mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

トレバー・バウアーは今日の投球をどう組み立てようとしているのだろうか?




今日からホーム横浜での6連戦が始まる。


ご承知の通り、先週は0勝5敗でコツコツ貯めた貯金を半減させ、首位から陥落すると言う悪夢のような1週間だった。


しかし、その萌芽はもっと前から少しずつ見えて来ていたように思う。


4月のベイスターズの快進撃を支えたのは先発投手陣の活躍であり、その根幹にあったのは、ストライクゾーンで勝負し、3球目までにツーストライクを取り打者を追い込むことを80%以上の確率で達成する、と言うチームオーダーだった。


各打者への初球や2球目で慎重にコースを狙おうとするあまりカウントを悪くして打たれる、と言う傾向が強い投手たちにとって、この戦術は勇気を与え、背中を押す効果があっただろう。


その結果が4月の高いQS率だったと言って良い。


しかし、有効性が実証された戦術はいつしか手段ではなく目的へと変わっていく。


我々が目撃したのは、ベイスターズの先発投手陣が打者を打ち取るための手段として初球からストライクゾーンで勝負するのではなく、最初の3球のうち2球はストライクを投げることを目的にして行く過程と、その結果としてストライクゾーンの甘いコースにきた初球をことごとく打ち返されると言う相手チームの対抗策による反撃だったのだろう。


先週の惨敗は、開幕から1ヶ月以上が経過し、各チームの打者が一軍レベルの生きたボールに慣れ、本来の打棒を発揮し始めてきた時期とベイスターズ投手陣のストライクゾーンでの勝負という戦術が目的化して初球が甘いボールになり始めた時期が重なった、と言うことで起きた事象のように思えてならないのだ。


この傾向が顕在化し始めたのは、あの強風の中で今永昇太が先発した5月5日の神宮でのヤクルト戦だったと思う。


その頃から、三浦監督の敗戦のコメントで、ボールが真ん中に集まりすぎる、ストライクを揃えすぎた、という表現が多く見られるようになった。


もちろん、ストライクゾーンで勝負すると言うのは真ん中にエイやっと放り込め、と言っている訳では無い。


内外角のコースギリギリを狙って外れてしまうよりは、ボール一つ内側に投げることでカウント負けしない有利な状況を作ろうと言う微妙な話なのだ。


それが、強風や雨によるマウンド状況の悪化と言う環境条件もあり、想定以上に甘いコースに入ってしまった。


日曜日の阪神戦で通出されたボールにはシュート回転して真ん中に入ったボールが多かったと思う。



ここまでが私の診断なのだが、今日先発のトレバー・バウアーはどのように分析し、どの様な投球をしようと意図しているのだろうか?


9日の巨人戦で炎上した後、彼は、


“3つのミスがあった。球種の選択、精度、ゲームプラン。


3つも重なればいい結果にはならない”


と敗因を分析しており、


“米国にいた時と同じ投球スタイルで投げているが、今は違うリーグにいる。


相手を知り、学ばなければいけない”


と述べている。


彼自身が配信している動画では、上記の三つに加えて、


“BABIPが.500を越えていては抑えるのは難しい”


とも語っていた。



ご存知の通り、BABIPつまり本塁打や犠打以外でインフィールドに飛んだボールが安打になる確率であり、例外はあるものの、投手によらず.300付近に収束することが知られている。


このため、BABIPが低く(例えば.250以下)良い結果を出している投手は“運が良くて勝っている”と言う評価となり、登板を重ねると成績が落ちてくると言う予想を立て、逆にBABIPが.350以上と例外的に高く勝てない投手については、運がなかったがこれから勝てるだろうと予想する。


このことからもわかるように、巨人戦でにバウアーのBABIP .500以上というのはかなり異常な状況であり、彼自身はこの結果に対して過度に反応すべきでは無いと考えているだろう。


また、メディアが注目し、広島の新井監督も足でかき回しますよ、と言っている盗塁対策だが、これも過度には気にしないと言う対応で来るように思う。


昨日時点での彼のコメント、


“自分の球種の選択や配球を間違えて失点につながりましたが、自分の何かを大きく変えようとは思っていません。


(盗塁防止策のクイックモーションについても)今の段階で変えるのは時期尚早“


と言うのもこれを裏付けているように思える。


勝敗や防御率あるいは被安打といった球場やマウンドの状況そして守備力に影響されやすい指標を過度に気にしないと言うのはMLB投手の傾向であり、バウアーもここについては同じだと思う。


逆に、投手自身の力量として目標にすべきことは、


① ホームランを打たれない
② 四球を出さない
③ 三振を奪う


の三つだろう。このうち、③については、これまでの2登板で奪三振率11.77と文句なく、また四球は一つだけであり、K/BBも17.00と高い水準にある。



唯一の問題は、2試合で4本打たれているホームランであり、今日のバウアー投手はこの点の改善に全力を注ぐのではないかと私は考える。


この4本のホームランの内訳を見ると、ストレートで2本、チェンジアップで2本、いずれも真ん中か高めのコースだ。この二つの球種は被打率も高く(.400と.625)、被打率1割台以下のスライダーやカットボールとは対照的だ。


また、左右どちらの打者に対しても、低めのストライクゾーンに25%程度投げ込んでいるが、ここについては一本の安打も許していない。


以上のことから、考えられる戦術としては、次のような候補があるだろう。


1) ストレート、変化球ともに低めに集めて勝負する
2) スライダーとカットボールで勝負し、ストレートは高めに外れる釣り球、チェンジアップはワンバウンドするくらい低いボール球にして空振りを狙う
3) 分かっていても空振りするほどの高めのストレートで初回から飛ばしまくる


今日の試合で、彼はどのような戦術を選択し、そしてどのような投球を見せてくれるだろうか?


ワクワクしてきた。