mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

カープ戦3連敗 偶然と必然




6月26日 対広島東洋カープ 横浜スタジアム 3-4 負け


昨日の惜敗の余韻の残る今日も横浜スタジアムは晴天だ。選手たちはゆっくり寝て十分な休息をとり、新たな気持ちでカープとのカード最終戦に臨んでいると思う。


ベイスターズの先発は京山将弥。佐々木朗希と投げあって彼自身に勝ちはつかなかったもののチームに勝利をもたらした試合など、このところ好投を続けている。


最速150km/hを超えるキレのあるストレートを軸とした彼のピッチングは、球威としては、ベイスターズの先発ローテーションの中で上位にあると思うが、課題はここぞと言うところでの制球だろう。


本人も今日は勝負どころでボールを低めに集めたいと言っているので、その辺りが注目すべきポイントになる。




昨日のラインアップからの変更点としては、まず、ソトと森敬斗がスタメンで出場すること、そして2番楠本に代わって桑原を入れたことが挙げられる。


今シーズン初勝利を目指す京山とバッテリーを組むのは嶺井。このところ疲れのせいか少し調子を落としているように見えるが、先週も京山をよくリードしていた事を評価しての起用だろう。


カープの先発は九里亜蓮投手。昨年ほど圧倒的ではないが、ベイスターズにとってはやはり難敵であるに違いない。


九里投手は右打者に対して被打率 .227、左打者に対して .311と左を苦手にしているが、左右病と言われる三浦監督が今日は何故か佐野と森以外は右打者を並べた。単なる左右以外の個別の相性を考慮してのことなのだと思いたい。


ラッキーな当たりもあったが昨日久しぶりにマルチヒットを放った牧秀悟が復活を遂げるような活躍を見せることができるか、そして、佐野と森という2人の左打者が九里投手を攻略する糸口となるかと言ったところに注目したい。


楠本、神里、藤田一也と言った左の代打陣を使うタイミングも重要なポイントになるかもしれない。


1番 蝦名(RF)
2番 桑原(CF)
3番 佐野(LF)
4番 牧(2B)
5番 宮﨑(3B)
6番 ソト(1B)
7番 嶺井(C)
8番 森(SS)
9番 京山(P)


継投 京山将弥(6回)→伊勢(1回)→エスコバー(1回)→クリスキー(1回)→H 山﨑(1回)→H 田中(1回)→敗 平田(1回)



1回裏 ベイスターズの攻撃


先頭の蝦名が四球で出塁すると、すかさず盗塁し、続く桑原の内野ゴロの間にサードに進む。
一死三塁のチャンスで3番佐野のファーストゴロの間に蝦名が生還してベイスターズが1-0と先制した。


その後、蝦名がエビゾリでライトライナーをギリギリ捕球するなどのファインプレーにも助けられて京山は丁寧にアウトを重ねて行き、5回まで無失点で勝ち投手の権利を得た。



6回表 カープの攻撃


前の回に無死一塁から送りバント失敗など拙い攻撃があり流れが良くないと懸念していたが、案の定(悪い方の予感って大体当たりますよね)これまでカープ打線を無失点に抑えてきた京山がつかまり上本のヒットと菊池のツーベースで一死二、三塁のピンチを作る。


ここで4番マクブルームにライトへのツーベースヒットを許し、2人のランナーが還って1-2と逆転を許した。


しかし、この後の一死満塁のピンチでは、京山が踏ん張って小園と中村奨成を内野ゴロに打ち取り追加点を許さなかった。


8回表 カープの攻撃


先頭のマクブルームと坂倉に連続安打を許し、送りバントで一死二、三塁となったところで、小園が足元の難しいボールを転びながら当ててスクイズ成功。1-3とカープのリードは2点に広がった。


8回裏 ベイスターズの攻撃


カープのセットアッパー森浦から先頭の桑原がフェンス直撃のツーベース。続く佐野のヒットで無死一、三塁のチャンスを作る。


ここで、牧はサードゴロ。飛び出していた桑原が挟殺プレーでアウトになり、しかもファーストランナー佐野はセカンド止まりと嫌な流れになった。


しかし、宮﨑が四球を選んで一死満塁となったところで、代打大和がゴロで三遊間を抜けるタイムリーヒットをしぶとく放ち、2-3と一点差まで追い上げた。


なおも一死満塁のチャンスだったが、嶺井の代打伊藤光は粘った末に空振り三振。


続く森の代打大田泰示は真ん中低めのストレートをジャストミートし、鋭いライナーがセンターの頭上を越えかけたが、必死に背走した野間選手がジャンプすると一杯に伸ばした左手のグラブの先で辛うじて捕球しアウトとなった。


これが抜けていれば一気に逆転というところだったので、非常に大きなプレーとなった。


9回裏 ベイスターズの攻撃


カープのマウンドにはベイスターズ相手に常に盤石のピッチングを見せる不動のクローザー栗林投手があがった。


今日も簡単に二死まで奪われたが、ここから桑原が粘ってフォアボールで出塁すると、続く佐野恵太が右中間の最奥部に達する起死回生のツーベースを放った。


二死だったので打つと同時にスタートを切った桑原が懸命にホームまで疾走して土壇場で3-3の同点に追いついた。ここで4番牧は申告敬遠で、5番には宮﨑に代わった柴田が入ったが、初球を打ち上げてレフトフライに終わった。



その後延長に入り、10回、11回は両チームのリリーフが踏ん張って無得点。


12回表 カープの攻撃


ベイスターズの7番手平田真吾が先頭の代打羽月にツーベースヒットを許し、さらに続く野間が送りバントを決めて一死三塁の大ピンチ。ここで、代打松山が3-1からの5球目を外野まで運び、これが犠牲フライとなって3-4。これが決勝点となった。




今週前半は今季初めて東京ドームでの巨人戦に勝ち越し、これからと言うところで今シーズンは天敵となっているカープに3連敗をくらった。


しかし、別に落ち込む必要は無い。と言うか、落ち込んでいても何も生まれない。


この敗戦を今後に活かし、チームの成長につなげていくためには、負けた理由を明確にし、さらにそれらを必然のものと偶然のものに区別することが必要だろう。


必然の敗因については、対策を明確にしてチーム戦略にしっかり取り込んでいく必要があるが、偶然の敗因については、逆に、気にしてはいけない。こちらにまで対策を取ろうとすると、現状のアドバンテージまで失うことになりかねない。


◯ 必然の敗因① 戦術の不徹底とそれを支える技術の不足


同点で延長に入った10回裏と12回裏の攻撃でそれぞれ一死と無死で出塁した一塁ランナーバントで送ると言う戦術を取らなかった。


私はこの伏線となったのが、5回裏無死一塁で桑原の送りバントが小フライとなってランナーを進められず無得点に終わった局面だったと思う。


緊張した局面でバントを決める技術についてベンチが選手を信じられなかったのでは無いかと言う気がしてならない。


もちろん、バントを決められなかったのは選手のミスであり、技術不足と言われても仕方ない。しかし、一回の失敗で不安になり取るべき戦術の選択をせばめてしまうのも指揮官のミスで監督としての経験不足と言うことになると思う。


決勝点となった12回表のカープの得点は、無死二塁からベンチが選手を信じて難度の高いサードへの送りバントを命じ、選手はそれに応え、さらに次の打者が犠牲フライで着実にあげたもので、この背景にはベンチと選手の間にしっかりした信頼関係があることがわかる。


三浦監督が着任してから一年と3ヶ月。まだカープほどには強固な信頼関係が築けていないことは仕方ない。振り返って見れば、カープの笹岡監督も初年度や2年目には攻撃面の戦術で消極的だったこともあった。


これは一例だが、この小さなしかし決定的な差は今週末の3連敗の大きな必然的要因の一つだと思う。対策は凡事徹底。さらに基本的な技術の練習をしつこく繰り返して欲しいし、監督は選手を信じる強い気持ちと器量を磨いて欲しい。


簡単に言えば、三浦さんが桑原選手の前に目を瞑って直立し、後ろから支えてくれる事を信じてまっすぐな姿勢のまま躊躇せずに後ろに倒れかかることができるか、と言うことだと思う。


こう言う関係性がチームの中で何重にも出来ていくにはやはり時間がかかる。


◯ 必然の敗因② 投手陣のメンタル面の統制


このカードの流れは、今永と大瀬良という両エースの対決となった初戦に0-7と一方的に敗れたことでかなり鮮明になった。


元々、カープは今シーズンの横浜戦はやりやすいと感じていたが、交流戦でパリーグ相手に大きく負け越し、以前のように優位に立つことができるか若干の不安はあったと思う。しかし、初戦の圧勝でその不安は吹き飛んでしまった。


打たれた今永昇太が気後れしていたことは全く無いと思う。御尊父が亡くなるという悲劇があったものの、むしろそれを乗り越えていつも以上に頑張ろうという気持ちが強かっただろう。


しかし、結果としてその想いは気負いとなり、彼らしくない制球ミスを連発してしまう結果となった。


第二戦の浜口投手も序盤こそ万全の立ち上がりを見せたが一旦打たれ始めると一気に崩れた。あくまでも外から見ていて、と言うことだが、そこには焦りや不安などのメンタル面での要因も絡んでいたように思える。


プロ野球選手も人間である以上、いつも同じ気持ちで投げることは出来ない。しかし、先発ローテーションの一角として毎週投げる立場の投手たちは、気負いにつながるような強すぎる思いや、逆に打たれ始めた時の小さなパニックと言った不安定な要素は極力小さくできるように精神面での鍛錬を行う必要があるだろう。


その方法として、チームが取り入れているメンタルトレーニングが良いのか、あるいはジャイアンツのかつての選手たちが行った武術の修行が良いのか、選手によっても適否があるだろうが、この点は非常に重要だと思う。


熱い気持ちと冷たい頭脳、どこかのチームのベテラン投手が言っていたが、そう言った境地に辿り着くのは容易では無いと思うが、やはり重要なポイントだと思う。


ご不幸のあった今永投手に直ぐこうしたことを求めるのは酷だと思う。しかし、何よりも彼自身の更なる飛躍のために、これから時間をかけて先人たちのたどり着いた境地を目指して欲しい。


◯ 必然の敗因③ 采配の成熟には時間がかかる


昨日も8回裏の代走起用とその後の代打起用に矛盾があるのではないかと書いたが、ゲーム中に瞬時に下さなくてはならない多くの判断を全て正しく行うことは難しいと思う。


今日の試合で言うと、ピッチャーの起用については延長戦まで視野に入れていたと思うが、野手に関してはまず何とか追いつくこと、そして、使いたい選手を使わずに終わることのないように、と言うことの方が優先されたように思う。


例えば、打率3割を超える蝦名に代打を出してしまうと、延長戦の勝負所で切ることのできる手札は自ずと限られることになる。


後から試合を振り返って見て、あの時はこうしておけば良かったと言う点が一つもない試合というのは恐らく少ないのでは無いかと思う。しかし、そうした見直しを監督とコーチが毎試合行い、反省すべき点や改善策を共有することを繰り返して行けば、少しずつだが常に最も確率の高い戦術を瞬時に選ぶことができるようになって行くだろう。これも時間がかかるのだ。


ファンは簡単に誰々は監督向きではないとか、誰某には監督は無理だったんだとか言う評価を下すが、一部の天才を除いて、監督というのは最初は皆、不向きあるいは不慣れなものだと思う。


我々は監督の成長を見守る度量を持たなければならない。


◯ 偶然の敗因 大田泰示のセンターライナーが10cm低かったこと


上述した必然の敗因がある以上、ベイスターズが負けることは避けられなかったのかと言うと、そんなことは全くない。


カープだって必然の敗因をいくつか持っているのだ。だからこそ、昨日と今日は競り合った好ゲームになった。


そして、例えば、今日の試合の8回裏二死満塁で代打大田泰示のセンターライナーがあと10cm上の軌道を通っていたら、野間選手の頭上を越える走者一掃のツーベースになっていたはずで、恐らくベイスターズは勝利していただろう。


一部の解説者などは、やはり森浦が腕を振って投げたのでギリギリ野手が取れるところに飛びましたねえ、とか言うかも知れないが、私はこの10cmは単純に偶然であって、抜けるか抜けないかは運の問題だと思う。


だから皆さん、今日の試合の負けについて落ち込む必要はありません。ただ、上に書いたような幾つかの必然の敗因に選手や首脳陣が取り組みチームが成長するプロセスを諦めずに見守ることが必要なのです。


長々と書いてしまったが、故野村克也監督が生前仰っていた、


“勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し”


という言葉は、こうしたことを一言でズバリと言い当てているのか知れない。