mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

入江大生の逆襲のはじまり



入江大生投手は、名門作新学院で甲子園を制し、明治大学野球部に進んだ。
もともと投手だったが、作新学院時代は今井達也投手の台頭でエースの座を譲り、甲子園ではファーストとして連続試合ホームランを放つなど打者として活躍した。


打者としての素質も大いに期待されたが、明治大学では投手に専念することを決意し、東京六大学リーグでの通算成績は37試合111イニングに登板し、5勝7敗、防御率2.59、121奪三振だった。


一昨年のドラフトでベイスターズから一位指名を受けて入団し、一発ギャグを見せていたのは記憶に新しい。


昨シーズンは3月31日のヤクルト戦で先発し、5回を投げて被安打8失点5で敗戦投手となった。その後も1軍で登板を続けたが、4戦4敗で4月21日に登録を抹消された。


2軍でも何度か登板したが調子は上向かず、肘に違和感を覚え、8月にクリーニング手術を受けた。


その後、シーズン中からリハビリに入ったが、彼自身、


「何も結果を残せていない中での手術ということになり大変申し訳ないと思っています。しかし、しっかりと怪我を治し1日でも早くチームに貢献できるように精一杯頑張りますので、応援のほどよろしくお願いいたします」


と言っていたように、一番悔しかったのは自分自身だろう。


手術後はリハビリと並行して肉体改造にフォーカスした。下半身の筋量増加をメインに体重アップを試み、入江投手は手応えを感じているという。入団時87kgだった体重は、90kg台半ばにまでなった。この筋肉量アップはストレートの威力を増すことにつながる筈だ。


同期でドラフト2位の牧秀悟選手が多くの新人記録とならぶあるいは塗り替えるような大活躍をするのをみて、嬉しい反面複雑な気持ちもあっただろう。
牧選手は「一緒に頑張ろうね」と言っている(いい人だ)ようで、入江投手も感謝していた。


新しい年を迎え、リハビリも終えた。
彼自身もう一度新たにプロ野球選手になったような、まっさらな気持ちになっていることと思う。


昨シーズンの投球を見た印象としては、相手チームの打順が一回りするまでは何とか球威で抑えられるが、二巡目になると球威が落ちてコントロールも甘くなり、そして打者の目も慣れてつかまるという様に見えた。


プロ野球の投手として一皮剥けるためには、まずストレートの球質と制球力の向上が必要だろう。特に、制球力については、ストライクを取ることができることつまりコントロールに加えて、狙ったところに投げ切れる力(MLBではコマンドと呼ばれる)を磨くことが必要だ。


次に、プロのバッターから空振りを取れるようなキレのある変化球を少なくとも一種類。
これについては、元中日の大エース山本昌さんが、「(入江投手の)縦に鋭く落ちるスライダーは、現時点でも一軍の打者が手こずるだろう」と言っていた。


そして、こうも言っていた。


「(入江投手の投球フォームについて)打者からすれば急にボールが出てくる感覚になるので、タイミングが取りづらいフォームのはずである」


私は山本昌さんの投手を見る目は確かなものだと以前から思っていたので、入江投手はプロとしてやって行く能力を持っていると思っている。しかし、今のところその根拠はこの山本昌さんの言葉しかない。


今回のキャンプでは、手術明けの入江投手は2軍の嘉手納に合流する予定だったが、京山将弥投手のコロナ感染による離脱に伴い、急遽、宜野湾の1軍キャンプに召集された。


「うれしい気持ちと、びっくりした気持ちと、あとはやってやろうと」この言葉に彼の今の思いが詰まっていると思う。


潮目が変わる時というのは、得てしてこうした不測の事態が関係するものだ。
後から思えば、あの時予定外の1軍キャンプ参加があって、そこから道が拓けた、というようなことは今までも何度かあった。


少なくともここまでのところ、手術後の新生入江投手は「持っている」ということになると思う。そして、大事なのはここからだ。上に書いた課題について目に見える様な進歩を首脳陣に見せることができるかどうか。



入江投手は先日ブルペンで他の投手と同じくストレートばかり30球ほど投げたが、それを見守っていた優しい名伯楽の小谷アドバイザーは、「投球メカニック的には何も問題ない」と仰っていた。


その他、小谷さんから色々と指導を受けた様で、「一つ一つの言葉に重みがあった」と入江投手も気付かされることがあったようだ。


昨日はコロナ禍で来日の目処が立っていないブルックス・クリスキー投手の誕生日だったそうで、練習の合間に投手陣が集まって彼に動画のメッセージを送ることになった。


私はその作成現場の動画を見たのだが、スタッフの方から、「この時勢なので誰か一人がハッピーバースデーを歌って、他の選手は手拍子をすることにしたいと思います。誰か歌ってくれる人はいますか」と聞かれて、入江投手が真っ先に手を挙げていた。


彼のバースデーソングは少し音程が怪しいものだったが、大きな声で元気よく、ディア クリスキーと言う箇所も間違えずにこなしていた(欲を言えば、ディア ブルックスの方が良かったか)。


来日予定が立たずヤキモキしているであろうクリスキー投手も、「素晴らしい誕生日プレゼントだ。いつでもそちらに行ける様準備はできている」と直ぐに返信していた。


入江投手は性格的にもベイスターズ投手陣の新しい色取りになる様な選手だし、何とか1軍のバッターと戦うために必要な武器を身につけてこのままシーズンを迎えることができるよう祈っている。


入江投手の起用法については、三浦監督も先発か中継ぎかを未だ決めていないようで、今後の紅白戦やオープン戦での出来を見ながら決めて行くことになるだろう。いずれにしても、これから数ヶ月の楽しみがまたひとつ増えた。


何かにつまずいて暗闇のどん底に落ちても、才能は消えないわ。


ただ見つかりにくくなるだけ。


落ち込んだ時に暗闇の中の小さな光を探すのよ  


レディー・ガガ