mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

投手王国建国の代償と2022ドラフト



10月17日 ドラフト3日前



【ベイスターズの過去のドラフトの傾向】


しばらく前まで、テレビの野球中継でアナウンサーや解説者が、ベイスターズの強力打線と言うフレーズを口にすることが多かった。


梶谷隆幸、筒香嘉智、ホセ・ロペス、ネフタリ・ソト、宮﨑敏郎と言う巧打者や強打者がずらりと並んだ打線はホームラン数でリーグトップに立つことが多く、破壊力十分だった。


一方、投手陣では苦労した。毎年、先発ローテーションのやりくりを(誰に頼まれた訳でもないのに)日夜考えていたが、どうしても6つの枠が埋まらない。ひどい年は半分くらいしか埋まらず、あとは全部谷間と言うことになってしまう。


野球は投手で8割がた決まると言うような話をよく聞くが、まさにその通りで、強力打線ながら投手の弱いチームは時おり胸のすくような勝利をあげるものの、一年を通してみると先発が試合を作れなかった数、リリーフが炎上して逆転される試合の数、その他諸々の理由で負けがかさみ、なかなか上位には進出できない。


しかし、ここ数年この状況は変わってきている。


テレビ中継でも不勉強なアナウンサーが従来のイメージで「ベイスターズは打線が強力だから」などと言おうものなら、解説者から、いえいえベイスターズはピッチャーで勝つチームですよ、と言って嗜められる。


特に今年はその傾向が一層明確になったと感じた。


今永昇太がノーヒットノーランを達成し、今永、大貫の左右のエースがいずれも二桁勝利を挙げた。そして、浜口、石田がそれに迫る成績を残し、京山、阪口、東、平良と言った好投手も控えている。


ブルペンもクローザーの山﨑康晃、勝ちパターンの入江、伊勢、エスコバーが素晴らしい防御率で試合終盤を引き締めたし、平田、タナケン、クリスキーなどの層も厚い。


投手王国と言うのはちょっと手前味噌が過ぎるかも知れないが、少なくともローテーションを埋めるのに苦労していた頃と比べると隔世の感がある。


このような変化はいつから始まったのだろう?


この表は過去10年間のベイスターズのドラフトをまとめたものである。



育成で入団しその後支配下登録された砂田、中川、石川を含めると合計73人を指名しているが、なんとそのうち42名が投手である。さらに言えば、10年のうち8年は投手を1位に指名しており、2位指名も7人、3位指名が4人で上位指名の投手は19人にのぼる。


ピッチャーが大事とは言え、非常に偏った指名を10年以上続けて来た訳だ。


スカウトの投手を見る目、全国津々浦々にまで足を運ぶ労力、そして入団後の選手たちやコーチの努力が重要であることは言うまでもない事だが、チーム編成と言う客観的で定量的な視点で言うと、投手王国を建国しつつあるベイスターズの原動力はこの10年にわたる投手偏重のドラフトであることは間違いないだろう。


そして、何事にも作用と反作用の関係がある。


投手偏重のドラフトは、必然的に上位指名の野手が不足することを意味する。


2019年1位の森敬斗と2020年2位の牧秀悟と言う2人の野手の上位指名はある程度投手の懐事情が好転してきたことを反映していると思うが、それ以前のクリーンアップを務めるような打者は、2012年6位の宮﨑、2016年9位の佐野、そして2017年8位の楠本と言うことになる。


下位指名の強打者で走攻守揃った逸材というのはそう簡単に見つかるものではない。この3人はいずれもリーグ屈指の打撃力に加えて、守備などについても非常な努力で改善しているが、こう言う人たちが現れることは確率的にはかなり稀なのである。


現在のベイスターズ打線がチーム打率は高い(セリーグ2位)にもかかわらず得点が少ない(セリーグ4位。打率がほぼ同じスワローズよりも120点ほど少ない)ことや盗塁が少ない(セリーグ5位)のは、こうした投手偏重のドラフト戦略の中で下位ながら打力のある野手(しかし走力などで劣る)を確保する事でなんとか打線を保持してきたことと符号する様に思える。



【今年のドラフトの方向性】


「今年のドラフトは当たり年ではない」などと言う意見をよく目にする(当事者たちに対しては失礼極まりない言い方だが)。


特に、超目玉の多かった過去数年のドラフトと比べて、投手は小粒な印象が否めない。


上述した過去10年間のドラフト戦略によって、現在、ベイスターズには来年高卒2年目となるドラフト1位の小園健太投手をはじめとして、ギリギリ若手と言える京山、阪口、桜井が居るし、1年目には結果が出なかったものの大卒上位指名の徳山、三浦、そして故障で出遅れたが高卒ながら上位指名の松本などと言うプロスペクトが多く居る。


今年、無理に多くの投手を指名する必要はないだろう。身体能力に優れるが実績のない素材型や左の変則サイドスローの左強打者のワンポイント要員などnicheをねらうくらいで良いように思う。


また、内野手については、ショート森敬斗、セカンド牧秀悟が軸になるのは間違いないし、ファーストはソトやオースティンあるいは将来の新外国人が適任だ(今年のように佐野恵太がここに入っても良い)。


強いて言えば、宮﨑の高齢化に伴って2〜3年後のサードのレギュラーを準備することだが、実は、その時期には牧がここにハマるのではないかと予想している。


彼の現在のアドバンテージは強い打力に加えて守備の負担の大きいセカンドを守れることだが、セカンド守備単体で見ればリーグ平均を下回っている(UZR-8.5。ただし、打撃が良いため総合指標WARは4.1と良好)。


そして、もし牧が本人の希望もあってセカンドを続けるのであれば、仁志2軍監督が佐野の後釜となる中軸として期待している小深田もいる。


内野手でとるとすれば、やはりセカンド、ショートを守れる身体能力に優れた選手だろう。彼らは内野はどこでも守れるようになるだろうし、外野だってこなせる場合もある。西武ライオンズが所沢遊撃隊と呼ばれるほどショートを指名しまくった時代があったが、あれはこの意味では合理的だったと思う。


今年のドラフトで該当するのは、一部のスポーツ紙でベイスターズの1位候補と呼ばれていた亜細亜大学の田中幹也選手。小兵だが俊足で守備範囲が広く、非常にアジリティーの高い好選手だ。



外野手は飽和気味と言う下馬評のあるベイスターズだが、そうとばかりは言ってられない。


今年は肝心のセンターを固めることができなかった。


2021年の桑原将志はキャリアハイの素晴らしい成績を残し、もしあれがコンスタントに期待できるのであれば、リーグ屈指のセンターと言うことになるのだが、不安定さは彼の二つ目のニックネームでもある。


桑原は良い選手で私の贔屓でもあるのだが、今年の成績を見る限りでは、塩見、近本、丸、秋山、大島と言う他の5チームのセンターのレギュラー達と比べると明らかに見劣りする。


桑原の不安定さと神里の停滞、そして彼らの年齢を考えると、センターは近い将来ベイスターズの穴になってしまう危険性が高い。


こうした分析に基づき、いくつかのスポーツ紙は今年の夏の甲子園、近江高校戦で好投の山田投手からセンターバックスクリーンにライナーで飛び込む衝撃のホームランを放った高松商業のセンター浅野翔吾選手をベイスターズのドラフト1位と予想していた。


たしかに一理ある。しかし、浅野選手はジャイアンツが1位指名を公表しており確実に2球団以上の競合となる。


加えて、我が社には野手転向後育成契約となっている勝又温史がいる。


彼は、同学年となる今年の大卒外野手の中でも間違いなく出色の打撃センスと打力を持っており、ベイスターズは既にセンターレギュラーの候補となるドラフト上位相当の選手を既に手中に収めている思うのだ。


さらに、今シーズンに交流戦で活躍した蝦名達夫も走攻守揃ったセンターの候補だ。


勝又と蝦名が競って行くことで、ベイスターズのセンターは埋まって行く公算が高い。



私の考える最重要の補強箇所は捕手だ


伊藤光、戸柱、嶺井は既に全員が30代であり、この中で最も若い嶺井は今オフFA権を取得して移籍する可能性もある(そうならないことを願っているが)。


そして、山本、益子、東妻と言う若手の捕手たちの育成は決して順調とは言えない。


幸い、今年のドラフトには、強打で強肩の高校ナンバーワン捕手が含まれている。


大阪桐蔭の松尾汐恩選手。



強豪校で二年次から正捕手となり、高校通算38本塁打。甲子園でも史上10人目の通算5本塁打を記録した。


WBSC U-18に出場し、国際試合でも勝負強いところを見せてベストナインに輝いている。


高校一年まではショートを守っており、バント処理などで非常に俊敏な動きを見せる一方、遠投110mの強肩で2塁への送球は1.8秒台を計測することもある。


私は、今年のドラフト1位としてベイスターズが松尾選手を獲得することを期待している。


さらに、即戦力の大卒捕手として桐蔭横浜大の吉田賢吾選手も2位で指名すると言う捕手偏重ドラフトを今年は見せて欲しい。