角界と野球界で新人が頂点に立った日 そして徳山壮磨は自分が何者であるかを世界に示した
今日、千秋楽を迎えた大相撲春場所では、前日の朝乃山との一番で右足首靱帯を伸ばしてしまう怪我を負った新入幕の尊富士関が強行出場し、豪ノ山を破って初優勝を決めた。
新入幕の力士が優勝するのは実に110年ぶりの快挙。
110年前、つまり1914年(大正3年)と言えば第一次世界大戦が始まった年ですからね。
はるか昔のlong long time agoですよ。
尊富士関、優勝おめでとうございます。
昨晩、一度は怪我のために出場を諦めたものの、もうこれで終わりになっても良いと思って土俵に立った、とのことですが、しっかり治してまた来場所もスピード感のある無駄のない相撲を見せてください。
そして野球界でも、オープン戦ながら新人選手が10年ぶりに頂点に立った。
我がベイスターズの誇る生成型安打製造機、度会隆輝選手が今日の最終戦第5打席で規定打席数に達し、打率 .434で首位打者を獲得したのだ。
規定打席に達した打者で打率3割を超えたのは度会選手のみで、2位の細川成也選手も.290と大差をつけてタイトルを獲得した。
ジャイアンツの佐々木俊輔選手と最終日まで競る展開だったが、佐々木選手は規定に1打席届かず、打率も.400と度会選手を下回った。
今日の度会選手は、第一打席でファイターズ先発の左腕、上原健太投手に2球で0-2と追い込まれたが、3球目の外角低め、ボールゾーンに沈んで行くフォークボールにバットを合わせレフトとショートの間にポトンと落とすヒットで出塁した。
その後、盗塁失敗でチャンスは潰えたが、このヒットで上原投手は本来のバランスでピッチングをするのが難しくなったように見えた。
立ち上がりややナーバスになりがちな先発投手を攻めて、「あれ、なんか変だぞ」と思わせるのもトップバッターの大きな役割だ。
度会選手は昨年ベイスターズが求め続け、結局手に入れることのできなかった真のトップバッター、まさにリードオフマンとして、これから長年にわたってチームを牽引してくれることだろう。
度会選手は第2打席でもフルカウントから今度はセンター前にクリーンヒットを放って早くもマルチ安打。
テレビで解説をされていた日本ハム・阪神OBの金村暁さんが、度会選手の打席での振る舞いを見て、「この選手はグラウンド上の色々なものを良く見て次に何をすべきかを目まぐるしく考えている」と仰っていた。
さすがにエースとして多くの修羅場を切り抜けてきた金村さんは目のつけどころが違うと感心した。
金村さんの仰る通り、テレビの画面でアップになった度会選手の眼は常にキョロキョロと動いており、投手の動きは勿論、刻々と変わる各野手のポジショニングを追っていることがわかった。
その観察眼が見事に発揮されたのが6回表の第4打席。
守備に少し難があると言われるサード野村選手の守備位置がやや後ろであることを瞬時に見抜くと、この回からマウンドに上がった3番手の河野投手の初球、意表をつくセーフティバントを見事に決めて見せたのだ。
これで今日のヒットは3本となり、オープン戦初めての猛打賞を記録した。
度会選手が最終戦で規定打席に達するためには5回打席に立つことが必要だったが、これはチームが13安打、3四球と多くの走者を出したことで初めて可能となった。
そして、そのうち3安打は彼自身が記録したものなので、自ら引き寄せた快挙だったと言うこともできる。
打力・走力・強肩と言う優れた身体能力に加えて、天才的なバットコントロール、広い視野と観察力、そして高度な野球センスを兼ね備えた素晴らしい選手が我がベイスターズに入団したことを本当に誇らしく思った1日だった。
4年前の牧秀悟の時のように、この誇らしい気持ち、他チームのファンも含め野球好きの人みんなに「どうです、ウチの牧、良いでしょう」と言っていたあの時の気持ちを急にはっきりと思い出した。
どうです、ウチの度会、良いでしょう?
さて、試合の方は、度会選手の活躍に加えて、石上泰輝と梶原昴希のマルチヒットなどもあり、3点を挙げたベイスターズが終盤に上茶谷大河がまたしてもマルティネス選手にツーランホームランを浴びると言う波乱はあったものの、3-2で逃げ切り、オープン戦勝ち越しを決めた。
先発の大貫晋一の今日の投球は非常に良かった。
ストレートのキレがあり、ツーシーム、スプリット、スライダーでピッチトンネルを作ってファイターズ打線を5回、4安打、7奪三振、無四球、無失点に抑えた。
彼は開幕カードの対広島第3戦での先発が濃厚だが、きっと彼らしい安定した投球を見せてくれるだろう。
昨日のブログで、「消去法ではなく開幕スタメンを自ら勝ちとるためには今日の最終戦で石上、梶原の二人はハッキリと結果を出すことが求められる」と書いたが、その通りのことをしっかりとやってのけた。
これでもう開幕戦のショートとセンターのスタメンはこの二人で決まりということです良いでしょう。私が保証します。
そしてさらに、昨日のブログにこう書いた通り、今日の試合でもう一つ注目していたポイントがあった。
“もし明日の試合で9回裏がセーブシチュエーションとなった場合、山﨑康晃で連投の試行をするのか、森原康平にリベンジのチャンスを与えるのか、あるいはウェンデルケンもしくは伊勢大夢と言う第三のオプションを試すのか、非常に興味深い問題となる。”
3-2と1点リードで迎えたセーブシチュエーションの9回裏。ベイスターズ首脳陣の選択は少なくとも私にとっては想定外のものだった。
開幕直前のオープン戦最後の試合で徳山壮磨をクローザーとして起用!
この選択は大きな意味を持つ。
ベイスターズ首脳陣が昨シーズン後半にコンパクトなフォームにモデルチェンジしオーストラリアのウィンターリーグで研鑽した徳山投手を(我々ファンが考えていた以上に)高く評価しており、ブルペンの序列においてかなり上位に配置しようとしていると言うことが明確になったのだ。
そして、徳山投手はこの期待に見事に応えて見せた。
先頭の水野選手に続いて代打の郡司選手を内野ゴロに打ちとり、最後の打者となった江越大河選手には2-2からアウトローに糸を引くような素晴らしい球質の153キロのストレートを投げ込んで見逃し三振に打ちとった。
わずか11球で三者凡退としてセーブを挙げた。
一昨日の試合では7回に登板し、三連打で1点を失ったが、今日はしっかりと修正することができたと思う。
一昨日の試合でレイエス選手にタイムリーヒットを打たれたボールは、0-2と追い込んだ後のフォークボールが真ん中に浮いたもので、これを見事にレフトに打ち返された。
このボールはワンバウンドしても良いので、絶対に低く投げなくてはならなかった。
そのことは徳山投手自身が一番良く分かっていることと思うので、この失敗を糧として一段階上の投手になってくれれば、と思っていたのだが、早くもその兆しを見せてくれた。
恐らく、三浦さんと大原コーチはこれで徳山投手を勝ちパターンとして使っていくために開幕後も実戦で試運転していく肚を決めたことだろう。
確かに、今の彼のストレートの強さにはそう思わせるだけの期待がある。
ちょっと前まで辛口の評価を書いてしまっていた私は穴があったら入りたい。
まさに、男子、三日会わざれば刮目して見よ、とはこのことだ。
徳山投手、申し訳ありませんでした。
2021年に大卒ドラフト2位、つまり即戦力として入団しながら2年間にわたって1軍での登板すらなかった徳山投手が自分の力を世界に見せつける時が来たのだ。
今までのお詫びの意味も込めて、これからは推しの一人として一生懸命応援させてもらいます。
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