mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

東克樹が取り戻した勝てる投手の資質






エース今永昇太でも勝てず4連敗の嫌な流れの中マウンドに上がった東克樹は抜群の安定感でチームに勝利をもたらしてくれた。


2カード続けて横浜スタジアムで行われた対阪神と対広島の6試合は、東克樹の先発した2試合のみ勝ち、それ以外の4試合は敗けると言う驚くべき結果になった。


つまりこう言うことだ。


勝ち(東)、負け、負け、負け、負け、勝ち(東)


東はこれで11勝2敗となり、新人王を獲得した2018年と並んで自己最多の勝利数を挙げたことになる。また、勝利数と勝率( .846)ではセリーグ単独トップとなった。



今日の東投手は初回先頭の菊池涼介に高めに浮いたボールをレフト前にうまく運ばれたが、その後は絶好調の小園海斗をダブルプレーに打ちとり、落ち着いたマウンド捌きで後続を絶った。


その後はホームベース上で力があるように見えるストレートと切れのあるスライダー、そして抜けの良いチェンジアップをしっかりと制球してカープ打線を抑え込んでいった。


彼の投球フォームは粘りがあるように見える。


右足が着地してから左腕が出てくるまでに一瞬だが間があき、その後は鋭い軸回転で投じられたボールがあっという間に打者の目の前に来ている。


このリズムはトミージョン手術前の投球とは違うように感じた。


手術後の新しい東克樹の投球を作り上げていく過程で模索し手に入れたものなのだろう。



打線の方は天敵(何人いるんだ?)床田投手の立ち上がりを攻めて、初回に佐野、牧の連打とソトの四球で二死満塁のチャンスを作ったが、大和がショートゴロに倒れて無得点。今日も難しいかと思われた。


しかし、2回裏にはこのところバッティングも好調な山本祐大のヒットの後、東が上手いバントを一球で決めてセカンドに送り、1番に入った大田泰示が床田の得意な外角のツーシームが高めに浮いたところを捉えてレフト前ヒット。


当たりが良かっただけにセカンドランナーがホームまで還るのは難しいかと思われたが、思い切り良くスタートを切った山本が好走塁で先制点を挙げた。


レフトからの送球も良く微妙なタイミングになったが坂倉捕手がボールをこぼしており、セーフ。


久しぶりの先取点のような気がする。



さらに、3回裏にも一死からヒットで出塁した牧秀悟をファーストに置いて、5番ソトが床田の外角の甘いボールを引っ張ってツーランホームラン。


ソトは長い手を有効に使ってバットの先でボールを捉えた。バットの先端だったために打球が左に切れず、レフトのポールを直撃するホームランとなった。



切れないでくれ、と(もちろんスペイン語で)祈っていたソトは今年あまり見ることのなかった大きな笑顔でベンチの皆に出迎えられていた。


8月になってホームラン3本、打率も3割近くを記録しており、やっと調子を上げてきた印象だ。宮﨑敏郎が離脱中の今、彼にかかる期待は大きい。



これで3-0となり、試合の主導権を握ることができた。3点取るのが久しぶりというのはどうかと思うが、これが現実なので、適応して戦って行くしかない。


その後、東は6回までピンチらしいピンチもなく無失点でカープ打線を抑えていたが、酷暑であること、今回は中5日の登板間隔になったこともあり、7回には明らかに疲労の色が見え、出力も落ちていた。


一死から4番の西川龍馬にツーベースヒットを打たれ、続くデビッドソンには外角のチェンジアップを3球続けてセンター前に運ばれた。これで3-1。


最後のチェンジアップはやや高く、対応されてしまったが、ストレートがもはや通用しない状態になっており、バッテリーとしても苦肉の選択だったのだろう。


その後は、坂倉選手と堂林選手をいずれも外野フライに打ち取って追加点は許さなかったが、どちらも芯で捉えられた当たりであり、この回をギリギリ投げ切ったと言う状況だった。


しかし、大事なことは2点のリードを保ってHQSを達成したと言う結果であり、疲れていてもこの結果を出せるのが勝てる投手の条件なのだ。


その後は、中4日(4連敗していたもので)で休養十分のウェンデルケンと森原康平が8回、9回をいずれも三者凡退に打ちとってゲームセット。


連敗を止め、再び貯金一つを作ったのは、やはり孝行息子の東克樹だった。




東はこれで7連勝ということになったが、ベイスターズの左腕では野村弘樹さん以来ということで、野村さんの記録である9連勝に追いつき追い越してくれることを期待する。


今日の試合で東克樹が見せたゲームメイクの能力は三浦監督も称賛していたが、彼が新人賞を取った2018年にも投球自体の強さ、鋭さ、正確さに加えてこの「試合を作る力」は際立っていた。


当時私は東克樹はこの能力を天賦の才能として持っている、つまりいわゆるgiftedな人なのだと単純に思っていたが、その後の4年間に彼が舐めた辛酸は、それが与えられたものなどではないことを物語っている。


2020年2月に受けたトミージョン手術によって、投手としての東克樹は失ったものもあったのだろうと思う。


そして、手術後の新しい自分の身体と向き合い、フォームを工夫し、もう一種類のチェンジアップやツーシームという新しい球種も身につけてプロ野球の先発投手として一流の戦闘力を取り戻した。


その上でのゲームメイクの力なのだろう。そこには、もちろん、彼のメンタル面の強さがあるに違いないのだが、彼自身が自分の投球を信じることが出来なければ、その強さを発揮することはできない。


そう言えば、彼は立命館大学の文学部心理学専攻であり、卒論のテーマは、


“球場によってマウンドからホームベースを見た時の角度と距離における視覚的心理の変化”


と言うものだ。


5年ぶりに11勝を挙げた横浜スタジアムでマウンドからホームベースを見た時の角度と距離において、彼の視覚的心理はどのように変化したのだろうか?