エスコバー、ソト、オースティンはどこに向かうのか?
11月23日 嶺井選手のソフトバンク入団記者会見があった。
ベイスターズを去る時のコメントと同様、これからのプロ野球人生を考えて更なる挑戦をしたいという趣旨のものだ。
彼の「挑戦」とは何なのだろうか?
甲斐選手との競争に勝ってソフトバンクの正捕手となり、日本一の栄冠に輝くこと、そして日本代表にも選出されるような球界有数の捕手になること、だと思いたい。
このところ毎週言っている言葉だが、もう一度言っておく。そしてこれが最後だ。
嶺井頑張れ。負けんなよ!
その話はさておき、今日の各紙でエスコバー、ソト、オースティンの残留が報じられた。
元々、この3人全員が複数年契約を結んでいるので、当たり前と言えば当たり前なのだが、それぞれが来シーズンに向けての抱負を語っている。
この機会に、今日は彼ら3人のここまでの成績の推移と来年の期待を書いてみようと思う。
【エドウィン・エスコバーの鉄腕は不滅なのか】
エドウィン・エスコバーが来日して日本ハムに入団し、シーズンの途中で黒羽根選手とのトレードでベイスターズに移籍したのが2017年。早いものであれから6年が経過した。
2018年から5年連続で年間50試合以上に登板し、2019、2021、2022年には30以上のホールドを挙げた。外国人リリーフ投手としては球団史上最高の成功例の一つだろう。
チームメイトやファンからは鉄腕と呼ばれる彼も今年で30歳。まだ老け込む歳ではないが、登板過多と言われ続けた勤続疲労もあるだろう。
エスコバー投手のベイスターズ移籍以降の年度別の成績を下表にまとめた。
投球割合としては速球系(フォーシーム+ツーシーム)が70〜80%を占めており、2019年以降の球速アップが顕著となっている。また、それに伴ってフォーシームの指標も良化傾向にある。
当初は大きなマイナスとなっていたスライダー等の変化球の指標も速球の球速アップとともに改善されている。
これらの経年変化はベイスターズに入ってからの投球フォームの改良やトレーニングによって彼本来の才能が開花したと言って良いだろう。
エスコバー選手自身もそのことを理解しているようで、この6年間、チームとファンに対する彼の誠実な想いはヒーローインタビューやSNSなどで垣間見る彼の言葉に滲み出ている。
そんな彼について私が気にしていることが一つある。
今シーズンになって奪三振が少し減り、与四球が昨年の11から29へと急激に増えたことだ。
これは、K/BB(奪三振数と与四死球数の比(%))の経年変化を見ると良くわかる。
このグラフにあるように球速のアップした2019年にK/BBが大きく改善したが、その後は徐々に低下傾向にあり、それが今シーズンかなり顕著になったと思う。
素人ながら私が試合を観ていて感じたのは、相手バッターの戦術が変わってきたということだ。
エスコバー投手の投じる厳しいコースのストレートをカットし続けてスピードに目を慣らすとともに球数を増やし、四球をもぎ取る、あるいは甘いコースに来れば打ち返す、という待球戦術だ。
来年エスコバー投手がセットアッパーとしてあるいは山﨑康晃投手にかわるクローザーとして輝くためには、この待球戦術への対策を考案し実戦で使えるレベルにまで高めることが必要だろう。
例えば、カットボールを習得してバッターのタイミングをずらす、あるいはツーシームの球速を抑え曲がりを大きくしてシンカーのように使ってゴロアウトを増やす、など。
大丈夫。真面目な彼は優秀なベイスターズのアナリストたちとともにきっとこの課題をものにしてくれるに違いない。
今日の彼のコメントはこうだ。
「来シーズンも横浜DeNAベイスターズでプレーできることが本当に嬉しく、感謝しています。
今シーズン以上に強くなるために、シーズンオフからしっかりトレーニングに取り組みたいと思います。
来シーズンこそは横浜、そしてファンの皆さまの元にチャンピオンフラッグを取り戻せるよう頑張ります。愛してるよ!」
【契約最終年に賭ける ネフタリ・ソト】
エスコバー選手と同じように真面目でチームを愛する気持ちが強いソト選手は今年33歳になった。
2017年オフに来日して入団テストを受け、ベイスターズがソフトバンクと戦った日本シリーズを現地で観戦して、このチームで一緒にプレーしたいという思いを強くしたというのは有名な話だ。
2018年に入団以降の成績は下表の通り。
ホームラン王と打点王の二冠に輝いた2019年をピークにして、本塁打数と打点は徐々に減ってきいており。特に昨年はOPS .738と高額の外国人スラッガーには見合わない成績に終わった。
今季は「復活」という言葉を使えるほどではないかも知れないが、打率 .266、OPS .815と主軸打者としての最低線はクリアしていると思う。
このような打撃成績改善の影には、試合前に早出で石井琢朗コーチと取り組んだ基本を取り戻すための打撃練習がある。
今シーズンは春先に手首の故障で出遅れ、その影響もあって中々調子が上向かなかったが、来シーズンは万全の状態で開幕を迎えてくれると思う。
そして、これまでセカンドやライトの守備ではチームの足を引っ張りがちだったソト選手だったが、ファーストに定着してからは素晴らしい反応と柔らかいミット捌きでのワンバウンドの送球の捕球などで抜群の安定感を見せてくれた。
彼のファースト守備の指標(UZR1000)は9.5と12球団の全ての一塁手の中で飛び抜けて良い。
私は今のベイスターズで最も4番向きのバッターはソト選手だと思っている。だからこそ、3年契約の最終年となる来年、もう一度輝いて契約延長を勝ち取って欲しい。
これは、4番打者らしい長打力があるということに加え、彼の打撃成績が打順に依存していて前後に好打者のいる4番での成績が最も良いということも含んでいる(4番でのOPS 1.152に対して6番では .772)。
来年は3番と5番の牧選手と佐野選手に挟まれ4番打者として長打を放つソト選手の姿を観られるように祈っている。そうすれば、ロペス選手のようにさらに長くチームを支えてくれる頼りになる助っ人として貢献してくれることだろう。
ソト選手のコメントはこちら。
「来シーズンも横浜DeNAベイスターズの一員として戦えることを嬉しく思います。
シーズンオフはもっとトレーニングを積んで、1年を通してチームに貢献できるようにしたいです。
来シーズンこそはリーグ優勝、そして日本シリーズへ進出して優勝できるように頑張っていきます。引き続き応援よろしくお願いします」
【オースティンが万全だったら とは言わせないために】
この1年間、タイラー・オースティンさえいてくれたらとベイスターズファンは言い続けてきた。
私も含め全てのベイスターズファンが、そして多くのプロ野球ファンが、彼の異次元のようなスイングスピードと素晴らしい打球速度と角度に魅入られたのだ。
しかし、春先に急遽受けた右肘のクリーニング手術から彼が完全不帰を果たすことはシーズン中にはなかった。
代打が主だったとは言え、打率 .156、ホームラン1本というのは彼本来の能力を片鱗すら見せることができなかったことを意味している。
そして追い打ちをかけるように、今オフに入って間も無くの右肘靭帯修復手術のニュースがあった。おそらく、今シーズンを通じて右肘の異常を抱えながらのプレーだったのだろう。
しかし、災い転じて福となす、という諺もある。
インターネット上でも誤解されている方が多いように見受けられるが(私自身、最初は誤解していた)、彼の受けた手術は靭帯再建術つまりトミージョン手術ではなく、靭帯修復術である。
トミージョン手術は劣化した肘を除去してから自分の他の部位の靭帯を移植するものであり、術後の回復期間が長いという特徴があるが、靭帯修復術は靭帯の損傷部分を縫合あるいは固定することによって文字通り「修復」するものであり、トミージョン手術の半分以下の期間で復帰が可能となる。
最近の論文(肘内側側副靭帯新鮮単独損傷に対する手術成績、鶴田ほか、2017年)によれば、柔道や新体操などの肘の負担の大きいスポーツでも完全復帰までの期間は3〜6ヶ月(平均3.4ヶ月)ということらしい。
だとすれば、10月24日に手術を受けたオースティン選手の完全復帰は早くて1月下旬。
平均的な経過を辿ったとして2月中旬、遅くとも4月中には完全復帰が可能となる。
この手術で肘の状態が万全となり、来シーズンの序盤からタイラー・オースティンらしい本来のバッティングを見せてくれれば2022年シーズンの得点力不足を解消して余りあるものとなる。
今我々にできることは彼の復帰に向けて遠いアメリカに念を送ることしかない。
さあ、皆さん。一緒に祈りましょう!
オースティン選手のコメント
「来シーズンも横浜DeNAベイスターズファンの皆さまの前でプレーできることが本当に嬉しいです。
シーズンオフは、右肘を中心に体のコンディションを整えたいと思います。
どんなときも支えてくれた素晴らしいベイスターズファンのもとにチャンピオンフラッグを届けるため、チームの勝利へ貢献したいです。
来シーズンも横浜スタジアムでファンの皆さまに会えることをとても楽しみにしています」
おう、待っているぞ!
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