砂田毅樹と京田陽太のトレード それぞれの思惑
11月18日 ベイスターズの左腕リリーバー砂田毅樹とドラゴンズの遊撃手京田陽太のトレードのニュースが駆け巡った。
京田選手はどうも立浪監督のチーム構想に上手くはまらなかったようで、例の「戦う顔をしていない」と言うダメ出しからの試合途中のファーム強制送還事件以降、高卒2年目の土田龍空選手に遊撃手のレギュラーの座を譲ったように見えた。
今オフの噂として、京田選手とベイスターズの戸柱恭孝捕手のトレードが画策されていたようだが、嶺井選手のFAでのソフトバンク移籍によってこの話は立ち消えになっていた。
しかし、立浪監督と中日の編成は主軸の放出によるチームの革新の決意を持っているようであり、京田選手トレードの意思は固かった。
一方のベイスターズも京田選手を獲得したいと言う要望が根強く、戸柱選手に代わるトレード要員を中日側と調整していたようだ。
こうして両チームの思惑が噛み合って成立した今回のトレードは、ドラゴンズにとっては数日前の安部選手と涌井投手に続く二件目の大型案件となった。
ベイスターズにとっては今オフはじめての大きな動きということになる。
このトレードの動機となった両チームの編成上のニーズについて整理してみた。
【遊撃手の現有勢力】
現時点でのベイスターズの遊撃手の勢力を年齢(来年開幕時点)と今シーズンの出場試合数(複数ポジションをこなす選手については遊撃手としての出場のみ)は以下の通り(選手名の前に+がある場合は今オフ入団予定、−は移籍あるいは退団を表す)。
大和 35歳 81試合
−倉本寿彦 32歳 1試合
柴田竜拓 29歳 47試合
+京田陽太 28歳 40試合
+林琢真 22歳 0試合
森敬斗 21歳 50試合
−田部隼人 21歳 0試合
粟飯原龍之介 19歳 0試合
結局、最も多くの試合に出場したのは35歳の大和選手で、打率は .247ながら、得点圏打率 .290と言う数字にも表れているように勝負強い働きでチームの勝利に貢献した。
しかし、年齢を考えると、次世代の遊撃手のレギュラーを確立することが急務であることは間違いないところで、今シーズンは森敬斗の躍進が期待されたが、春先の大きな怪我によって出遅れたこともあり、出場は50試合にとどまった。
打率 .234、出塁率 .293、盗塁5、失策6と言う成績はやはり物足りない。
今オフになって、仁志2軍監督や石井琢朗コーチからプロ意識が足りないとか本人の努力がないと難しいと言ったコメントが報道されていることも、首脳陣が森選手の成長に対して危機感を持っていることを示唆している。
加えて、そろそろ中堅からベテランの域に入りつつある柴田選手の不調(打率 .195、打点1、得点圏打率 .057)がこの危機感を増大させている。
169打数で1打点、得点圏では20回に一回程度しかヒットを打てないと言うバッティングではスタメン出場は極めて難しい。
さらに追い打ちをかけるように森敬斗と同期の田部隼人選手がやや唐突に引退を表明した。そして、昨年のドラフト3位粟飯原選手の守備はかなり粗く、ファームでもエラーが目立った。
こうした状況を考えると、ドラフト3位で駒澤大学の林琢真選手(現在はセカンドだが遊撃手もできると言う評価らしい)を獲得するだけでは足らず、柴田選手と同じ年頃で成熟した守備と一軍でなんとか合格点となるバッティングのできる中堅選手が必要というのは大変良くわかる。
一方の中日ドラゴンズの状況は以下の通り。
堂上直倫 34歳 4試合
−三ツ俣大樹 41試合
−京田陽太 28歳 40試合
溝脇隼人 28歳 21試合
+村松開人 22歳 0試合
+田中幹也 22歳 0試合
土田龍空 20歳 59試合
こちらは、41試合に出場した三ツ俣大樹選手を戦力外にした上で今回のトレードで40試合出場の京田選手を移籍させると言うことなので、大鉈を振るったと言う印象が強い。
立浪監督とドラゴンズ編成の意図は、今シーズン終盤にレギュラー格でスタメン出場を重ねた土田龍空選手に出場機会を与え、彼を中心にドラフトで新たに加わる村松、田中の両選手と三つ巴でレギュラー争いを促してレベルアップを図るということだろう。
今シーズン2位だったベイスターズは少なくとも意気込みとしては来年優勝を狙うと言うことなので、即効性のある京田選手の入団が必要だし、恐らく来季は若手の成長に期待して再来年以降に優勝の機会を窺うであろうドラゴンズは京田選手や三ツ俣選手が若手の出場機会を奪うようなことにないようにする必要性があった、と言う事情だったと思う。
【リリーフ左腕の現有勢力】
ベイスターズのブルペンにおける左投手の年齢と出場試合数を整理してみた。
いずれも30歳を越えているエスコバー投手の70登板と田中健二朗投手の47登板が群を抜いている。この2人はこれから先何年もと言う訳にはいかないだろうが、来季の優勝を狙う上では間違いなく柱になる。
そして、今期途中からリリーフに転向した坂本投手と支配下登録を勝ち取った石川投手と言う2人の大卒若手に左腕がいることが編成上の特徴だ。砂田投手のトレードを容認した直接の要因はこの2人の存在だろう。
ただし、今回のトレードによって、噂されていた坂本投手の現役ドラフトの目はかなり小さくなったように思う。
さらに、再来年まで見れば、今季手術を行い育成契約に推移した櫻井投手の復活に期待するところも大きいと思う。
田中健二朗 33歳 47試合
エスコバー 30歳 70試合
−砂田毅樹 27歳 15試合
坂本裕哉 25歳 15試合
石川達也 24歳 3試合
−櫻井周斗 23歳 0試合
池谷蒼大 23歳 6試合
+森下瑠大 18歳 0試合
一方のドラゴンズのリリーフ左腕は深刻な状況だ。
岡田俊哉 31歳 2試合
−福敬登 30歳 36試合
+砂田毅樹 27歳 15試合
橋本侑樹 25歳 4試合
石森大誠 25歳 0試合
唯一の二桁登板をこなしていた福投手は三嶋一輝投手と同じ国指定の難病である胸椎黄色靭帯骨化症の手術を受けて来季は不透明な状況だ。
岡田投手がサイドスローに挑戦するなどの策を練ってはいるが、砂田投手のように実績と経験のある左腕のリリーバーは喉から手が出るほど欲しいだろう。
そして、ドラゴンズの勝ちパターン(いずれも右腕)は非常に良く整備されているため、移籍後の砂田投手の起用は大事な局面でのワンポイント的なものになるのではないだろうか。
砂田投手のストレートは全盛期に比べると鈍った感じがするが、対左打者のワンポイントだとあの背中から入ってくるようなスライダーを打つのはかなり難しいはずだ。
私は砂田投手がまだまだドラゴンズの期待する役目を果たすだけの力を持っていると思う。
こうして見ると、今回のトレードは両チームのニーズに合致した良い企画であると思う。
しかし、この「良い企画」が実際に効を奏するか否かは両選手の頑張りとチームのサポートにかかっている。
砂田投手も京田選手もそれぞれ口を合わせて、移籍先で活躍することがこれまで在籍していたチームやファンへの恩返しだと言っている。
その通りだ。
2人とも精一杯恩返ししてくれ。






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