皆さまのご期待に応えて松尾汐恩増量中
2月4日 宜野湾キャンプ4日目
このところ、仕事の合間にインターネット配信でキャンプの様子を観ている。
東京で言うと4月か5月のような暖かな陽光の下、選手たちは走り回り、投げまくり、打ち込んでいる。
調べてみると、宜野湾市の最高気温は20℃。東京は最高10℃だったので、やはりキャンプ地は2〜3ヶ月ほど早く夏に近づいて行っているようだ。
今年のキャンプの映像で一番目立っているのはドラフト1位の新人松尾汐恩だと思う。
【やはり明らかに大きくなった】
昨秋のドラフト会議で彼が1位指名を受けた時、私は大阪桐蔭時代の彼のプレイの動画を集めてじっくり視ていた。
ここぞと言うところで甲子園のスタンドに放り込む長打力と勝負強さ。
落ち着いたキャッチングと素早く正確な2塁送球。
良い選手だと思った。しかし、細身だ。
華奢ではない。今風に言えば“細マッチョ”と言うことになるのだろうが、プロ野球選手としては明らかに未だ線が細いという印象だった。
しかし、新人年の開幕を迎える前に、彼は大胆な肉体改造を行ったようだ。
先月の初め、新人合同自主トレの時には未だそれほど目立たなかったが、宜野湾でのキャンプが始まり、彼のユニフォーム姿を見るようになって、違いが明確になった。
本人の言葉によると、昨夏の甲子園では75キロだった体重が現在は85キロにまで増えたと言うことだ。
もちろん、10キロの増分のほとんどは筋肉だろう。特に腰回りから脚にかけて、下半身がどっしりしたことが一目瞭然だ、
【バッティングの期待】
言うまでもなく、キャッチャーというのは守備的なポジションだ。
しかし、いや、だからこそ打てる捕手がいるチームはライバルたちに対して大きなアドバンテージを持つことができる。
かつての古田敦也(ヤクルト)、谷繁元信(横浜、中日)、城島健司(ソフトバンク)、阿部慎之介(読売)などの“打てる捕手”たちはそれぞれの球団のファンにとって宝物のような存在だった。
ベイスターズが松尾選手を高卒ドラフト1位で指名したのは、こうした先輩たちの系譜につながる打てる捕手に育つことを狙ってのことだろう。
その松尾選手のバッティングは、カーブマシンのボールをスタンドまで運び、才能の一端を見せたようだが、同期の浅野選手(読売)のような高卒選手とは思えないほどの完成度を現時点で示している訳ではない。
むしろ、今のままでプロの投手のボールの出どころの見にくいフォームから投じられる150キロを超えるストレートについて行くことができるか疑問だし、インコースに穴がありそうなスイングにも見える。
しかし、半年間で10キロの筋肉増量という肉体改造をさっさと行ったように、彼には自分自身を変えていくことができるという大きな強みがある。
これは先輩の牧秀悟選手にも言えることだが、レベルの違いを考慮すれば、アマチュアの時点でどれだけ完成されているかよりも、プロに入ってからどれだけ速く正しい方向に変わっていくことができるかの方がよほど重要だ。
そして、プロの世界では、レギュラーのポジションを手に入れた後でも、毎年自分を進化させていかないと競争に勝つことは出来ないのだ。
“最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一、生き残るのは変化できる者である”
チャールズ・ダーウィン
【基本に忠実なキャッチング】
ブロッキングなどの基礎練習を先輩たちと一緒にこなす一方、相川亮二コーチとマンツーマンの時間ももらい、2つのボールを同時にキャッチすることで動体視力を向上するトレーニングなどにも取り組んでいる。
また、キャンプ初日から積極的にブルペンに入り、伊勢、大貫、京山、エスコバー、入江など1軍の投手たちの投球を受けてプロのボールに慣れようとしているようだ。
彼のキャッチングは、捕球時にミットがピタッと止まるので見ていて気持ちが良い。
審判にコースや高低をしっかりと見てもらい、ストライクを確実にストライクとコールしてもらうという本来の意味でのフレーミングがきちんとできそうな印象だ。
ブルペンでバッテリーを組み、彼と会話した後の伊勢大夢投手のコメント。
「高校1年と思えないとてもどっしりとした構えで投げやすかった」
「けっこう全力で投げていたんですけど、まだ本気出していないですよねって。
まだ上がってないのもありますけど、悔しいですね。捕れないくらいの球を投げたい(笑)」
この言葉からもわかるように、松尾選手は先輩にも物怖じせずにコミュニケーションをとることができる“可愛がられる生意気さ”があるようだ。
入江投手も
「(松尾は)すごいです。しっかり相手の表情を見ている。
球もそうだし、相手の表情や感情を汲み取る力。
質というか、キャッチャーらしいキャッチャーです」
と褒めている。
このまま行けば、開幕1軍は難しいだろうが(と言うより、1軍の第三捕手でベンチの置物にするべきではない。彼を1軍に残すのは一定数の試合でマスクを被らせるという判断ができた場合のみだ)、オープン戦では出場機会があるだろう。
これから2ヶ月弱の経験は、プロとしての彼の今後の人生の大きな財産になることは間違いない。
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