mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

東克樹の2種類のチェンジアップ





昨年末に次のような記事が日刊スポーツに掲載された。


DeNA東克樹「遅いチェンジアップを」中日笠原らと自主トレで宝刀に磨き

https://www.nikkansports.com/m/baseball/photonews/photonews_nsInc_202112180000634-0.html


“DeNA東克樹投手(25)が宝刀チェンジアップに幅を持たせる。


1月は、名古屋で中日の選手らと自主トレを行う予定。


「笠原さんのチェンジアップを身に付けられたらいいなと考えている。

浜口さんのもそうですが、今より遅いものがあれば武器になる」


と、同じ変化球を得意とする左腕から学びたい考え。


トミー・ジョン手術から復帰し、来季の開幕ローテ入りと規定投球回クリアを目標に掲げている。“


東投手は以前からチェンジアップの使い手として高い評価を得ていた。


同じくチェンジアップを決め球としている濱口遥大投手に比べると空振り率は若干低いものの、東投手のチェンジアップはストライク率が非常に高く打者にとってより厄介なボールだ。


名捕手であり名コーチでもある田村藤夫さんが昨年の東のイースタンリーグでの投球を見て、次のように仰っていた。


“この日の東はストレートが最速145キロ。手術前は148キロは出ていたと思うが、それに比べるとあと2~3キロは出るのではないかと感じる。そこに126~8キロのチェンジアップとなれば、打者は苦労する。


腕がよく振れていた。腕の振りは非常に大切で、打者は、変化球で腕の振りが鈍くなると、このわずかな違いで球種を見分けて対応してくる。この日の東のようにストレートと変わらない腕の振りをされると、緩急をつけられることで、対応が難しくなる。


チェンジアップは奥行きで勝負できる特徴のある変化球だ。スライダーやフォークはベース手前で横にスライドしたり、落ちるなど変化する。しかし、良く抜けたチェンジアップは、なかなかボールがベースに到着しない。


それもストレートとの球速差があればあるほど、チェンジアップは効果的になる。打者はこの時間差にタイミングを狂わされる。スライダーやフォークとはまたひと味違った対応が求められる点で、やっかいなボールになる。 “


田村さんも「良く抜けたチェンジアップは、なかなかボールがベースに到着しない。それもストレートとの球速差があればあるほど、チェンジアップは効果的になる」と仰っていて、東投手の投球デザインもこの効果を狙ってのものだろう。


下の図は昨シーズンの東投手の各球種の平均急速、投球割合と被打率を比較したものだ。


全体の半分近くを占めるストレートは平均球速142 km/hで手術前に比べると2〜3km/hほど遅いが、それでも被打率 .037とほとんど打たれていない。これもストレートそのものが良い球質であることに加えて、バッターの頭にチェンジアップのイメージがあるからだろう。




彼が目標としている中日ドラゴンズの笠原祥太郎投手のチェンジアップは自分のこれまでのチェンジアップよりも10キロほど遅い110km/h台前半のもので、カーブと同じ球速帯に位置づけられる。


ストレート、2種類のチェンジアップを同じ腕の振りで投げることができれば、バッターはなかなかベースに到達しないチェンジアップを待ちきれずに空振りや凡打となる可能性が上がる。


そして、仮にチェンジアップを読んでいたとしても、その球速が2種類あるので打ち返すことは至難の技となる。



昨日のシートバッティングに登板した東投手はテストの意味で2種類のチェンジアップを多投しておち、大田選手をそれぞれ異なる球速のチェンジアップで三振とサードゴロにうちとっていた。


本人としても良い感触を掴んだようで、次のようにコメントしている。


「完成度はまだまだだと思うんですけど、捕手の山本祐大や戸柱さんから非常にいいと言ってもらえた。今後使っていける球になるんじゃないかと思います。


(打者が)思った以上の反応だったので。僕としても今日に関してはすごくチェンジアップは満足しているかなと思います」


ボールを受けた山本は「同じ球種でも打者の反応が全然違う。バリエーションがまた増えて面白くなる」と背中を押していた。


三浦大輔監督も「使えるなというか、今日もいい形で投げていた。投球の幅が広がるなと思って見ていました」と語っており、首脳陣も好印象を持っているようだ。



今永投手が前腕の炎症で開幕に間に合うかどうか不透明な中で、実績十分の東投手が開幕投手候補に名乗りを挙げることになった。


昨シーズンの東投手の球種別の指標を見てみると、ストレートはwFA 5.5と新人王を取った年の数値(5.2)を上回っているが、チェンジアップに関しては、wCH 0.1と同じく新人時代の数値(22.8)から大きく低下している。


二つ目のチェンジアップの習得によって、チェンジアップの指標が新人の頃と同様にまで良化すれば、私は、まさに押しも押されもしないエース誕生ということになるだろうと思っている。

一つだけ気になっているのは、左打者の外角高めに浮いたスライダーで、これは昨シーズンも被打率 .333と打たれている。今日も柴田選手に一、二塁感を破るヒットを打たれていたが、本番までにスライダーの精度を高めて行って欲しい。


昨シーズンの復帰戦で5回まで無失点の好投を続けていた東投手がスワローズ青木選手の満塁ホームランでKOされた日、私はブログで次のように書いた。


“しかし、私には、このショックよりもずっと大きな喜びがある。

そうだ。東克樹がとうとう帰ってきたのだ。“


東投手は、今年、これまで溜まっていた心の中のモヤモヤが全て消えて無くなるような大活躍を見せてくれると確信している。


頑張れ東、光り輝くものはもう手の届くところまで近づいて来ている。