mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

ラストサムライという映画のモデルになったのはトレバー・バウアーだったらしい





東克樹の好投と大田泰示、ソトの打棒で勝利した昨日の勢いをそのまま名古屋に持ち込んでドラゴンズとの対戦に臨みたいベイスターズ。


今日の先発は二桁勝利に王手をかけているトレバー・バウアー。ドラゴンズからは既に2勝を挙げており、相性は良いはずだ。


打線は昨夜の成功体験を活かしてトップバッターに大田泰示を起用。昨日の関根大気に代わって2番には桑原将志を入れた。


離脱中の宮﨑敏郎に代わるサードには昨夜の西浦直亨ではなく知野直人を起用してきた。ここは模索中ということだろう。


1番大田泰示、3番佐野恵太、4番牧秀悟、5番ネフタリ・ソトの4人が固定できれば、打線の柱として一定の攻撃力を維持できるように思う。


2番、6番、7番、8番については、投手とのコンビネーションで決まってくる捕手3人のうち誰か、相手先発投手の左右で使い分けるショート(大和か京田陽太)、範囲が広いとは言えない佐野のレフト守備を補完できるセンター(桑原か関根)を日替わりで起用するという試行錯誤がしばらく続きそうだ。


試合は初回、ベイスターズ打線がドラゴンズ先発の松葉投手に襲いかかった。


一死後、桑原と佐野の連打で一、二塁とすると、4番牧秀悟が松原投手の失投(外角高めに抜ける

ボール)に上手くバットを合わせてライトオーバーにツーベースを放って1点を先制した。



続くソト選手もファイトへの犠牲フライで1点追加。ライトの細川成也がこのフライに追いついたのはわずかにライト線の右側、ファウルゾーンに入った位置だったが、アウトカウントを増やすことを選択して捕球した。


さらに大和がサードの頭上を超えるタイムリーでこの回3点目。3-0とリードして幸先良いスタートを切った。


3回表にも佐野がフェンス直撃の一打を放ち、深追いしすぎてクッションボールの処理に時間がかかる間にサードに達した。


佐野のスリーベースヒットというのはあまり記憶にない。今日は一塁走者としてもキャッチャーが投球を前にやや大きく弾くのを見逃さず二塁に進むなど集中力のある走塁を見せていた。


続く牧秀悟は難なく犠牲フライを打って1点追加。リードを4点に広げた。


今日のバウアーはストレートや変化球の質はいつも通りだったが、制球が不安定になるシーンがしばしば見られた。


2回裏には一死から三者連続でフォアボール。その後、松葉、岡林を連続三振に打ちとり無失点で切り抜けたが、ゾーンで勝負するバウアーがこれだけフォアボールを出すのは初めて見た。


球審と合わないようには見えたが、明らかにボールとわかる大きく外れた投球も多かった。



そして3回裏にも不安定な状況で制球に苦労するところを、細川、木下、カリステに3本のヒットを集中されて1点を失う。4-1とリードは3点に縮まった。


6回の攻防でも、ベイスターズがソトと伊藤光、ドラゴンズが村松と龍空、それぞれ2本のツーベースヒットで1点ずつ加え、スコアは5-2。ここでドラゴンズの先発松葉投手は降板。



この先はベイスターズが一方的にドラゴンズリリーフ陣を打ち込む展開となった。


7回には2番手の福島投手を攻めたてた。


大田泰示、牧秀悟、ソトの3本のツーベースヒットと佐野の単打、そしてワイルドピッチもあって3点追加。8-2と試合を決めた。


9回表の攻撃では、4番手の近藤投手に襲いかかり、ヒット8本(うちツーベース3本)、フォアボール4つ、デッドボール1つ、岡林のエラーなどで一挙に10点を奪った。


しかし、この回のグラウンド上の光景は異様だった。


マウンド上の近藤投手は育成出身の若手で2021年に2試合の登板があるものの、今日が2年ぶりの一軍登板だった。


その彼が何点取られても代えて貰えない。


試合後の立浪監督のコメントによれば、勝ちパターンの投手しか残っていなかったので代えられなかったとのことだが、これは本人にもチームにも深い傷を残しかねない仕打ちになってしまったと思う。



試合中にドラゴンズファンは勿論、ベイスターズファンからも「近藤頑張れ」と言う声援が続き、見かねたクローザーのライデル・マルチネスがコーチの制止を振り切って肩を作り始めると言う異常な事態に至った。


結局、18-2でベイスターズは大勝したが、後味の悪い幕切れになってしまった。


この日のヒーローインタビューはトレバー・バウアー。


後半は安定性を取り戻した投球で8回を投げきり、2失点と堂々のHQSで球団外国人投手として2人目の二桁勝利を達成した。



8回、126球、被安打7、奪三振7、与四球3という数字は中盤の不安定さを反映している。


試合途中でグラブを変更したのは、一部のパーツが光ることを球審に注意されたためらしい(インタビューでは、「僕のグラブがカッコよくて他の選手が羨ましがるから換えるように言われた」と言うジョークで笑わせていたが)。


試合後の会見では、冒頭に近藤投手を気遣う言葉を発した。


“質問に答える前に一つだけ言わせていただきたいことがある。


どんなに良い投手でもこういう日がある。


このような結果に落ち込むことなく、落胆することなく、これからも前を向き続けてほしいとメッセージを送りたい。”


コーチの制止を振り切って肩を作り始めたマルティネス投手といい、対戦相手であるバウアーといい、日本人の選手やコーチとは違ってストレートに近藤選手への優しさを見せるのは文化の違いと言うこともあるだろうが素晴らしいことだと思った。


チームという組織の一員であっても、やはり個人の良識に基づく行動や発言を控えるべきではないと思う。


バウアー選手の尊敬するサムライの心というのは、組織の統制の下に個人の気持ちを抑圧してしまうという現代の日本人の一面ではなく、やはり、時として上に楯突いても信義に基づいて行動するプリンシプルなのだろう。


今日の試合では、彼自身も既に8回で126球投げているにも関わらず、9回も投げると言い張って三浦監督を困らせていた。


最終的には説得を受け入れていたが、これも彼なりに自分のつとめと信じるところを全うしたいという一念なのだと思う。


そう言えば、以前、野球解説者の江本孟紀さんが、トレバー・バウアーのことを指して、彼はメジャーから来たのではなく、昭和から来たのだ、と仰っていた。


ご自身が反骨精神と完投への執着を持っている江本さんはバウアーのことが随分お気に入りのようだ。


そして、今日のJsportsの解説だったギャオス内藤さんは、「バウアーはラストサムライだ」と言っていた。


なるほど、確かにそうなのかも知れない。


あの映画のトムクルーズがそうだったように、バウアーはサムライの国に来て、もう無くなりかけているサムライの心を極めて真剣かつ純粋に体現しようとしているように見えてきた。


いや、ラストサムライはトレバー・バウアーの映画だったことに私は気づいた。