ウェンデルケン入団・ガゼルマン残留決定 来季の外国人投手の陣容が見えてきた
11月28日 来シーズンの外国人投手に関して新たなニュースが二つあった。
一つは新外国人リリーバーのJ.B.ウェンデルケン投手の入団が決まったこと、そして、昨シーズン途中にシカゴ・カブスから移籍してきたR.ガゼルマン投手の残留が決定したことだ。
ウェンデルケン投手については二週間ほど前にベイスターズのInstagramをフォローしているという情報があり、何らかの話があるという推測はなされていたが、実際に入団にまで至る話なのか否か等の情報は全くなかった。
そして今日、唐突に(こうした話はいつも唐突なのだが)ベイスターズに入団決定という一報がもたらされた。
当初はMLB担当の米国人記者のSNSの情報に基づき、出来高を含めると単年4億円強という噂もあったが、実際はこの金額は球団側がオプションを保有する2年目までを含めた総額であるようで、実際には単年の年俸が1億2000万円(出来高含めて2億円強)というもう少し現実的な線ではあるようだ。
ファンフェスティバルでの山﨑康晃投手の残留決定という嬉しいサプライズがあった時、彼は最終的に決断したのはここ二、三日と言っていたので、リリーバーであるウェンデルケン投手はセットアッパーないしはクローザーの候補ということで話が進んでいたと思う。
その点を考慮すれば、彼に対する球団の期待値は高いと考えて良いだろう。タイラー・オースティン選手の初年度とほぼ同額の年俸という意味でもそのことは窺い知ることができる。
一方、ガゼルマン投手については、入団当初は難病で離脱した三嶋一輝投手の代わりにブルペンを支えるということが狙いだったが、むしろ先発で好成績を収めることで首脳陣にアピールした。
確かに彼はコントロールを含めてまとまりの良いピッチャーで、高速シンカー(あるいはツーシーム)でゴロを打たせるのが持ち味だ。
試合を作る能力に長けていて、大崩れしないという点は大貫晋一投手のように先発ローテーションに組み込んだ場合の安定感を持っている。彼の年俸も1億2000万円ということで球団の評価が高い。
この両投手の入団決定によって、ロメロ投手の退団はほぼ決定的であり、クリスキー投手についても退団の可能性が濃厚になったように思う。
もしそうだとすると、来季のベイスターズの外国人投手陣は、ガゼルマン投手(先発)、エスコバー投手(セットアッパー)、ウェンデルケン投手(セットアッパーもしくはクローザー)の3人ということになりそうだ。
外国人選手に関して残された検討課題は、右肘靱帯修復術によって今オフもリハビリということになったオースティン選手のバックアップとなるような新外国人を獲得することがあるか否かということだろう。
私としては、筒香嘉智選手のNPB復帰という可能性を捨てきれておらず、その成否は来年1月以降に明確になると言われている。仮に新外国人野手の獲得があるとしても、具体的な動きはその時期にまでずれ込むかも知れない。その頃にはオースティン選手の序盤戦での復帰見通しもはっきりしてくるだろう。
それはさておき、今日は、来シーズンにベイスターズで腕を振るってくれることになった二人の外国人投手の成績や彼らへの期待について書いてみよう。
【ウェンデルケン投手のピッチングスタイルとNPBでの期待】
ウェンデルケン投手は1993年生まれの29歳で、身長185センチ、体重109キロのがっしりとした体格の持ち主だ。
動画を見るとなんとなくアメリカやカナダにいる木こり(ランバージャックというのでしょうか?)のような体型で、今までのベイスターズの外国人選手ではなかったタイプのように思う。
彼は2016年にアスレチックスでメジャーに昇格したが、その前に2015年のプレミア12で米国代表として出場している。
その後トミージョン手術とその後のリハビリを挟んで、通算144試合に登板して10勝6敗、防御率4.00の成績を残した。
今シーズン途中にウェイバー公示後ダイヤモンドバックスに移籍し、中継ぎとして29試合に登板し、2勝1敗、防御率5.28だった。
彼の中継ぎとしてのキャリアハイはアスレチックス時代の2020年に21試合に登板して1勝1敗、防御率1.80の成績を残した時だろう。
今シーズンの彼の投球内容について、まずは球種の配分と球速の頻度分布を見てみよう。
軸となるのは平均球速95mph (約153km/h)の速球で、全投球の60%を占める。これに加えて、26%のスライダーと16%のチェンジアップの3球種で配球している。
彼のストレートの平均球速はMLB全体の72パーセンタイルであり、かなり良好という位置付けにあるが、特にスピン量が全体の87パーセンタイルとなっており「非常に良い」評価になる。
ただし、ストレートのコントロールについては真ん中付近に集まる傾向があり、速球に慣れているMLBのバッターからすると怖さがないということになるだろう。この点が今年の彼の高い防御率の原因であるかも知れない。
MLB関連のサイトでランダムピッチということで無作為抽出された彼の投球動画を数十球ほど見た中では98mph(約158km/h)という数値が最速であり、平均球速が153km/hであることから見てもNPBの平均的なバッターにとってはやや甘めのコースでも十分に脅威になると思う。
そして、彼の「持ち球」の中ではチェンジアップの被打率が低くMLBでも武器になっていたようだ。実際、この球種については外角一杯でストライクをとるボールと真ん中低めでストライクゾーンからボールになるものとを投げ分けられているようだ。
153〜158km/hのやや甘いコースのストレートと低めのストライクとボールになるコースを投げ分けられる球速差15km/h程度のチェンジアップはNPBのボールに苦労しない限りは十分に通用することだろう。
彼が入団することによって、セットアッパー〜クローザー相当の優れたリリーフとして、伊勢大夢、E.エスコバー、J.B.ウェンデルケン、そして山﨑康晃の4人が居並ぶこととなり、それに加えて成長著しい入江大生と難病から復帰を目指す三嶋一輝がその座を狙うという構図になる。
この布陣は昨年以上に球団及び首脳陣が悲願の優勝に賭けていることを物語っているように思えてならない。
【ガゼルマン投手は2年目に飛躍できるか】
ガゼルマン投手は当初中継ぎとして登板し、首位ヤクルトに肉薄して迎えた8月27日の横浜スタジアムでの試合、4-16という衝撃の大敗を喫したあの試合で石田健大の後を受けて4回表にマウンドに上がりオスナ選手の3ランを含む4失点で降板した。
あの日、彼は屈辱を堪えるかのように自分のユニフォームの胸元のあたりを噛み締めていたのが強く印象に残った。
そして、恐らく、MLBでも経験豊富な斎藤隆コーチをはじめとする首脳陣との相談を続け、先発として復帰登板を果たしたのは9月13日の中日戦だった。
この試合では7回99球を投げて被安打3、奪三振4、与四死球2、無失点のHQSで来日初勝利を挙げた。
次の巨人戦(9月21日)はあまり調子が上がらず、5回1/3自責点2で敗戦投手となりはしたが、試合はしっかり作ったという印象だった。
そして3度目の今季最後となる登板は再び中日戦(9月28日)で、7回85球、被安打3、奪三振4、与四死球3、無失点のHQSだったが勝敗はつかなかった。
この3試合では低めにボールを集めることがしっかりできており、結果として安定して試合を作ることができるという首脳陣の評価を勝ち取ることに成功した。
CSではファーストステージで敗退してしまったが、もしヤクルトとのセカンドステージに進んでいたらファーストステージ初戦で先発した今永昇太の2度目の登板の前に先発の機会を与えられていたのではないかと思う。
ガゼルマン投手の今シーズンの投球内容を下表にまとめた。
速球系が50%以上となっているが、その中で大半を占めるのは平均球速147.4km/hのツーシームで、失点回避の貢献に関する指標wFTは5.8という高い数値を示している。
このボールを低めに投げ込むのを軸にしつつ、フォーシーム、スライダー、カーブ、チェンジアップという球速帯の異なる幅広い変化球を制球よく投げ込むことが彼の持ち味だ。
彼の2年目はどうだろうか?
私は彼の登板機会の少なさが対戦相手の研究材料の不足に繋がり、十分な対策をとられることなく来季の開幕を迎えるのではないかと予想している。
そして、彼の方はと言えば、シーズン途中からの参戦だった今季とは異なり、NPBのボールへの順応や日本の打者の特徴を踏まえてしっかりと準備をして臨むことができる。
やや希望的な観測かも知れないが、彼が来季活躍し、二桁勝利あるいはそれに近い成績を残す可能性はかなり高いのではないかと考えている。彼の年俸1億2000万円という球団の評価もそれを裏付けているように思われるのだ。
ガゼルマン投手の残留によって、来季のベイスターズの先発ローテーションは次のようなものになると予想される。
(左投手) 今永昇太、濵口遥大、東克樹 (バックアップ)石田健大
(右投手) 大貫晋一、R.ガゼルマン、平良拳太郎 (バックアップ)上茶谷大河、京山将弥
その他にも、坂本裕哉や阪口皓亮がローテーションを狙っており、昨年のドラフト1位小園健太の初登板もあるかも知れない。
こちらも優勝を狙うという首脳陣の本気度が窺える陣容だ。
ああー、早く来年になって野球が始まらないかなあ。
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