宜野湾キャンプが本格化し若手の活躍も目立ってきた
2月1日に始まったベイスターズの春季キャンプは昨年と同様、ベテランを除く一軍主力と期待の若手から成るA班が沖縄本島の宜野湾、ベテランや故障明けの選手たちを含むB班は奄美でそれぞれ第1クールを終えた。
最初の休日となった昨日(2月5日月曜日)はA班の新人4人が恒例となったマグロの餌やりを行った。
グラウンド外で取材を受けるのも初めてだろうし、意外とこうしたところから「ああ、プロ野球選手になったんだなあ」と実感するのかも知れない。
すでにランチ特打に登場している度会隆輝選手は最初のスイングでライトフェンス超えの一打を放つなど、3球団競合のドラフト1位らしい打撃センスと打球を飛ばす技術を見せてくれた。
谷繁さんや佐々木主浩さんなどOBたちからは、間の取り方が元ジャイアンツの髙橋由伸さんのようだという声が聞かれ、早くも新人王を取るポテンシャルがある、などという人もいる。
昨年までカープにいた西川龍馬選手(今年からオリックス)のようなバットコントロールという意見もあり、私はどちらかと言うとこの意見に賛同したい。
この時期はドラフト1位を持ち上げる記事が多いものだが、本人は浮かれることなく練習に集中しているようで中々よろしい。
ドラフト2位の松本凌人投手も右サイドから力のあるストレートや高速シンカーを投じており、評価が高い。飛ばしすぎて開幕前に故障することだけはないように、自分の力を徐々に出していって欲しいと思う。
その他、石上選手や井上選手も後述するように存在感を示しつつある。
【新入団の投手たち】
MLB復帰が最優先であることを公言しているトレバー・バウアーの去就はキャンプイン後も未だ不透明だが、彼以外の外国人投手たちはすでに続々とブルペンに入っている。
アンドレ・ジャクソン投手は長髪を大きなお団子のようにまとめた特徴的なヘアスタイルで投球を行なっていることが話題になっているが、190cmの長身から投げ下ろす投球もかなり力があり、期待できそうだ。
投球メカニック的に言うと、踏み込んだ左足の突っ張りが強く、しっかりと反力をとって体重移動の力をボールに伝えることができるタイプのように見える。
制球さえある程度まとまっているのであれば先発、リリーフどちらでも行けそうな感じだが、今永昇太の抜けたチーム事情からすると、やはり先発での起用を予定しているのだろう。
リリーフ右腕のローワン・ウィック投手は小さいテイクバックから鋭い腕の振りで投げ込むタイプ(元捕手という経歴とも関係しているのだろうか?)。
ナックルカーブの使い手でもある彼は、うまくはまればウェンデルケン投手のように初年度からブルペンの柱の一角として活躍することが期待できる。
キャンプがスタートしてから来日したアンソニー・ケイ投手は宜野湾に直行し、早くもブルペン入りした。
長年ベイスターズのブルペンを支えた鉄腕エドウィン・エスコバー投手に代わって入団したケイ投手も同じく左腕であり、左の中継ぎが石川達也投手のみという現状で彼が勝ちパターンに入ってくれると大変に心強い。
最速157km/hの速球、150キロ近い高速スライダーと曲がりの大きいスウィーパー、そしてサークルチェンジを操る彼はマイナーで12以上、MLBでも9以上という高い奪三振率を誇るが、四球が多いことが玉に瑕。
バウアー投手の去就次第では、むしろ、昨年のガゼルマン投手の枠で先発として起用されることもあるかも知れない。
そして、お笑い芸人のくまだまさしさんに似ていると言う予想外の噂が飛び交っているウェンデルケン投手も再来日を果たし、2回目のキャンプで調子を上げている。
昨年は3月初旬のオープン戦で急性腰痛を発症したためにかなり出遅れてしまったが、今年はその反省を生かして開幕からセットアッパーとして活躍してくれることだろう。
この4人の投手はいずれもパワー系の投手であり、ロメロ投手、ガゼルマン投手と続いたツーシーム系のゴロピッチャーの系譜とはかなり異なっている。
編成担当も過去のデータに基づきNPBで活躍するためのポイントを掴んだのかも知れない。
彼らの活躍を期待しつつ見守ろう。
【タイラー・オースティンは再び輝くことができるか?】
先日このブログでも書いたように、過去2年間まともに実働していたとは言えないオースティン選手には中々手厳しいコメントが多かったが、今年のキャンプでは久々に体調万全のスタートを切ることができたようだ。
第一クールから連日のようにランチ特打を行なっており、昨日は柵越え10本などやはり実力者であることを印象付けている。
私もDAZNなどで彼のバッティングを見ていたが、軽く振っているように見えて彼方まで飛んでいく彼の打球にはやはりロマンを感じる。
宮﨑敏郎、牧秀悟、佐野恵太と好打者を擁するベイスターズだが、彼らはどちらかと言えば中距離打者であり、生粋のホームランバッターという意味では、ソト選手が退団した今、オースティン選手に係る期待が大きい。
ジャイアンツの岡本選手やスワローズの村上選手など、いつでもホームランの危険性のあるバッターが相手打線にいることは非常な脅威となることが間違いない。
オースティン選手がその役割を担ってくれれば、ベイスターズ打線が相手バッテリーに与える圧力は何倍にも増すことだろう。
彼の場合、なんと言っても問題は怪我なので、持ち前のハッスルプレイには少しブレーキをかけてシーズンを通じて打線を引っ張ってもらいたい。
本日の紙面を飾ったインタビューでは、子供の頃からのプレイスタイルを大きく変えることはないが、ヘッドスライディングに関しては出来るだけやらないように心がける、というコメントを出していた。
お願いしますよ。
一度で良いから、規定打席に達する働きでシーズンを通して本当の実力を発揮してください。
円安の影響もあって新入団の外国人野手がおいそれとは活躍できない今、26年ぶりの優勝にはそれが欠かせないのだ。
【ライブBPでの攻防】
春季キャンプの前半を見ていると、毎年、矛と盾の話を思い出す。
ある商人が「なんでも貫くことのできる矛」と「絶対に貫くことのできない盾」を売っていたという中国の故事だ。
気持ちよさそうに打球を飛ばしている打者を見ると、どんなピッチャーでも打ってくれそうに感じるし、どんどんとストライクゾーンに投げ込む投手を見ると、どんなバッターでも打ち取ってくれるように思う。
当然、そんな筈はないので、実戦が近づけば否応なく現実を見せつけられることになる。
第二クールの初日である今日は今年のキャンプ初めての実戦モードの練習であるライブBPが行われた。
ここで初めて矛と盾とが対戦し、勝敗がはっきりと見えることになる。
結果を出したのは、投手では、最初にマウンドに上がった小園健太選手。
ストレートの最速は144km/hだったが、対戦する打者たちは軒並み詰まらされ、ポップフライやボテボテのゴロで打ち取られていた。
6人の打者と対戦して無安打、無四球という好成績だった。
昨シーズン最終盤の台湾リーグの際の好調ぶりを保っているのだろう。
この時点で144km/hが出ているということは、開幕までには150km/h近くのストレートを投げる状態にまで持っていくことができるのではないだろうか。
もう一人、非常に鮮やかな活躍で目立っていたのは今年ドラフト4位で東洋大から入団した新人の石上泰輝選手。
50m5.9秒の俊足でありながらも、学生時代にも西舘投手(今年のドラフトで巨人から1位指名で入団)のボールを満塁ホームランにしたこともある小柄ながらガッチリとした体型の遊撃手候補で、彼が3打数2安打と結果を出した。
2本のヒットはいずれも長打だったが、特に石川達也投手から逆方向(左翼)に放ったホームランは彼のパンチ力の強さを実証したものだった。
林拓真、森敬斗、大和、京田陽太と並ぶ遊撃手の候補はいずれも軽打が主体であり、ホームランも打てる石上選手や内野ユーティリティではありながら一番好きなポジションとしてショートを挙げる知野直人選手は攻撃型の選手として候補に挙がるように思う。
明日以降もこうして目立つ若手たちがどんどんと出てくることを期待したい。
彼らの輝きはそのままベイスターズのチーム全体としての戦力を向上させる爽やかなエネルギーになっていくことだろう。
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