悲喜こもごもの初勝利 小園健太の問題は何なのだろうか?
今日で対外試合は3戦目。
練習試合だとは言え、いくらなんでもヒットが出なさすぎると思っていた試合序盤が嘘のように、7回から6点を挙げる猛攻を見せて逆転勝ちした。
野手では未だ主力が顔を揃えていないが、投手陣は期待の新入団選手たちがこぞってアピールしてくれた。
一方、思い描いていた展開とは大きく違ってしまった選手もいるようで、今日の関東地方のように曇り時々晴れと言った印象だ。
【東妻純平と松尾汐恩がアピール成功】
この試合で一番目立ったのは、9回表の攻撃でチーム初ホームランを放った東妻純平選手だろう。
ドラゴンズの勝ちパターンの一角として昨年活躍した松山晋也投手は昨シーズン一本もホームランを打たれなかったそうだが、その投手からの本塁打は一層価値があると言うものだ。
東妻選手は7回の打席でも一死一、二塁から逆転2点タイムリーツーベースを打っており、2安打3打点の大活躍だった。
この時の対戦相手も昨シーズン勝ちパターンの一角を担ったフェリス投手であり、決して簡単に打ち崩せる投手ではない。
持ち前の打力を活かして外野コンバートの挑戦している今オフには、自ら志願してオーストラリアリーグに参加し、4番を任せられるなどの活躍を見せた。
オーストラリアの日本とは異なる野球文化に接して視野が広がり気がついたことも多かったようで、バッティングの勝負強さや思い切りの良さ、そしてそれを支えるコンパクトだが強いスイングを身につけるなど、一皮むけたようだ。
帰国してインタビューに答えた彼が、良い意味でのアバウトさの重要性が分かったと言っていたり、練習をやりすぎるのではなく、「もっとやりたい」と言う気持ちでその日の練習を終え、翌日はその意欲のまま野球に取り組んでいくと言うルーティンが新鮮だったと語る姿にも彼の成長ぶりは見てとれた。
新人の度会選手も含め競争が熾烈を極めるベイスターズ外野陣だが、これまでのところ最もアピールしているのは捕手からコンバート中の東妻選手のように思われる。
アピールしたと言えば、もう一人。やはり捕手登録の松尾汐恩選手。
言わずと知れた昨シーズンのドラフト1位でベイスターズのみならず12球団全体のトッププロスペクトでもある松尾選手も、今日の試合で2安打のマルチヒットを記録して非凡な打撃センスと技術を見せつけた。
今日は2本とも思い切りよく引っ張ったクリーンヒットで、スイングの鋭さもバットコントロールも高卒2年目の春とは思えないレベルだ。
さらに、9回一死一塁のピンチでは、俊足の小田選手の二盗を阻止するなど捕手としての守備面での成長も見せてくれた。
【今年に賭ける勝又温史と中川颯】
投手として入団した勝又選手は、一旦は育成契約となったが、元々、高校(日大鶴ヶ丘高校)でもバッティングが評判になっていた選手であり、昨シーズンに野手として再度支配下登録にこぎつけた。
こうした経緯があってのことだと思うが、泥臭くしがみついて結果を出す、と明言しており、今年に賭ける決意が並々ならぬものであることがうかがえる。
レフトとして先発出場した12日のドラゴンズ戦で猛打賞を記録し、今日もまた、4打数2安打、1打点と結果を見せた。
彼も鋭いスイングでしっかりコンタクトできることが強みの好打者に成長しつつある。
課題だった外野守備もファームでみっちり鍛えたお陰で、だいぶサマになってきた。
一気にレギュラーとまではいかないだろうが、楠本泰史や蛯名達夫のポジションを脅かす存在になることは間違いないように思う。
もう一人、オリックスを戦力外となってベイスターズに入団した中川颯投手も今年に賭ける気持ちが人一倍強いだろう。
彼が実戦で投げる姿を、今日、初めて見たが、アンダースローの特長を上手く使って打者を牛耳ることができていた。
特に、右打者のインコース高めに投げ込むシュートホップするようなストレートと沈む軌道のツーシームのコンビネーションが素晴らしいと感じた。
ボールのキレ、コントロールともに今日の出来であれば十分に1軍の先発として通用する力があると思う。
唯一の懸念は、やはり対左バッターだろう。
今日もアウトコースのツーシームがやや甘く入ったボールはしっかりと捉えられていた。
しかし、この点も、バックドアのカーブやスライダーで左打者を上手く打ちとる場面もあったので、これからの調整次第では長いイニングを投げ切ることもできるように思う。
昨年の2軍での成績を見ても、投手王国のオリックスでなければ戦力外になるような投手ではなく、そのことは本人も認識しているはずなので、「やってやるぞ」と言う気持ちは強いだろう。
この二人のこれからをしっかり見届けて行きたい。
【ジャクソン投手とウィック投手は少なくともハズレではない】
先発したアンドレ・ジャクソン投手は190cmの長身を活かした角度のあるストレートと球速差のあるチェンジアップのコンビネーションが好印象だ。
ストレートの最速は154km/hであり、この時期としては十分だろう。加えて、ボールが少し動いているようにも見えた。
制球にも大きな問題はなく、あとはクイックモーションがどの程度卒なくこなせるかと言うところだろう。
今日はディッカーソン選手にヒットを許したが、それ以外は打者を押し込めていたと思う。
一部報道では、スタミナにやや不安があると言う噂だが、その懸念が無ければ十分に先発ローテーションの一角を担う投手だろう。
ローワン・ウィック投手はウェンデルケン投手と体格もテイクバックの小さい投球フォームも似ているように見える大型投手で、最初の打者に対してはストレートが少し上ずっているように見えたがマウンド上でそれを修正する適応力も持ち合わせているようだ。
低めのストレートで鵜飼選手のバットをへし折った当たりがセカンド後方にフラッと上がり、突っ込んできたライトの度会隆輝が弾いて不運なツーベースとなったが、こちらも力強いストレートで打者を牛耳ることができていた。
今日はナックルカーブが高めに浮いていたが、あれが良いコースに決まりだせば、十分に勝ちパターンの一員としてブルペンを支えるだけの実力を持っているように見える。
この二人は少なくともハズレではない。今永、エスコバーが抜け、バウアーの去就が不明な状況でフロントは適切な補強をしてくれていると思う。
【小園健太の問題は何なのだろうか?】
小園健太は前回に続いてピリッとしなかった。
2回から3イニングを投げて失点1と聞けばまずまずと思われるかも知れないが、60球、被安打5、与四死球4つまりWHIP3.0と言う大乱調で、3回と4回はいずれも満塁の走者を背負う苦しい投球。
失点1で済んだのが僥倖と思えるような出来だった。
ランナーが塁上を賑わせても失点しない「打たれ強さ」と言うのも投手に必要な資質かも知れないが、彼が今目指すべきところはそこではないだろう。
ともかく制球が安定しない。
明らかなボールか甘く内側に入るストライクのどちらかで、打者としては見極めやすいピッチングだった。
コースが甘いせいもあるが、ストレートを芯で捉えられることも多かった。
しかし、皆が口を揃えて言うほど「小園は論外」なのだろうか?
素人の私が言うことなのであまり当てにはならないが、彼の投球はメカニック的には悪くないように思えるのだ。
素早く小さいテイクバックで投げ込む今時のフォームは理にかなっているし、キチンと指にかかったストレートがアウトローに決まるとバッターは中々手が出なかった。
しかし、「投手は一球で地獄に落ち、バッターは一球で天国に登れる」と言われるように、ピッチャーは時たま投げる良いボールがどれほど良いかを競うのではなく、逆に悪いボールが致命傷にならないようなリスク管理をしなければならない。
その生命線となる安定性、あるいは再現性と言われるものを掴むまであと一歩のところに小園投手はいるように思われる。
その一歩は、テイクバックの時のグラブの位置、振り上げた右手首の高さ、着地した左膝のわずかなクッションといった何か非常に微妙なもの、本人しかわからない、そして本人もまだ知らない何かであるように思う。
昨年の開幕直前まで、東克樹が不安定な投球を続け、ローテーション争いの序列は一番下だったことを思い出そう。
小園健太がここから巻き返して活躍する可能性は決して低くないと私は信じている。
頑張れベイスターズ!
勝っても負けても、いつでもどこでも、ずっと応援している。
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