筒香嘉智と言うタイムカプセル
恒例とは言え、日曜日の0-9での敗戦は堪らなかった、というファンの方も多かったと思う。
4月14日日曜日の午後4時半、私は歌舞伎座で片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さんの「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」と言う演目を観始めたところだった。
観劇中はスマートフォンの電源を切っているため(どちらにしても歌舞伎座の客席は電波が遮断されているのだが)、次の幕間までの約1時間はインターネットの情報は全く得られない。
玉三郎さんの「土手のお六」は強請りを働く小悪党の役だが、色気も不思議な品もあり流石の出来栄え。まあ、それは良い。
幕間になると私は通路に出て急いでスマホの電源を入れ、ベイスターズの試合結果を確認した。
4時半の時点では6回途中、0-2でリードされていたが、1点でも入れて追いすがっただろうか?
あるいはスワローズに追加点を入れられて0-3くらいになってしまったか?
真っ先に見たのはベイスターズの得点、0。そうか、あのままだったか
しかし、次に9という数字が目に飛び込んできた。
えっ、0-9で負けたの?
何がどうなると7回からの3イニングで9点もとられるんだ。
えっ、7回だけで7点とられたの?
ピッチャーは誰?森唯斗?
そうか森が炎上したのか。
えっ、森の自責点は1?
なんだ、なんだ。
と言うことで30分余りの幕間で慌ただしく吉兆のお弁当をいただきながらインターネットで探りを入れてみた。
ワンアウト一塁でおあつらえ向きのセカンドゴロ。本来はここでゲッツーとなりスワローズの攻撃は終了だったはずが、牧秀悟のファンブルでオールセーフ。
森投手も打たれはしたが、その後もファースト佐野恵太のトンネル、ショート石上泰輝の悪送球などで7失点のビッグイニング。
止せば良いのに一連のプレイを動画で確認してしまった。
暗黒時代にタイムスリップしたかのような惨憺たる大敗。
プロ野球と言うカテゴリーに入れて良いかどうか迷うようなミスの連鎖。
心置きなく泣かれよと年増婦の低い声もする。
ああ、お前は何をしてきたのかと、吹きくる風が私に言う。
久しぶりに暗闇の中に突き落とされたような気分になった。
自宅に帰ってからもいつものようにウジウジと動画や各選手の成績などを眺めてはため息をつくというルーティンを深夜まで繰り返してしまった。
しかし、まさにその時、私のインターネットサーチは別件の情報をとらえていた。
午前2時25分(!)の日刊スポーツの記事だ。
“筒香嘉智のDeNA復帰は最終段階、近日中合意へ 複数球団から大型契約提示も古巣選択”
夕刻の記事では萩原統括本部長の「まだ決まっていない」と言う情報のみだったのでしばらくは獲得を希望していると言われる複数球団間での駆け引きが続くのかと思っていたが、本当に決まったのか?
続けてサンスポも同様の内容を報道。
先走って巨人入りの報道をしたスポニチ以外はジャイアンツの大本営と言われる報知も含め、筒香嘉智が古巣横浜に復帰決定、と言うニュースが続いた。
これはもう決定と見て良いだろう。
先ほど暗闇の中にいた私に一筋の光明が見えてきた。
そう言えば、筒香嘉智は
“暗闇に差し込んだ一筋の光だった”
“ずっと待ち望んでいた大切な「光」だった”
忘れもしない真夏のハマスタでのカープ戦3試合連続サヨナラ勝ちでの筒香、ロペス、宮崎の3連続ホームラン。
田植えのような泥んこの甲子園で行われたクライマックスシリーズ。
様々な情景が鮮やかに甦ってくる。
筒香嘉智と言う名前が引き金になってこの5年間、無理に蓋をしていた胸の中の夢が再びムクムクと動き出すのを感じる。
そうか、彼は我々ベイスターズファンにとってタイムカプセルだったんだ。
“一筋だった光はやがて大きく、強く広がり”
“その光が再び「夢」を照らし出してくれる”
これから何かが変わる予感がする、私はそう自分に言い聞かせた。
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