最後のカレンダーをめくったあの日から2年を経て遂に平良は“成った”
海の向こうでは今日、今永昇太がリグリー・フィールドのマウンドに立っていた。
平良拳太郎が2021年6月にトミージョン手術を受けた時、その今永投手が彼に日めくりのカレンダーを贈ったのは有名な逸話だ。
そこには平良投手を日々励ます言葉が記されており、最後のページには
”平良は一日にして成らず”
と書いてあったはずだ。
今永投手の優しさが滲み出ている話だが、同時に、平良投手にはそれだけの”何か”があることも伝えている。
こんな話もあった。
ジャイアンツの阿部慎之助監督が現役時代、当時巨人に在籍していた平良投手の才能を評価し、目をかけていたとのこと。
しかし、”あいつは優しいから内角の厳しいところには投げられない”とも仰っていたらしい。
その阿部慎之助”選手”の現役引退の試合はベイスターズ戦で、彼は途中交代してベンチに下がる予定だったらしい。
しかし、その時すでに移籍していた平良拳太郎がベイスターズのリリーフとしてマウンドに上がると聞くやそのプランを変更し、打席に立って平良投手と対峙した。
結果は、平良投手が阿部選手の内角厳しいところに投げ切って凡打に打ちとった。確か内野フライだったような記憶がある(曖昧だが)。
その時、阿部選手は”ナイスボール”と満面の笑みを浮かべながら語りかけた。
良い話だ。
あのおっかなかった阿部選手がそういう優しい一面を見せていたのも意外なのだが、この話もやはり平良投手の才能やポテンシャルを阿部さんが認めていたことの証拠でもある。
その平良拳太郎が今日のヤクルト戦で先発登板した。
序盤はやや甘いコースに行くこともあったが、村上選手や西川選手のヒットでツーベースを狙った積極走塁の結果、いずれも関根大気の好返球で二塁タッチアウトとなるなどバックにも助けられて徐々に本調子になっていった。
ストレートの最速は147キロ程度だったと思うが、ほとんど捉えられておらず、制球とキレで危なげないピッチングを見せていた。
そして、得意のシンカーの落ちも良く、特にやや苦手としている左打者に対して有効だった。
彼は球速の異なる2種類のシンカーを投げ分けていたのではないだろうか?
村上、サンタナ、オスナといった強打者たちのタイミングをずらす良いアクセントとなっていた。
ヤクルト先発のヤフーレ投手も制球良く、なかなか打ち崩すことができない。
2回の攻撃で先頭の宮﨑敏郎が高めの変化球を捉えてレフトフェンス直撃のツーベースを放ち、続く山本祐大がおっつけてライト前に弾き返す。
無死一、三塁で打席に入った京田陽太はセカンドゴロだったが、宮﨑が悠々と生還できるコースの打球となり、1点を先制した。
その後、両投手の投げ合いが続いたが、ゲームを動かしたのは再びベイスターズだった。
6回裏二死走者なしから佐野恵太と牧秀悟の連続ツーベースで1点追加。
絶妙なタイミングでの中押し点となった。
さらに、8回には回跨ぎとなった2番手のロドリゲス投手が先頭の梶原昴希を死球で歩かせると、度会隆輝が自身の連続出塁記録を伸ばすセンター前ヒットで続く。
無死一、二塁で打席に入った佐野恵太は勝負強くセンター前にゴロで抜けるタイムリーヒットで3点目を挙げた。
佐野恵太は不長期を脱したようだ。
頼りになる佐野恵太の存在はベイスターズがカープに追いつき追い越すために不可欠の要素だと思うので、さらに打ちまくって欲しい。
3-0とリードしてもらった平良拳太郎は90球を超えていたが9回表のマウンドにも立ち、アンラッキーなコースヒット日本を許したものの、最後は宮本選手をストレートで空振り三振に仕留めゲームセット。
9回、113球、被安打7、奪三振5、与四死球0、失点0
プロ入り11年目にして初めての完封勝利を飾った。
このスワローズとのカードでは、初戦、第二戦と多くのリリーバーを注ぎ込んでいたので、平良が一人で投げ切ってくれたことはブルペンを救うという意味でも大きな貢献だった。
これで、チームはカープに敗れたタイガースをかわして2位に浮上。
明日からは甲子園でそのタイガースとの3連線に臨む。
派手なホームランはなかったが、打線の集中力で奪った先制点、中押し、ダメ押し、そして、関根大気の好守と平良拳太郎の好投で守り切ったこの勝利は値千金だ。
チームのまとまりという意味でも最高の状態で甲子園に乗り込むことができる。
トミージョン手術から3年、今永先輩手製の日めくりカレンダーの最後のページからも2年、、皆が待っていたホンモノの平良拳太郎がとうとう完成した。
おかえり、平良
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