mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

復活までのそれぞれの道(2) 最高の打線を完成させるために:タイラー・オースティンの場合



10月25日



【今日のフェニックスリーグ】


今日はフェニックスリーグの阪神ーDeNA戦があり、イレブンスポーツで配信された。


ベイスターズの先発は阪口投手。


最速153km/hのストレートは威力十分だったが、6回、108球、被安打8、与四死球3、被本塁打1、7失点(自責5)と結果を残すことはできなかった。


久しぶりに観るファームの守備はなかなか厳しいもので、エラーが3つ。


そして、風が強かったせいもあり、セカンドゴロとセカンドフライをいずれも粟飯原選手がグラブに当てながら捕球できなかったプレー(どちらも判定はヒット)やショートが追いすぎてセンターとお見合いになってしまったフライ(こちらも判定はヒット)など記録には残らないミスも多くあった。


うちとった筈の当たりで出塁を許した阪口投手には気の毒な展開だったが、決勝点となったのは完璧に打たれた井上広大選手のスリーランホームランだったので、彼自身粘ることができなかったという評価になってしまうかと思う(この失点もピッチャーのエラーとショートの悪送球が絡んだものではあったが)。



打線は9安打と阪神を上回る数のヒットを放ったが、チャンスでもう一本が出ないことも度々あり、中々攻略しきれなかった。


試合は5-7で敗戦。


スタメンで無安打だったのは森敬斗選手のみ。彼は守備でもエラーがあり、今日は評価できるポイントがあまりなかった。


最近プライベートで噂になっているようだが、私は私生活についてコメントするのは差し控えるようにしている。


しかし、理由がなんであれ、故障以外の原因で野球に集中できない状況になって成績が低下することは避けなければならない。プロとしての意識が足りないと考えざるを得ない。


彼に今できることは、意地になってでも野球だけに集中して結果をしっかり残すことだろう。




【海の向こうのホセ・ロペス】


そして、今日、母国ベネズエラリーグに在籍しているホセ・ロペス選手が現役引退を発表したというニュースがあった。


ラミレス前監督の下、2016年以降のCS進出そして日本シリーズ出場といったDeNAベイスターズ躍進の立役者は筒香嘉智とロペス選手だと思う。


特に、ロペス選手は頼れる兄貴という感じでチーム全員に慕われ、ピンチでも全員を鼓舞するような振る舞いが印象的だった。


ソト選手などは、日本でプロ野球選手として活躍するために必要な多くのことを教わったことと思う。


球団公式アカウントがいち早く彼の引退宣言に呼応するメッセージ、「教えてくれたすべてのことに感謝しています」、を出したことも彼の貢献の大きさを物語っている。


私はと言えば、以前、ロペス選手が右腿裏の肉離れで離脱した際、日々心配するあまり彼と同じ箇所に違和感を覚えるようになり、周囲から「想像肉離れ」と呼ばれたことを思い出した。


ロペス選手については、日本シリーズやフェニックスリーグが終わって静かになった時点で何か記事を書いてみたいと思う。





【TAのTJ手術】


例によって前置きが長くなってしまったが、今日の本題は故障からの復活を目指す主砲タイラー・オースティン選手の近況だ。


春先に受けた肘のクリーニング手術以降、状態が思わしくなく、最近の状況をみていて、試合終盤に代打で一打席だけ出てきて三振する人、という印象を持っている人もいるかと思うが、本来の彼のパフォーマンスはとても素晴らしいものなのだ。


昨年12月に彼の複数年契約での残留が決まった時のブログから引用する。


”1年目の昨季は65試合で20本塁打を量産。今季は来日が遅れながらも107試合でチームトップの28本塁打、74打点。規定打席に4打席満たなかったが、打率・303で4番として打線を牽引した。


8月の東京五輪では米国代表の主軸として、銀メダル獲得に貢献した。


ヤンキースのメガプロスペクトだったオースティン選手の実力が本物であることは、以前にも書いたバレルの指標からも明らかだ。
バレルというのは、速度と角度とが下の図の赤い小さな範囲に入るような打球のことで、この条件を満たせば50%の確率で安打となり、長打率つまり塁打の期待値は1.5を超えることになる。



図を見てお分かりいただけるように、打球が速くなるほど(下の図の半円の外側に行くほど)バレルは大きく広がっている。


バレルになる打球速度の下限は158km/hだが、この時には26~30度でボールが上がらなければいけないのに対して、速度が187 km/hまでくると8~50度というかなり広い範囲がバレルとなる。
最近メジャーで取り沙汰されているバレルと言う指標は、ある打者が打撃をした時に、その打球がバレルとなる確率を示している。
横浜に来る前年のメジャーでのタイラー・オースティンのバレルは15.9%と極めて高く、ナ・リーグのホームラン王になったピート・アロンソ(15.8%)や40ホームラン40盗塁を達成しかけたアクーニャ・ジュニア(15%)を上回っている。
三振率が高かったことを割り引いても、これだけ有望な選手がよくぞ横浜に来てくれたと思うし、そして米国代表として銀メダルを獲得した後もよくぞベイスターズに残ってくれたと思う。”


そのオースティン選手は数日前から今オフに再度右肘の手術を受けるという報道が各紙からなされていたが、今日、右肘内側側副靱帯再建術(トミージョン手術)を受け、無事成功したというニュースがあった。


投手がこの手術を受けたという話は耳にすることが多く、ベイスターズでも2020年2月の東克樹、2021年6月の平良拳太郎といったところが最近の事例として有名だ。


ベイスターズの右のエースとしての地位を固めつつある大貫晋一も日体大2年次にトミージョン手術を受けて4年次に復帰している。


ピッチャーの場合、トミージョン手術から実戦復帰までの期間はおよそ1年半と言われている。


上記の3人についても、以下の通り、概ねこの公式通りとなっている。


東克樹:2020年2月トミージョン手術→2021年7月復帰


平良拳太郎:2021年6月トミージョン手術→2022年8月復帰(ファーム)


大貫晋一:2013年11月トミージョン手術→2015年4月復帰


平良投手の場合は順調であれば今年の9月には一軍のマウンドに立っていたと思うが、ちょうどそのタイミングでコロナ陽性となり叶わなかった。


一方、野手のトミージョン手術の場合は、一般論として復帰までの期間は投手よりも短いと言われている。


日本では、元巨人、西武の脇谷選手などが例だが、MLBでも近年トミージョン手術を受けて復活を果たした野手の例がある。


ニューヨーク・ヤンキースのディディ・グレゴリアス内野手とロサンジェルス・ドジャースのコーリー・シーガー内野手の二人だ。


グレゴリアス選手は2018年10月にトミージョン手術を受け、その後、リハビリとトレーニングに懸命に取り組み、8ヶ月弱を経た2019年6月にメジャー復帰を果たし、その月は打率 .290、3本塁打、8打点、OPS .769の好成績を収めた。


シーガー選手は2018年4月にトミージョン手術を受け、こちらはリハビリ途上で股関節の手術も受けこともあり一年後の2019年3月末の開幕戦で復帰している。


この二人の例を見ても分かる通り、野手のトミージョン手術の場合は、1軍復帰までの期間はおよそ8ヶ月と言われている。


この公式をオースティン選手に当てはめていると、一軍復帰は来年の6月下旬ということになる。



もう一つ参考になる情報は、近年のトミージョン手術の進化に関するものだ。


カープからMLBに挑戦しているツインズの前田健太投手が昨年9月に受けた手術は、自分自身の別の箇所の靭帯を移植することに加えて、インターナル・ブレースと呼ばれる繊維状の人工靭帯を補強材として折り込むことでより強靭にするものらしい。


このタイプの新しい手術では、投手の場合でも8ヶ月程度で復帰した例(リッチ・ヒル投手)があるなど、復帰までに要する期間が短縮されることが示されている。


もしオースティン選手が米国に戻って受けることにしたトミージョン手術であった場合には、来年の開幕あるいはその直後に一軍復帰という見通しが出てくる。


今日の三浦監督のコメントでは、オースティンが開幕からフルでいる場合もいない場合も両方を想定して準備を進めていくということなので、この可能性もあるように思える。


今シーズンの途中から何度も書いてきたことだが、ベイスターズの最強打線が完成するのはオースティン選手がフル出場できるようになった時である。


焦るのは禁物だが、最良の医療とリハビリで最短の復帰ができるように本人は勿論球団や医療チームにも最善を尽くして欲しい。


しかし、それだけを祈って待っているだけでは来季の優勝の目はないだろう。


三浦さんも言っているように、オースティン選手がいない場合の打線の威力を確保するために、FAの近藤健介選手の獲得やNPB復帰の場合の筒香嘉智選手の受け入れ、そして新たな大砲となる外国人選手の獲得にも積極的に乗り出して欲しい。


仮にオースティン選手が来年早い時期に戻って来られるとしても、そのくらいの厚みのあるチームを構築していかないと長丁場を勝ち抜いて優勝することはおぼつかないだろう。


【訂正】


その後、情報源としていた記事について訂正の報告があった。


オースティン選手の手術は靭帯の移植による再建術(トミージョン手術)ではなく、本来の靭帯の損傷部分を縫合したりアンカーを使って固定する修復術であったことが判明した。


素人の私の調べた限りの情報では、修復術の場合、再建術よりも復帰までの期間は短く、2ヶ月〜6ヶ月(平均3.4ヶ月)という報告があった(鶴田ほか、肘内側側副靱帯新鮮単独損傷に対する手術成績)。


この情報を正とすれば、オースティン選手の復帰は早ければ開幕に間に合うということになる。


修復術は成功したということなので、今後の経過について続報を待ちたい。