伊勢大夢の旅のはじまり
10月3日 対ジャイアンツ(東京ドーム) 3-3 引き分け
今日の今永昇太は、ストレートのキレもチェンジアップの抜けも良く、コーナーに丁寧に投げ続けていた。
7回118球、13奪三振で被安打3(ただし、そのうち2本がソロホームランで2失点)。ハイクオリティースタートの堂々たるピッチングだった。
7回裏の丸への2球目は変化球が真ん中に入る明らかな失投で、これさえなければというところだが、とても責める気にはならない。むしろ、丸との相性の悪さが失投を呼ぶことになった悲運を感じた。
しかし、今永なら、「相性が悪いから、なんていうのはレベルが低い。幼稚な考え方。そこをどうするか考えることでランクが上がる」とか言いそうな気がする。
そう、偶然とは意志がもたらす必然なのだ。
こうして、ベイスターズはエースとファンを哲学的にする。
5回表の攻撃のことも少し書いておきたい。先頭打者の宮﨑が、両手をうまくたたんで内角の難しい球をレフトのポールぎりぎりにソロホームラン。あれがファールにならずにひたすら真っ直ぐ飛んでいくところが、彼の打撃技術の素晴らしいところだと思う。
そして、二死満塁から佐野が高めのボール球を強く弾き返して、フェンス直撃の2点タイムリーとなった。久しぶりに胸のすくような攻めだった。
ところで、今日、私が一番書きたいのは伊勢大夢のことだ。
伊勢は、明治大学から一昨年ドラフト3位で入団した23歳の若者だ。ルーキーだった昨年は、年初に交通事故にあってむち打ちとなり出遅れたが、後半にはブルペンになくてはならない存在になった。
しかし、未だ勝ちパターンに定着した訳ではなく、これまでにセーブ機会での登板もない。
その彼が、先輩クローザー達の不調のために、3-2で一点差の9回裏、敵地東京ドームでジャイアンツの4番から始まる強力な打順と対峙することになった。
さすがに緊張したのか、先頭の4番岡本にはストレートのフォアボール。代走の増田には盗塁されたが、打者のカメーイヨシユキーは力強いストレートで三振に切ってとった。増田の盗塁は三浦監督がリクエストを要求したほど微妙なタイミングだったが、判定は変わらずセーフ。
これがアウトだったら、つまり戸柱の二塁送球がたまたま30センチ右だったら、伊勢は人生初のセーブをあげていたのではないかと思う。しかし、こんなことを言っていると、また、「たまたまで勝ち続けることはできない。なぜ勝ったのかということを、しっかり皆さんに説明できるようにしなくてはいけない」とか言って今永先生に怒られそうだ。
次の丸はライトフライに打ちとってツーアウト。行けるかも知れない、と思った。
そして、ビエイラの代打で大城が出てきた。ストレートは打てそうな気配がなかったが、2ボール2ストライクからの6球目、落ちきらないフォークが真ん中に入ってあわや逆転サヨナラホームランかという飛球がライトフェンス上端に当たって同点タイムリー。
しかしその後は伊勢が踏ん張った。中島敬遠の後、廣岡に死球を与えた時は我が家の神棚に手を合わせたが、次の好調松原はストレートを軸に三振に仕留めてゲームセット。
伊勢がクローザーの大役を自分のものにするには、まだまだ修行の旅が必要だと思う。しかし、私は、彼がクローザーになるために必要な強いストレートと強い心を持っていると言うことをハッキリと感じた。
一つだけ言わせてもらえば、大城に打たれた場面では、キャッチャーの要求に首を振ってでもストレートを投げ込んで欲しかった。この点は次の機会までに良く考えて欲しい。
彼が自分自身の力を誰よりも信じることが、クローザーになるための旅に絶対に必要な切符だと思うからだ。
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より ブルカニロ博士が真の幸福とは何かを探す旅に出ることを決意したジョバンニ(主人公)にかけた言葉。
さあ、切符をしっかり持っておいで。
お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の火やはげしい波の中を大股にまっすぐに歩いて行かなければいけない。
天の川のなかでたった一つのほんとうのその切符を決してお前はなくしてはいけない。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。