mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

先発ローテーション6投手に伝えたいこと(その2)


昨日に続いて、先発ローテーション6投手それぞれの最近のデータを振り返りつつ、期待を込めてこれからの活躍を祈りたいと思う。



大貫投手は春先に調子が上がらないことがあり、今シーズンも開幕当初はもう一つという感じだったが、今年は復調が早かった。


この2ヶ月の成績は以下の通り好調で、ベイスターズの中で現状最も安定している投手ということができる。


5月 4登板 3勝1敗 防御率 1.07 WHIP 0.79 被打率 .181 QS3回 HQS2回


6月  2登板 1勝1敗 防御率 1.67 WHIP 1.18 被打率 .231 QS1回


大貫投手の際立った長所は次の三つだと思う。


① スピンの効いたキレの良いストレート


2020年9月の横浜スタジアムでの中日戦。その日私はたまたま一塁側エキサイティングシート最前列で観戦していて、先発の大貫投手がイニング間に伊藤光捕手とベンチ横で行っていたキャッチボールを間近でみることができたが、ベイスターズの攻撃が始まるとそちらに目を奪われていた。


すると、自粛期間中でもありファンの声援が全くない静かなグラウンドで、「シュルシュルシュル・・・」という音がはっきりとわかるほど聞こえてきた。


大貫投手の投げたボールが回転して空気と摩擦する音だった。


 間近とはいえ、20mほどは離れていたと思う。私は彼のストレートの回転の良さに下を巻いたことが強く記憶に残っている。


② 正確なコントロール


大貫投手は素晴らしいストレートを投げるが、一線級のプロ野球投手として飛び抜けたものではない。それは彼の精密なコントロールと組み合わされることで真価を発揮するのだ。


昨シーズンの序盤もなかなか勝てない時期が続いたが、しっかりと腕を振って、しかもコースに投げ切るということができていなかったことが原因だった。


この時の大貫投手の談話。


”両サイドにしっかりとまっすぐを投げ切ることができなかったので、腕をしっかり振って、強いボールをボールゾーンから徐々に中に入れていく練習をしました。


内から広げるのではなく、外から中へ狭めていくんです。右バッターのアウトコースへは左のバッターボックスのラインから少しずつ近づけていく。


間違ってもベース板の真ん中へ行かないよう、意識を強く持って投げました。”


文章にすると何気なく聞こえるが、これはすごいことだ。


ご存知と思うが、ピッチャーのプレートからホームベースまでは18.44m離れている。そして、投手から見たホームベースの左端つまり左打者の内角ギリギリのコースとバッターボックスのラインとはわずか15cmしか離れていない。


彼の取り組んでいた練習は、まず、18.44m離れた左打者のバッターボックスのライン上に全力のストレートを確実に投げられるようにして、次に、全力投球のまま、そこから15cm離れたホームベースの左端まで少しづつ近づけていくという修行なのだ。


この修行の甲斐あって、シーズン終盤(9/15以降)のゾーン別データでは、右打者についてはアウトローに30%以上の投球を集中させ、そこでの被打率.100と抑えている。また、左打者についても、インローの被打率.167、高めでも2割程度に抑えることに成功した。


③ ピッチトンネル


これに加えて、彼は、カットボール、ツーシーム、スプリットという140~145km/hの球速レンジにある変化球でピッチトンネルを作ることができる。


ピッチトンネルというのは、ホームプレートの手前7~9mのところにトンネルと呼ぶ仮想的な小さい円があるものと考え、この円を通した後、ホームプレートに達するまでの間にばらばらな場所に行くようにすると言うものだ。


バッターがボールを打つためには、トンネルのあたりまでに判断して始動する必要があるため、その後の変化には対応できず、空振りや打ち損ないになると言うのが背景にある。


バッターは真ん中高めの速球を狙っていて、これと同じ軌道の(つまり同じトンネルを通る)ボールに対して高い確率でスイングする。


真ん中高めの速球を狙ってスイングを始めたバッターは、その後の変化には対応できず、特にストライクゾーンの境界あたりまで小さめに外れていくボールは高い確率で空振りあるいは打ち損じてしまう(大きく外れすぎると見極められてボールとなることが多い)。


大貫晋一投手に伝えたいこと


”貴方がこれまでに味わってきた瀬戸際が数多くあったからこそ、そして、その度に、今度が最後になるかも知れないと言う危機感を持って切磋琢磨して新たな技を習得したからこそ、今の素晴らしくバリエーション豊かな投球があるのです。


私たちファンは皆そのことを知って貴方の努力に敬意を持っています。


どうか、自分の力を信じて盛大にロジンバッグの白煙を上げながら思い切りコーナーに投げ込んでください。”


昨シーズンにトミージョン手術から復帰を果たし、終盤に復帰後初勝利をあげて、本人も周囲も希望を持って迎えた2022年シーズンだった。


そして、今永昇太の前腕肉離れによる離脱もあり、初めての開幕投手に指名された。しかし、その後の結果は皆さんご存知の通り、残酷なものだった。


この2ヶ月(といってもここ1ヶ月は登板がないが)の成績は次の通り、新人王をとった年の活躍を記憶しているファンから見るとちょっと信じられないほどの惨状だ。


5月 2登板 0勝2敗 防御率 16.50 WHIP 3.17 被打率 .516 QS0回


6月 登板なし


これは本人にとっても辛い経験だったに違いない。今日の報道で本人も次のように語っていることが伝えられた。


”かなりメンタルにきていたので。おかげで体重2キロもやせた。


もともと体重をしぼろうと思っていたので、体重2キロ落ちたことで体のキレは実感しているので良かった。”


ファームの試合での彼の登板は全てチェックしていたが、ストレートのキレと制球が明らかに向上した。全盛期と比べるとまだ物足りない感じはするが、マネージメント能力の高い彼であれば一軍でも戦えるだろうと思う。


本人によると、ファームでの再調整では体力、技術を一から見直したそうで、この結果、直球の回転軸が改善され、回転数も約200回転増で力強さを取り戻したとのこと。


”真っすぐの強さも1軍にいたときより戻ったかなと思うし、変化球もカットボールの見直しをしたので、そこは変わったかなと思う。”


と確かな感触を得ているようだ。


東克樹投手に伝えたいこと


”今の自分にできることを精一杯やってバッターとの勝負を楽しんでください。


勝ち負けは大事だけれど、我々ファンが求めているのはそれだけではありません。


これから先まだ何年もある貴方のキャリアで、また、あの輝くようなピッチングを見せてくれることが私たちの夢です。


何度失敗しても応援し続けていますので、絶対に諦めずに復活してください。”


石田投手も浜口投手と同じように、開幕からキレのあるストレートを中心に安定した投球を見せていたが、コロナ陽性判定で隔離による離脱を余儀なくされた。


戻ってきてからの成績は次の通り。


5月 登板なし


6月 2登板 0勝1敗 防御率 4.35 WHIP 1.74 被打率 .300 QS0回


数字上は3月(一試合、1勝0敗、防御率 2.57、QS1)、4月(一試合、0勝0敗、防御率 1.50、QS1)に比べて見劣りする。


特に、好調だった4月は奪三振率 9.00という素晴らしい数字を残しており、6月に入ってそれが5.23と低下していることなど懸念される点はある。


しかし、理論的楽観主義を掲げる私は、心配する必要など無い理由を二つ挙げることができる。


3月、4月好調だった時の試合は全てナイターだったが、6月は2試合ともデーゲームだった(しかも呪いのかかった日曜日)。次回の登板は水曜日か木曜日のナイター(東京ドームなのでデーゲームでもナイターと同じではあるが)なので勿論大丈夫だ


3月、4月好調だった時の試合は全て気心の知れた戸柱捕手がマスクを被ったが、6月は2試合とも嶺井捕手だった。嶺井捕手の休養も必要なことだし、次回の登板は首脳陣も察して戸柱捕手と組ませることになるので、この点も大丈夫だ


一般に、ナイターに比べてデーゲームは打者がボールを見やすく有利になると言われている。つまり、ナイターの方がボールが速く感じるのだ。


石田投手のピッチングは、ストレートで押し込み、ファウルや空振りを取れるかどうかで成否が左右される。そして、彼のストレートの球威は1軍でそれができる境界線上に近いところにあるのでは無いかと思う。


つまり、デーゲームではミートされるが、ナイターだと押し込んでファウルや空振りが取れるという状態なのではないか。首脳陣が彼の登板日を日曜日から平日に移動したのはこうした配慮もあってのことでは無いかと私は睨んでいる。


2016年以来バッテリーを組むことが最も多かった”女房役”の戸柱捕手は、今年4月のインタビューで次のように語っている。


”(ホーム)ベース板上で球が強い。相手打者は直球に差し込まれているし、空振りもする。計測表示以上のスピードを感じているのでは。それが健大の本来の球です”


”なかなか結果を残せない時期は「1点でも取られたら駄目」という感じだったけど、今年は「6、7回で3失点」くらいの、いい意味で開き直っているようです”


また、戸柱選手は今季から武器となったカットボールも好投を支えているという。


”去年も投げていたけど、今年から使える球種になりました。


左打者にゴロを打たせ、右打者は空振りもする。カウントを整えやすくなった。”


捕手による防御率の変化はオカルトだ、という説もあるが、やはり相性というのはあると思う。人間だもの。


ましてや、ピッチャーがキャッチャーをどれだけ信頼しきって投げ込めるかというのは重要な部分だと思う。そういう意味では、石田投手に限っては、最近出番の少ない戸柱選手とのバッテリーで任せて欲しい。


石田健大投手に伝えたいこと


”ビビってリズムを悪くすることさえなければ絶対に大崩れはしないので、落ち着いて、「6、7回で3失点」くらいの気持ちで投げてください。


選手会長も務めて、そろそろ中堅からベテランの域に入りつつあるので、キャッチャーは戸柱さんにしてください、と自分から三浦さんと斉藤さんに言ってみよう。”