mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

BBB 4番の重圧を知った牧秀悟の2022年シーズン(ネタバレあり)



ラミレス監督時代からずっと主に横浜市内の映画館で放映されてきた球団公式ドキュメンタリー映像(ラミレス監督時代はFOR REAL、三浦監督になってからはBAY BLUE BLUES (BBB))が今オフはベイスターズプライムカメラ(ベイプラ)のみのインターネット配信となった。


例年は年末年始に公開されるのが恒例だったが、今オフは特に予告もなく遅れており、山﨑康晃投手の残留決定を受けて編集をしなおしているとか、放映する映画館のスケジュールをおさえられないとか、さまざまな憶測が流れていた。


今月16日になって、2本に分かれたBBB本編をベイプラで配信することが発表され、その第一弾は牧秀悟選手にフォーカスした


EPISODE 1 若き主砲の重圧と責務


というタイトルで1月21日に配信され、その後もオンデマンドで視聴することが可能となった。


約20分の映像を今日早速チェックしてみた。


1時間を超える今までの映像に比べると感情移入が十分にできないまま終わってしまい、なんだかあっさりした印象だったが、それでも、野球の匂いのするものなら何でも欲しい今日この頃の無聊を慰めるには格好の内容だった。



まず、予備知識として、今シーズンの牧選手の月別成績を簡単にまとめておこう。



コロナによる2度の離脱などはあったものの、3〜5月は好調で三冠王などという気の早い声も聞かれたが、6月には急失速し、その後、秋になって復調傾向ではあったものの、春先の勢いをとり戻すには至らなかった。


2年目のジンクスは牧には関係ないなどと言われ、その通りだったのだろうが、4番を1年間務めることの重圧というのは少なからずあったように思う。



映像は開幕直前にコロナに感染して出遅れた牧選手がチームと合流するところから始まる。


「今日から合流します。一日1日を無駄にせず頑張っていきます。


よろしくお願いします」


練習前の円陣でこう挨拶した牧選手に対して、三浦監督は「元気か?焦るなよ」と声をかけ、牧選手は「焦るけど、ゆっくりいきますよ」と呟く。


その後、昨年の反省を踏まえて開幕に勝つことが重要と言いつつカープに3連敗したこと、その後4連勝して勢いに乗るかと思ったところで2度目のコロナ罹患で離脱を余儀なくされたことなどが綴られる。


そう言えば、この時はチーム内でクラスター(7選手が陽性)が発生し、試合が中止になったこと、ベストメンバーが組めない中で沖縄遠征が行われ、巨人に敗れたことなどが思い出される。


そんな中、開幕戦に敗れた翌日の声出しで、チームに笑顔が足りないのに気がついたと言い、円陣の中心で率先して大きな笑顔を作り全員に乗り移らせたいと語るなど、カメラは、牧選手は打つこと以外でもチームを盛り上げ、引っ張ろうと一所懸命に努力している彼の姿を追いかけていく。


2度目の復帰後のバースデイホームランや2試合連続ホームランなどもあり、4番牧秀悟に対する信頼感が高まっていくとともに、それは次第に重圧に変わっていくことも映像に納められている。



交流戦のホークスとの試合では、初回ワンアウト二、三塁のチャンスで牧選手が凡退し、その後敗れたことについて、翌日の練習時に石井琢朗コーチからは、初回に1番楽に点が取れそうなところで既にチームの主軸、4番を打っている1番良いバッターである牧が凡退しては勝てない、というように名指しで喝を入れられる。


チームとしての打線のつながりは考えているのだが、打席に立つと、ついつい自分が決めるという気持ちになってしまうことについて、牧選手本人も反省し、石井コーチの言葉は「刺さった」と語っていたが、その日の試合でホームランを打ってみせるところはやはり並の選手ではない。




2021年もそうだったが、6月になると疲れから打てない日々が続く。


グラウンドから離れてもバッティングのことが頭から離れない牧選手のベンチ裏での仕草などを、球団ドキュメンタリー映像得意の長期密接取材で淡々と描いていく。


牧選手の4番に対するコメント


「2022年シーズンは4番の難しさを体験しました。


それまでの人生では、4番はすごく好きな打順だったんですけど、今年はちょっと折れかけた部分はありますね」



チームのホーム17連勝のなかで牧選手自身もようやく状態を上げ始め、シーズン終盤を迎える。


そこでのストーリーはもう皆さんご存知の通りなので省略するが、今回のドキュメンタリー映像だからこそわかることもいくつかあった。




【ヤクルト戦での石井琢朗コーチの檄】


負ければヤクルトの優勝が決まるという試合前の円陣での石井コーチの言葉


「お前ら胴上げ見に来たんか?


違うよな。


何しに来たんや?


勝ちに来たんやな!


勝つんやな!


勝つんだぞ!


さあ行こう!」


試合結果はご存知の通りで、2年連続で高津監督の胴上げを目の前で見せつけられることとなったが、石井コーチの情熱と気合のこもった言葉はこの映像でなければ見ることができないので、皆さんぜひご覧ください。





【ロッカールームで号泣する牧の姿】


牧選手としては初となるCS第3戦。


一点を追いかけるベイスターズ9回裏の攻撃の先頭打者となった牧選手はほとんどヒットを打ったことのないタイガースのセットアッパー湯浅投手に対して粘りに粘り、三遊間を破るヒットで出塁して一死満塁のチャンスに繋げる。


この時のなりふり構わない牧選手のガッツポーズ、というか魂の叫びのようなものは我々ファンが初めて見る彼の姿だった。


しかし、これもご存知の通り、代打藤田一也がセカンドゴロ併殺に倒れて試合終了。


その後のベンチやロッカールームで魂が抜けたようになって呆然と立ちすくんでいる藤田選手の姿は見たくはなかったがこれからずっと目に焼きついて離れないだろう。


シーズン最終戦ということで三浦監督の挨拶があり、その後、コーチたちと挨拶する牧選手はいつになく硬い表情をしており、何かを堪えているかのようだったが、ロッカーが近く日頃から話をすることの多い桑原選手と抱き合ったところで泣き崩れた。


ああ、ベテランの風格と言われる牧選手にもこういうところがあるんだな。


その後も涙は止まることがなく、ロッカーの椅子に腰掛け、天井の見上げて顔をタオルで覆ったままの姿勢でいる彼の姿が映し出される。


そういえば、2016年のドキュメンタリー映像FOR REALでもこんなシーンがあった。


CSセカンドステージでシーズン中は得意にしていたカープに初回から大量失点し、試合に敗れて敗退した今永昇太がロカアールームで一眼も憚らず号泣する姿だ。


こうやって悔し涙を思いっきり流すことができるというのも一つの才能なのだろう。



今永投手が今やベイスターズのエースとしてノーヒットノーランを達成するなど球界を代表する左腕に成長したのと同じように、牧秀悟も球界を代表する強打の内野手に育っていくことだろう。


そういえば、WBCにベイスターズから出場するのもこの二人だ。


来月には、悔し涙ではなく、歓喜の涙を流すことができるよう、おじさんは遠くから祈っているよ。