ベイスターズは「良いチーム」から「偉大なチーム」に変わろうとしている
今オフの大きな話題としては、エース今永昇太のポスティングによるMLB挑戦があった。
加えて、トレバー・バウアーの去就が不確定ということも我々ファンをヤキモキさせている。
そして、長年チームに貢献してくれたエスコバー投手とソト選手は惜しまれつつも退団し、それぞれシカゴカブス傘下のマイナーリーグ、ロッテマリーンズに移籍した。
これらは主力選手の流出に関するものだが、その逆、つまりFA権を取得した選手の残留や新たな選手の獲得などもかなり報道されている。
ざっと挙げてみよう。
戸柱恭孝捕手:FA権を取得したが、迷い抜いた挙句、行使せず残留し新たに4年間の契約(年俸7500万円(3500万円増))を結んだ。
33歳という年齢を考えれば、宮﨑敏郎などと同様、生涯横浜ということになるだろう。功労者、特に一軍経験の長い捕手の流出を阻止したのは非常に大きい。
石田健大投手:FA宣言しヤクルトからもオファーがあったようだが、「やはりこのチームで優勝したい」と考えてベイスターズ残留を選択。こちらも4年間の契約(総額4億円)を結んだ。
森唯斗投手:ソフトバンクから戦力外となったかつてのクローザーを年俸5000万円で獲得。彼は先発、中継ぎのどちらでいくのだろうか?本人も
「チャンスをくれた横浜に感謝している。腕がちぎれてもいい覚悟。死ぬ気でやります」
と言っているので、チームが必要としているところで力を尽くしてくれることだろう。
中川颯投手:オリックスを戦力外となったアンダースロー右腕だが、投手層の厚いバファローズならではの措置であり、一軍で十分通用しそうな若手(25歳)だ。
下手投げはベイスターズでしばらく見ていなかったので楽しみだし、編成上も強みとなりそうだ。
ローワン・ウィック投手:今永昇太とは逆のルート、つまり以前所属していたシカゴ・カブスからベイスターズへ移籍することとなった31歳のリリーフ右腕(単年契約で年俸は80万ドル(約1億1360万円))。
MLBドラフトでは捕手として指名され、その後外野手を経た後に2015年に投手に転向したという珍しい経歴の持ち主だが、150〜155km/hのストレートと切れ味の良いスライダーで9.86という高い奪三振率を誇る。
WHIP、防御率ともに高めなので制球がポイントになるだろうか。
ベイスターズはツーシーム主体のゴロ投手から三振奪取力のあるパワー系にターゲットを変えたようだ。
アンソニー・ケイ投手:こちらもMLB(メッツ、カブス)での経験のあるパワー系のリリーフ投手で、28歳単年契約で年俸は80万ドル(約1億1360万円))。3Aでは奪三振率12.84という数字を残している。
左腕のケイ投手もストレートの平均球速が150km/hを上回り、最速は157km/hということで、こちらは退団したエドウィン・エスコバー投手の役割を受け継ぐことになるだろうか。
アンドレ・ジャクソン投手:身長190cm、95キロの右腕でストレートの最速は158km/hということなのでかなりのパワーピッチャーのようだ。
まだ27歳と若いこともあり、日本の野球に慣れてくれれば相応の成績を残してくれるだろう。
彼は先発、リリーフどちらもこなせるようだが、まずは先発で見てみたい(バウアー投手が退団する場合でもなんとかローテーションを回していけるように)。
ジャクソン投手の年俸は100万ドル(1億4500万円)と前出の2選手よりも高額であり、球団の期待が窺える。
その他にも、育成選手として、ウィルニー・モロン投手(21歳)とアレクサンダー・マルティネス投手(20歳)というドミニカ出身のピッチャーを獲得し、また、巨人を戦力外となった堀岡隼人投手とソフトバンク戦力外の九鬼隆平捕手も獲得した。
まとめてみると、
投手 FA残留1名、NPBからの移籍3名(支配下2名、育成1名)、外国人5名(支配下3名、育成2名)
捕手 FA残留1名、NPBから移籍1名(育成)
ということになり、投手をかなり積極的に獲得したことが明らかだ。
ベイスターズはこの他にも、ドラフト2位の松本凌人投手(名城大)、3位の武田陸玖投手(山形中央)、石田裕太郎(中央大)という3名のピッチャーを獲得しているのだ。
残る補強ポイントはネフタリ・ソト選手の代わりとなる強打の野手くらいだろう(もちろん、タイラー・オースティンの復活とバウアーの残留は最大の補強だが)。
こうしてベイスターズの今オフの補強ぶりを書き出してみると、例年にない規模と積極性を感じる。
表現は悪いかも知れないが、投手に関しては「過剰」と言っても良いかも知れない。
まるで、かつてのジャイアンツやホークスのように、ハズレくじもあることを想定して万全のチーム編成を狙っているように見えるのだ。
確かに、ベイスターズのチーム編成方針は大きく変わったのだろう。
ヒントになるのは、萩原統括本部長の次のコメントだ。
”昨年はシーズン前のキャンプ前夜に「全員が優勝すると心に決めて臨もう」という話をしました。前半戦は順調で、交流戦も初優勝し、首位にも立ちました。
このまま行ければ、と思っていたのですが、夏頃から失速してしまいました。
特に、大事な試合をいくつか落としてしまったことがシーズンを終えての結果に表れたと思います。
心に決めても優勝できなかったということは、我々に足りないものがあったということがわかったシーズンでした。
今のベイスターズは本当に良いチームだと感じています。「good」なチームなんです。
ただ我々は「great」なチームにならないといけない。
そのためにさまざまな部分を変えていく決意ができました”
振り返ってみると、DeNAに変わってからのベイスターズの補強はコスト効率良く90点くらいのチームを作ることを目指していたように思う。
これが萩原さんの仰る「goodなチーム」なのだろう。
しかし、goodなチームでは優勝できないということがわかってしまった。
長いシーズンを通してみると、主力選手の故障や不振など様々な予想外のことが起きる。むしろ予想外のことが起きることは予想されているのだ。
その中で優勝という目標を達成するためには、コスト効率よく編成した「良いチーム」では足りないのだ。
その上に行くためには、あえて無駄を覚悟しなくてはならない。
予想外のことが起きなかった部門(先発投手、ブルペン、内外野の選手たち)では有効に使えず無駄に終わってしまう補強もあるかも知れない。
しかし、その無駄を覚悟しなければ、優勝を狙える偉大なチームにはならないということを痛感したのが萩原さんの2023年シーズンだったのだろう。
そして、彼は、敢えて無駄を受け入れることを決意したのだ。
90点というのは十分に合格点だと思うが、そこからさらに1点、1点と積み上げて限りなく100点満点つまりパーフェクトなチームに近づけていくために必要な資金と努力はおそらく指数関数的に跳ね上がっていくことになる。
しかし、トップが決断した以上、ベイスターズはその路線を突っ走るはずだ。
まずは外国陣野手の獲得とバウアー投手の残留を目指して萩原さん率いる球団フロントがどんな手腕を見せてくれるか、楽しみに待つこととしよう。






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