mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

大田泰示という名前の星の輝きについて



8月9日 対阪神タイガース 横浜スタジアム 3-2 勝ち


今日からホームでのタイガース3連戦。


オールスター前の対戦では三連敗を喫しただけにベイスターズとしては雪辱を果たしたいところ。


しかし、タイガースの先発は青柳、伊藤将、才木といずれも簡単には打てない好投手が並ぶ。
対するベイスターズは今永、浜口、石田の3人の左腕。


前回の対戦では、坂本ー青柳、今永ー伊東将、浜口ーガンケルというマッチアップだったので、登場人物は4人まで同じだが組み合わせと登板順序は異なる。


今回はホームでの対戦ということで意地を見せて欲しい。


まずは今日先発する今永昇太にエースの働きを期待したい。前回は先頭打者の中野選手に初球をツーベースヒットにされてからどうも歯車が噛み合わなかった気がする。


今日は立ち上がりを慎重にと考えていると思うが、慎重になりすぎるとかえって傷口が大きくなることの方が多いので、やはり今永投手らしく攻めのピッチングを見せて欲しい。


今日の試合の前にいくつか注目すべき報道があった。


大和選手がコロナ感染のため選手登録抹消。症状があるということなので、少し離脱期間が長引くかも知れない。早く治して元気な姿を見せてください。
コロナで離脱していたソト選手と森選手が一軍に合流。ソト選手は予定通りだと思うが、森選手の登録は大和選手の離脱のために前倒しになったのではないかと思う。
阪神でも熊谷選手、中野選手、糸井選手が抹消され、代わって、山本泰選手、原口選手、江越選手が登録された。


ジャイアンツのようなクラスターにまでは至っていないものの、両チームともコロナの影響で主力の一部が離脱・復帰を繰り返す状況が続いている。第7波の期間はこの調子で何とか乗り切っていくしかないのだろう。


先週の中日戦で走塁中に野手と交錯し脳震盪特例で抹消されている神里選手は貴重な青柳キラーなので今日に合わせて再登録されるかと思ったが未だ時間がかかるようだ。




タイガース先発の青柳投手は右打者に対して左打者の被打率が約1割高いということで各チームとも左打者を並べる戦術をとっているが、今日のベイスターズもそれに倣ったようだ。


トップバッターは一軍復帰直後のショート森、そして宮﨑を下げて左の柴田をサードに入れた。
宮崎に代わって5番に入るのはこれも左の楠本。そして捕手も左の戸柱、レフトにも先日ファームから昇格間もない左の宮本選手を起用するという徹底ぶりだ。


この対策が功を奏するだろうか?


1番 森(SS)
2番 桑原(CF)
3番 佐野(1B)
4番 牧(2B)
5番 楠本(RF)
6番 戸柱(C)
7番 宮本(LF)
8番 柴田(3B)
9番 今永(P)


投手 今永昇太(9回)


2回表 タイガースの攻撃 0-2


一死から糸原選手のレフトへのライナーを宮本が目測を誤りグラブに当てながらも後方に逸らして糸原は2塁に達した。


記録はツーベースヒットとなったが、あれを取ってあげなくてはピッチャーが可哀想だ。
宮本選手は以前も同じように左打者のスライスするレフトライナーを捕球できないことがあった。


試合後に三浦監督もコメントしていたがこう言うミスを繰り返すようではいつまで経ってもまれに一軍に呼ばれる選手止まりになってしまう。レフトは不慣れと言うことかも知れないが、自分に求められることはわかっているはずなので、そんな言い訳は通用しない。


嫌な流れになったと感じたが、その通り。続く陽川選手のつまった当たりがセンター前に落ちてまず1点、そして木浪選手のチョコンと当てただけの打球もセンターに抜けてさらに1点。早くも2点を先制される苦しい序盤となった。


4回裏ベイスターズの攻撃 1-2


牧と楠本のヒットがあり、二死一、二塁のチャンスで先ほどのミスを取り返したい宮本選手の当たりはボテボテのセカンドゴロ。


万事休すかと思われたが、宮本の俊足に焦った糸原選手がファーストの頭上かなり上を通過する悪送球でその間にセカンドランナーの牧秀悟がホームまで駆け込み1点を返した。


6回裏ベイスターズの攻撃 2-2


この回先頭の牧の打球はレフト陽川選手の手前でバウンドするヒット。これを陽川が弾いて少しもたつく間に牧が抜け目なくセカンドに進塁した。


記録はツーベースヒット。今シーズンのテーマの一つ、走塁の意識改革がしっかり根付き始めていると感じさせるナイスプレーだった。


続く5番楠本は上手く送りバントを決めて、牧が三塁に進んだ。


一死三塁のチャンスで6番戸柱に対して代打オースティンを打席に送る。


オースティンは1-2からの4球目をピッチャー返し。これを青柳投手がグラブで弾き、糸原選手がフォローしてファーストはアウトになったが、その間に牧がサードからホームに生還し、2-2の同点に追いついた。


9回裏ベイスターズの攻撃 3×-2


タイガースのマウンドには4番手の加治屋投手が上がった。


先頭の楠本が四球で出塁したが、続く嶺井がバントを失敗し、一死一塁。ここで、次打者宮本に再度バントを命じて今度は成功。二死二塁と得点圏に走者を進めた。


このチャンスに、まずは柴田に代わって宮﨑を打席に送る。宮﨑は申告敬遠で二死一、二塁となったが、これはベイスターズベンチも想定していただろう。


次の大事なピンチヒッターに三浦監督が指名したのは大田泰示。


その初球フォークボールはワンバウンドして梅野捕手が三塁側に少し弾いた。セカンドランナーの嶺井はこの僅かな隙を見逃さずスタートを切り、サードにヘッドスライディングするとギリギリのタイミングながらセーフ。


先ほどの牧のツーベースと言いこの嶺井の進塁といい、石井琢朗コーチの教えが徐々に浸透してきていることを感じる。


このピンチにフォークボールを叩きつけてしまったことで、阪神バッテリーの配球上の自由度はだいぶ減ったと感じた。


私はTVの画面に映る大田泰示に向かって呟いた、“もしスライダーかカットボールが甘く入ったら逃さず打つが良い。そうすれば道は開けるだろう。“


そして、その通りのボール(腰の高さの外角カットボール)が来た、と思った時には大田泰示は身体を開いて引っ張り、打球は三遊間の真ん中を抜けるサヨナラタイムリー。



サードから嶺井が踊るように生還すると、戸柱が水を持って駆けつけ、ヒーローたちに浴びせると言う今シーズン何度か見た歓喜の情景が出現した。


やった。難敵青柳晃洋投手の先発試合にとうとう勝つことができた。





今日の今永昇太は終始落ち着いていた。


試合前の談話でも、青柳投手に絶対投げ勝とうなどと意識し過ぎず、自分のできることをしっかりやろうと考えている、と言う趣旨のことを言っていたが、その通りのピッチングができたと思う。


9回、113球、被安打4、5奪三振、失点2。HQSの完投勝利だ。


今永は試合前に、週初めなのでブルペンの負担を減らせるよう、何点取られても長い回を投げるようにしたい、とも言っていたが、これもしっかりクリアできたと思う。


くどいようだが、2回の糸原選手のツーベースヒットはレフト宮本選手のエラーだと思う。つまり、私の査定では、今日の今永の自責点はゼロと言うことになる。



今日は最速150km/hのストレートを軸に打者を牛耳る投球ができていた。味方の拙守と不運なヒットで2点を失った後も乱れることなく投げ続け、特に、3回以降はヒットのランナー1人を許しただけとほぼ完璧にタイガース打線を封じた。


この今永の修正力と安定は彼の精神面での成長の証だと思うし、エースの奮闘が、その後の同点、そして最終回の劇的なサヨナラ勝利を呼んだと言う面も確かにあると思う。


試合後の今永昇太のコメント。


“彼に投げ勝った訳ではないと正直思っていますし、今日は青柳投手も5回で100球投げて、かなり調子は悪かったと思うんですけど、何とか最少失点で切り抜けようという姿を見て、これが勝つ投手の投球だなと思い知らされました。本当に僕の尊敬している投手の一人なので、そういう選手と投げ合えて幸せだなと思います。”


ヒーローインタビューでお立ち台に上がった今永昇太は、並んで台上に立った大田泰示に向かって、大田さんの左の内転筋にサヨナラのオーラが出ていたと言う現代科学では説明できないコメントをしていたが、私もテレビで見ていて大田選手が打ってくれそうな予感を持っていた。



本人は、打席に入った時は緊張していて、タイガースのバッテリーエラーで嶺井選手がサードに進むとさらに緊張したと言っていたが、緊張することが悪いわけではない。緊張を力に変えることができる、常人にはない集中力を持っているのがスターなのだ。


私は常々、大田選手がそう言う意味でのスター性を持っていると感じていたことがサヨナラの予感の一つの根拠。そしてもう一つは、ミスを犯したタイガースバッテリーの表情に“しまった”と言う焦りの色が見えたことがもう一つの理由だ。


そして大田選手は甘く入った外角寄りのカットボールを長いリーチを生かして完璧なヒットコースに運んだ。そこまでの彼の動きの一つ一つが、必然の結果としてのサヨナラ打につながったように見える素晴らしいバッティング。本人は緊張したと言っていたが、恐らく配球を読んで狙っていたボールだったのだろう。


ヒーローインタビューでは、ベイスターズ移籍後もう恒例となった、


“ヨコハマサイコー”


の叫びとともに右手を夜空に向かって高々と突き上げた。


以前も書いたが、大田泰示の加入によってベイスターズの文化は少しだがはっきりと変わった。彼の明るいスター性とそれを支える思い切りの良い積極性は、これまでのベイスターズの選手にはなかったもののように思う。


彼が今シーズン最初にヒーローとしてお立ち台に上がった試合の後、私はこのブログで、“大田泰示がはじめて星になった夜”と書いたが、その星は今晩さらに明るく大きく輝くようになった。


大田泰示選手、ベイスターズに来てくれて本当にありがとう。