mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

2月12日紅白戦 内省的だったプレシーズンのはじまり



宜野湾キャンプも第3クールに入り、実戦段階での調整が始まりつつある。


試合形式とは言っても紅白戦なので、相手チームとの勝負というよりは自分自身が取り組んできた課題についての確認や答え合わせといった意味合いが強い。


従って、闘志あふれるプレーというような雰囲気ではなく、自然と自分自身の内側に向かいつつ相手と対峙するという静かな試合になった。


ベテランともなればこの時期に試合をこなす必要はないのだが、若手の選手たちは、自分がこのくらいできていればこの程度は通用するはずだ、という相場感やその根拠となる経験がないのでこうした練習試合で確認することが重要になる。


ということで、紅白戦と言いつつ両軍とも新人や若手中心のラインアップとなった。


紅組


1. 宮本(LF)
2. 関根(CF)
3. 蝦名(RF)
4. 嶺井(C)
5. 山下(1B)
6. 東妻(DH)
7. 伊藤裕(2B)
8. 小深田(3B)
9. 田部(SS)
ピッチャー 阪口(2回)、平田(1回)、池谷(1回)、中川(1回)、石川(1回)、加藤(1回)


白組


1. 梶原(CF)
2. 森(SS)
3. 伊藤光(DH)
4. 楠本(LF)
5. 山本(C)
6. 倉本(3B)
7. 細川(RF)
8. 知野(1B)
9. 柴田(2B)
ピッチャー 上茶谷(3回)、坂本(3回)、ディアス(1回)



先攻の紅組は初回、先頭の宮本が三振のあと関根がレフト前に鋭い辺りを放った。
突っ込んできた楠本がわずかに及ばず捕球にもたつく間に関根はセカンドへ。


レフトの守備を見てスピードを緩めずツーベースとした抜け目のない走塁を見せた関根はアピール成功といったところ。


続く蝦名はうまくミートしてライト前へ。一死一塁・三塁とチャンスを広げた。


珍しく4番に入った嶺井もライト前に弾き返して関根が生還。あっという間に先制点をあげた。その後は特別代走の新人村川が盗塁を試みるも山本の強肩に刺されるなど追加点はなし。


上茶谷投手は2回、3回とマウンドに上がり、その後のヒットは伊藤裕選手のセンター前一本のみだったが、2軍のバッターに簡単に打ち返されるシーンもあった。


フォームを改良し、その後も順調に仕上げていると思われた上茶谷投手も見ている我々も、ああ、またか、という思いがよぎらなかったわけではない。


しかし、こうした問題点を早めに見つけるのが紅白戦や練習試合の意味でもあるので、ここでは、これからの伸び代とポジティブに捉えるべきだろう。


実際、後述するように、彼は試合後にブルペンに向かい、長いこと確認と調整を繰り返していた。


紅組の先発阪口投手は、手術の影響をほとんど感じさせないピッチングで2回を無安打に抑えた。140キロ台後半のストレートや良いコースのカットボールなどもあり復活を十分に感じさせる内容だった。


本人もほっとすると同時にリハビリで取り組んできたことが間違いではなかったという確信が持てたことだろう。三浦監督も彼のピッチングを評価しているようだったので、近いうちに宜野湾の方に移動することもあるかも知れない。


白組の攻撃の見せ場は、阪口投手からこちらも手術明けの平田投手に代わったばかりの3回裏。先頭の梶原選手が紅白戦とは言えプロ入り初安打のツーベースをライトに放った。


膝下の難しいコースの変化球のように見えたが、試合後のインタビューで「好きなコースでストレート待ちだったが体が自然に反応した」と言っていたようにスムースにバットが出た印象。


ライトを超えるあたりではなかったが簡単にセカンドまで達するあたりは流石の俊足だ。やはり、足の速いバッターはワクワクするものがある。


彼のインタビューは落ち着いていて、内容もプロ野球選手としての賢さを感じさせる筋の通ったものだった。この人はプロ向きだと感じる。


ノーアウト二塁で打席に入った森選手は最低限進塁打を狙いたいところだが、経験豊富な平田投手にツーストライクと追い込まれた。


しかし、ここからが三年目の進化ということだろうか。真ん中高めにきた甘いボールを見逃さずに右中間に打ち返してタイムリーツーベースで同点に追いついた。


ここまでで紅組が4安打で1得点。白組が2安打で1得点だったが、その後は両チームともヒットなし。静かな試合展開となった。


そんな中で印象に残った選手を挙げてみる。


白組二番手の坂本投手が3回無安打と好投。しかし、相手バッターがレギュラークラスだとどうだろうか?やや甘いボールもいくつかあったように思う。


紅組の中川虎大投手の身体が以前よりも大きくなった印象。そのせいか、ピッチングも以前より安定感が増したように思う。今年こそ一皮むけてプロ入り初勝利を挙げられるか。


ディアス投手は力のあるストレートとよく曲がるスライダーを投げていた。今年支配下登録をつかみ取れるかどうか、ラストチャンスと思って頑張ってほしい。



試合後には、トレーニングウェアに着替えた上茶谷投手がブルペンでシャドウピッチングを行い、フォームを確認していた。


いつものように近所のおじさんが散歩がてら河川敷に野球を見にきた、という風情の小谷アドバイザーが見守り、足の上げ方や肩や上腕の回転などいくつか指示を出していた。


その後はキャッチャーが座った状態で投げ込みを行い、斎藤隆コーチと木塚コーチが付きっきりで手首や肘の使い方などを細かくチェックしながら確認と改良を繰り返していた。


今日の上茶谷投手はストレートの力もバッターの内角に投げ切るコントールもまだまだという感じだった。味方のバッターにぶつけてはいけないという気持ちもあったのかも知れないが、それでは実戦の意味が減ってしまう。


幸いまだ時間はある。今日見つかった課題に取り組んで、ストレートのキレと内外角のコーナーに投げ込む精度を磨いて欲しい。


ところで、上茶谷投手はブルペンでフォークかスプリットの調整もしていたようだ。
今まであまり落ちるボールというイメージはなかった投手だが、今年は投球の幅を広げる意欲も持っているのかも知れない。



白組で唯一の得点となるタイムリーツーベースを放った森選手はインタビューを受けていた。タイムリーヒットよりもむしろ第一打席で阪口投手の甘くきたボールを引っ掛けて内野ゴロにしてしまったことを反省しているようだった。


そして、試合後にはサブグラウンドで長時間にわたって石井コーチのノックで基本の守備練習を行なっていた。田中浩康コーチも背後からこれを見守り、荒れたグラウンドを均したり時々アドバイスしたりしていた。贅沢な時間だった。


キャンプ半ばで疲労もたまっており、その上の長時間のノックなので、森選手はかなりバテているようだったが、それでも最後まで必死にボールに食らいついていた。


ノックの終盤、あと10本という声をかけると、石井コーチはサブグラウンドのフェンスの外側にいたファンの方々が拍手をしてくれるようなプレーだけ一本と数えよう、と提案していた。


観客の方も目が肥えていて、ただ単に捕球するだけでは拍手は起きない。
森選手がなめらかなリズムで石井コーチが言っているような正しい姿勢で捕球体勢にはいり、ミスなく送球姿勢まで行ったプレーにだけ拍手していた。


森選手はOKと思ったが拍手がなかったり、拍手があっても本人が納得しないことも何度かあり、かなり球数を費やしてようやくラスト10本が終わった。


私はこの石井コーチの提案を好ましく思った。


観客の方々も練習に参加している実感を持つことができるだろうし、何よりも、若い森選手が、お金を払ってわざわざ来てくれる人たちに自分のプレーを見てもらうというのがどういうことなのか、プロ選手としての矜持を肌で感じることができたのではないかと思うからだ。


スター選手というのは、技術だけではなく、こうした意識の高さも必要だと思う。


長い守備練習が終わると、森選手はコーチやスタッフそしてファンの方々に深々とお辞儀をして、バットやグラブを抱えて自転車で室内練習場に走り去っていった。


もう5時を過ぎていたが、あれからバッティング練習をしていたのだろう。
まさに野球づけの毎日を送っているに違いない。


彼の姿を見て、イチローさんがかつて言っていたことをまた思い出した。


“小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただ一つの道”