいものだ。
平良投手に代わったライオンズの中継ぎ陣が見事に炎上し、あっという間に逆転されるとは。
スタンドの熱気や応援の迫力も含めて、野球というのはやはり流れのスポーツであり、一旦傾いた流れは奔流のように優秀なリリーバーたちを飲みこみ、試合をひっくり返してしまう。
6月4日 横浜スタジアム
ベイスターズ 5 - 4 ライオンズ
勝 入江大生 1勝0敗 0S
負 ティノコ 0勝 2敗 0S
S 山﨑康晃 0勝 3敗13S
【8回裏の大逆転劇の布石】
上述したように、6回表につかまったガゼルマンは4点を失って降板したが、その時点では未だ一死二、三塁のピンチが続いていた。
この非常に厳しい状況で登板したのが、最近男気を感じさせるリリーバーに育ってきた上茶谷大河だった。
彼は次打者の平良海馬投手をフルカウントから空振り三振に打ちとりツーアウトとすると、続く巧打者の源田壮亮選手を2-2から空振り三振にしとめた。
最後のボールは外角をシュート回転しながら落ちていく変化球、恐らくフォークボールだろう。
完璧な火消しだった。
そして、回をまたいで7回も2番からの好打順を内野フライ、内野ゴロ、空振り三振でこれ以上ない救援だった。
今日の試合の本当のヒーローは彼だったのではないだろうか?三浦監督も上茶谷投手の献身的な働きを絶賛していたが、我々ファンも同じ想いだ。
そして、8回のマウンドは入江大生に任され、簡単にアウト2つを取ったが、7番若林選手にヒットを許し、続く古賀選手をフォアボールで歩かせて二死一、二塁となった。
次の打者は好投の平良投手。
ライオンズの松井監督が試合後に語っていたところによると、打順が回って来なかったら、そのまま8回も平良投手で行く予定だったらしい。
その場合は、かなりの確率で0-4のままベイスターズは敗れていたように思う。
しかし、勝負の機微というのはこうしたもので、平良投手に打順が回り、既に投球数も100に近づいていたこと、そして、あわよくば5点目を取って試合を完全に決めたいというイロケも恐らくはあって、ライオンズベンチは代打栗山巧を打席に送り、彼はセンターフライに倒れた。
ガゼルマンが降板してから、ここまでの一連の流れが8回裏の大逆転の布石だった。
【それは大和から始まった】
ライオンズの2番手で登板したのは2年目の右腕、佐藤隼輔投手。
まだ経験は少ないが、伸びのあるストレートとキレの良い変化球でこのところ連続してホールドポイントを上げている若手の成長株だ。
4点リードで迎えた8回裏を任せるリリーフとしてライオンズベンチの人選は間違っていないように思う。
そして、この回の先頭は入江の代打で登場した大和だった。
初球のストレートは素晴らしいボール。
これは手強いかなと思ったが、その後二つボールを選んで2-1のバッティングカウントから大和は4球目を振り抜き大きなフライがレフトの頭上を超える。
あわやホームランかと言うフェンス直撃のツーベース。
全てはここから始まった。
この時点では、明日につながる攻撃で一矢報いられれば、と言うような控えめな気持ちで観ていたが、続く佐野恵太が初球を思い切り引っ張って鋭い打球がライトを襲い無死一、三塁となるとスタンドの声援が一層迫力を増す。
さらに、関根大気のピッチャーゴロを佐藤投手がファーストに悪送球して1点を返しなおも無死一、三塁のチャンスで宮﨑敏郎が登場するとベイスターズベンチとスタンドは一体となって興奮状態に。
この状況は若い佐藤投手にはいかにも難しい。ライオンズベンチがストレートに力がありここ数週間全く失点していないティノコ投手にスイッチした采配も理解できる。
そんな中、宮﨑は冷静にティノコ投手の内角高めのストレート系のボール(恐らくツーシーム)をつまりながら打ち返し、レフト線を破るタイムリーツーベースとした。これで2点差に詰め寄る。
宮﨑の内角打ちの上手さを知らなかった訳ではないだろうが、ライオンズバッテリーの予想の上をいく打撃技術でチャンスをさらに広げ、無死二、三塁となった。
続く牧秀悟のショートゴロの間に三塁から関根が生還して3-4。
なおも一死二塁(宮﨑→代走柴田竜拓)のチャンスで、三浦監督は5番ソトに代打楠本泰史を送るという勝負手を繰り出した。
楠本はその期待に応えて、ティノコ投手の初球、外角のストレートを振り抜きレフトの左をライナーで破るツーベース。セカンドから柴田が生還して、とうとう同点に追いついた。
その後、二死一、二塁となって打席に入った戸柱恭孝はフルカウントからの6球目をセンター返し。セカンド外崎選手はなんとか追いついたが、体勢が崩れておりファーストへの送球が暴投となる。
オールセーフでその間に三塁ランナー神里(楠本の代走さん)が生還して逆転。
この回一気に逆転まで持って行けたことが勝利に繋がった。
そして8回裏の長い攻撃中に急いで肩を作ったと言う山﨑康晃が最終回のマウンドに上がり、1番源田壮亮からの打順をライトフライ、ショートゴロ、見逃し三振で抑えてゲームセット。
ハマスタでの100個目となる記念のセーブを挙げた。
ワンチャンスを見事にものにしたベイスターズが大逆転勝利でこのカード2連勝、勝ち越しを決めて交流戦首位の座を守った。
こんな劇的な試合展開は滅多にない。
と書いたところで、フト思い出したことがある。
あれほど負け続けた暗黒時代でも、滅多にはないが、やはりワクワクして身体が燃えるような大逆転劇というのはあった。
あの頃は、いつも負けて肩を落としていることが多かったので、こうした逆転劇を出来るだけ鮮明に記憶にとどめて、哀しい出来事があるたびに頭の引き出しから引っ張り出してきては何度も反芻したものだ(当時はYouTubeのような動画は今ほど普及していなかった)。
そして、私はそういう日々の中で、中島らもさんの言葉を呪文のように唱えていた。
“めったにはない、何十年に一回くらいしかないかも知れないが、「生きていて良かった」と思う夜がある。
一度でもそういうことがあれば、その思いだけがあれば、あとはゴミクズみたいな日々であっても生きていける”
久しぶりにこの言葉を思い出して、懐かしい気持ちになった。
しかし、あの時のような共感は湧いてこない。
そうだ、ベイスターズは強くなった。
あとは「ゴミクズみたいな日々」ではないのだ。
ベイスターズの選手たちは、佐野や関根や宮﨑や牧やクワや京田たちは、明日もみんなで必死に闘い、素晴らしいプレーを見せてくれるだろう。
明日からもワクワクするようなペナントレースが続いて行くことを今の私は確信している。







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