mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

スター誕生! 物語が始まった





待ちに待った開幕戦。しかし、毎年予想していなかったこと、大概は良くないことが起こる。


今年の予想外はエース東克樹の不調だった。


3回までに7本のヒットを打たれて3点を失う苦しい展開。


理由は東投手自身、そしてカープのアナリスト達が工夫した対策双方にあったと思う。


東の投球は、コースは概ね良かったが高めに上ずっていたように見えた。


そして厳しいところを中々ストライク判定してもらえないこともあった。


一部には審判が辛すぎたという声もあるようだが、今年の東はオープン戦から同様の状況が見られたので、コーナーをつくストレートがわずかだが本当にズレているのかも知れない。


そして広島の対策はストライク先行の東に対して早いカウントから打って行くこと。


加えて、状況に応じた山本祐大の配球を今オフの期間に徹底的に研究したらしい(試合後の新井監督の談話)。


しかし、さすがに昨シーズン最優秀バッテリー賞を受賞した二人はカープの対策に柔軟に適応して4回以降は無失点で切り抜けた。


特に7回にクリーンアップを2三振とセンターフライで三者凡退に抑えたピッチングは東本来の姿に戻っていたように見えた。


7回、100球、被安打10、奪三振8、与四球1、失点3


というのはギリギリ合格というところだろうか?



彼が昨年と同様に勝ち頭としてチームを牽引していけるかどうかは来週の登板、恐らく戸郷翔征と投げ合うことになる巨人戦でのピッチング次第だろう。



立ち上がりに苦しんだ東克樹を救ったのは期待のスーパールーキー度会隆輝だった。


初回の守備ではライトライナーが照明と重なって捕球できないミスがあり、攻撃面でもカープ先発の久里亜蓮投手との初対決ではスライダーで打ちとられるなど、やはりオープン戦のようには行かないか、と思わせたがそれは杞憂だったらしい。


0-3のビハインド、特にエースがカープ打線につかまって序盤3失点という衝撃にチームもファンも沈みがちだった時間帯にスタジアムの空気を一変させる大仕事をしてのけた。


3点を失った直後の3回裏、先頭の山本祐大がセンター前にチーム初ヒットを放ち、続く新人の石上泰輝がファーストへ強いゴロを打つと一塁手のシャイナー選手がややもたつき内野安打。


9番バッターの東克樹はスリーバント失敗で悔しさを顕わにしていたが、その直後、一死一、二塁で打席に入った度会隆輝への久里投手の初球。


高めに浮いたスライダーは明らかな失投だった。


しかし、それを一発で仕留めた技術、パワーそして思い切りの良さが光った。


打った瞬間にスタンドは総立ちとなり、滞空時間の長い飛球がライトスタンド前列に吸い込まれると大歓声が湧き上がった。



エースの苦境とチームを救う同点スリーランホームラン。


何か持っている、ストーリーのようだ、など色々な形容があるだろうが、まさに生まれながらにして持っているスター選手の資質が明確になった瞬間だった。


この人は神に祝福されている。


私はぼんやりとそんなことを考えながら、ダイヤモンドを一周しながら何度もガッツポーズを繰り返す青年の姿を眺めていた。


人間の姿が眩しく見えることってあるんだな。




その後、両チームの継投が明暗を分けた。


8回表、マウンドに上がったウェンデルケン投手は6番レイノルズ、7番田村、8番シャイナーを三者三振に打ちとる快投を見せた。


元々カープとの相性は良い印象だったが、3人揃って空振り三振という圧巻の投球。


今シーズンも勝ちパターンの一角として頼りになるリリーバーだ。


一方、カープ新井監督は8回裏を島内投手に預けた。


島内投手は威力十分のストレートを投げ込んでいったが、先頭のタイラー・オースティンが追い込まれてからライト前へのヒットで出塁。


続く佐野恵太はセンターフライに倒れたが、この打席で捕手がボールを弾いた僅かな隙にオースティンがセカンドに進んだ。


さらに4番牧秀悟がライトへ抜けるヒットで出塁すると、ライトの田村選手が山なりの送球をする間にセカンドを陥れた。


田村選手は4三振とこのミスで今日は良いところがなかった。しかし、今日の試合で見つけた課題に対して懸命に努力して成長していくことだろう。


これで一死二、三塁。


5番宮﨑敏郎が予定通り申告敬遠となったところで、ベイスターズベンチは代打大和のカードを切った。


試合前にバックスクリーンで流れた映像でチャンスで打席に入る時にはライトスタンドの応援席を見ると言っていた大和選手は島内投手の強いストレートに手こずっていたが、4球目の真ん中寄りの速球をとらえた。


差し込まれてはいたが、何とかライトの定位置あたりまで飛ばすことができた。


サードランナーのオースティンは必死の形相で駆け出し、最後は皆がヒヤヒヤするヘッドスライディングで決勝点を挙げた。


そして、9回表のセーブシチュエーションではおおかたの予想を裏切って森原康平がマウンドへ。


オープン戦の最終登板でワンアウトも取れずに逆転サヨナラスリーランを浴びたことで印象は非常に悪かったが、わずか1週間でストレートの質が見違えるほど良くなっていた。


森原投手の復調と横浜でのカープ戦は苦手としている山﨑康晃の状態などの様々な要因を総合的に考えた上での判断だったのだろう。



先頭の代打秋山選手には抜ければセンター前という当たりを打たれたが、森原自身がかろうじてグラブに当て、それをセカンドの牧秀悟が敏速にリカバーしてファーストはギリギリアウト。


続く難敵の二人、菊池涼介と松山竜平もショートライナーとファーストゴロに打ちとりゲームセット。


試合後の三浦監督のコメントによると、クローザーは一人に固定せず、複数人を状況に応じて起用して行く方針とのこと。


今後、山崎康晃、伊勢大夢、ウェンデルケンなどが9回のマウンドに上がることもきっとあるのだろう。



試合後のヒーローインタビューでお立ち台に上がったのは、度会、大和、ウェンデルケンの3選手。



度会隆輝はここでも「最高でえーす」という絶叫を何度か繰り返しスタンドを沸かせていた。


我々ベイスターズファン以外でも、度会を見たいからハマスタへ行こう、という人がこれから増えて行くに違いない。


度会選手自身が、野球は夢のあるスポーツ、と語っていたが、度会がプレイするから夢があるんだと言われるようになるだろう。


この記念すべき夜に輝いていた彼の姿を忘れることはないだろう。