mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

今永昇太の飛翔癖の原因が明らかになった



今シーズン、今永投手は開幕直前の故障(左前腕の肉離れ)で出遅れながらも11勝(4敗)を挙げ、DeNAベイスターズの投手として初のノーヒットノーランも達成し、規定投球回に到達して防御率2.26と言うセリーグ3位の成績を残した。


侍ジャパンにも選出されており、名実ともにベイスターズのエースの地位を確立したと言って良いだろう。


しかし、一部ファンの間では今永飛翔太と言うニックネームが使われているように、彼は被本塁打が多いと言う印象がある。


多くの三振を奪い打者を圧倒しているように見える試合で突如ホームランを打たれる、そんな場面が今シーズンも何度かあった。



【今永昇太には本当に飛翔癖があるのか】


これは単に印象の問題なのだろうか?


2022年シーズンにセリーグで規定投球回に達した10投手について、被安打と被本塁打を調べてみた。下の表はその結果を防御率の良い(低い)順に並べたものである。



そして、被本塁打数をトータルの被安打数で割った数値を“飛翔率”として算出してみた。つまり、飛翔率というのは、単純に、ヒットが本塁打になる確率を表していることになる。


青柳晃洋投手や大野雄大投手の飛翔率は0.05台であり、やはり非常に低い。彼らは一回の登板あたり被安打5〜6といったところで抑えるので、3〜4試合に一本くらいしかホームランを打たれないことになる。


一方、飛翔率が0.1を超えているのは、今永昇太、小川泰弘、菅野智之、柳裕也の4投手。中でも今永投手はただ一人飛翔率が0.13を超えており、3試合に2本程度のホームランを打たれている。


やはり、今永昇太投手の飛翔癖というのはデータとしても表れているようだ。



【今永投手の球質】


ストレートの「のび」という言葉があるが、これは何を意味するのだろうか?

 

一つの答えは、バッターが思い描くような放物線を描かずあまり落ちてこないようなボールのことである(この差のことをホップ成分とも言う)。


これは、強いバックスピンがかかっているためにマグヌス効果(下図のようにボールの回転によって下側の空気の圧が上側よりも大きくなるため浮力が生ずる効果)で揚力が生じているボールのことで、今永昇太の得意なストレート(フォーシーム)はこれにあたる。

 



バッターの目線はホームベース近くではボールのスピードについて行くことができないため、リリースまでのピッチャーの肘や手首の動きとリリース直後のボールの初動を見て予測をたて、その予測に従って最適なタイミングに最適な位置でバットをボールにコンタクトしようとする。


そこで、バッターの想定以上にホップの効いたストレートが来ると、バッターは実際のボールの軌道よりも低い位置を目指して振ってしまうため空振りやポップフライになる可能性が高い。


今永の高い奪三振率(8.27。中日の小笠原慎之介投手の8.71に次いでセリーグ2位)はこのことを表している。

 

しかし、ホップするバックスピンの効いたボールが運悪くバットに当てられた場合、打球にもバックスピンがかかりやすく打球は落ちて来ずに遠くまで飛ぶこととなる。


これが俗に言う「軽いボール」の正体と考えられる。

 

つまり、今永昇太の高い奪三振率と被本塁打の多さ(飛翔癖)は表裏一体のものなのだ。

 

そういえば、2021年シーズンのある時点で、今永とジャイアンツの丸の対戦成績は6打数2安打4三振で2本のヒットはいずれもホームランという絵に描いたような状況だった。

 

私は勿論これからも今永昇太を応援していくに決まっているが、そのことは、今後も胸のすくような三振の山と時折打たれる大ホームランという両極端を味わいつづけることを意味しているのだろう。


しかし、ホップ成分が多く奪三振率の高い投手の全員が飛翔率が高いという訳ではない。


今永投手の飛翔癖を理解するためには、もっと突っ込んだ分析が必要ではないかと思われた。



【今永投手の飛翔癖の根本原因】


今永投手ほど球威がありコントロールも悪くない好投手になぜ飛翔癖があるのか?


その答えを探して、私は彼のこれまでの経歴を辿りながら詳しく調査した。


今永昇太は2015年ドラフト一位でベイスターズに入団し、新人年から8勝(9敗)を挙げるなど活躍したが、各年の飛翔率を計算してみると故障のため登板数の少なかった2020年を除き一定して飛翔率は0.1を上回っている。



つまり、彼の飛翔癖はプロ入り後に発症したものではなく、それ以前に原因があるようだ。


そこで、私は、彼の母校である駒澤大学、そして、北筑高校時代にまでさかのぼって調査を続けた。


答えは彼の出身高校である北筑高校にあった。


北筑高校は福岡県北九州市にある県立の進学校であり、九州大学をはじめとする国公立大学に年間100名程度が合格するなど偏差値も高いが、文武両道を掲げてサッカー部やバドミントン部が県内の有力校となっている。


今永投手の意識高い系の振る舞いやコメントも高校時代の勉学の賜物なのかも知れない。


北筑高校の情報を整理していて、私は”ハッ”と気がついた。


そうか、これだったのか。


これが今永昇太の飛翔癖の根本的な原因だったのだ。


Eureka!(昔はユリイカと言っていましたが、最近はエウレカと読むんですってね)




北筑高校のモットー


向学・自律・飛翔(!)





あー、スッキリした。