mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

濱口遥大のことを忘れてやしないか?





濱口遥大投手のNPBにおけるキャリアの中で一番のハイライトは、これまでのところ2017年の日本シリーズだろう。


この年ベイスターズは日本一になった1998年以来の日本シリーズ出場を果たした。
対戦相手は当時最強のソフトバンクホークス。下馬評は圧倒的にホークス有利で、ベイスターズは4連敗で終わるのではないかと言われていた。


大方の予想通り、福岡での第1戦と第2戦でホークスに敗れ、舞台を横浜に移した第3戦も勝利の女神は我々に微笑まなかった。


3連敗であっという間に後が無くなった。


人々の声は、ベイスターズは弱すぎて話にならない。セリーグの3位チームが日本シリーズに出ること自体おかしいのだ。クライマックスシリーズのあり方を変えるべきだ。と言う批判へと高まった。


しかし第4戦。先発した新人の濱口投手が大きな仕事をやってのけた。
8回ワンアウトまでノーヒットノーランの快挙。ホークスの強力打線は、彼の伝家の宝刀、チェンジアップを全く打てなかった。


その後もパットン、山﨑康晃とつないで継投ながらホークス打線を完封した。打っては、宮﨑と濱口の女房役である高城のホームランなど12安打で6-0の完勝だった。


今までベイスターズを馬鹿にしたりクライマックスシリーズを批判していた人たちは急に静かになった。


そして、この試合で息を吹き返したベイスターズは第5戦も勝ち、王者ソフトバンクを追いつめる善戦を見せた。




だから我々ベイスターズファンは濱口遥大になんとなく頭が上がらないし、前の試合に不調で酷い内容だった時でも、濱ちゃんは次は見違えるようなピッチングで完封勝ちでもしてくれるんじゃないか、と何度でも懲りずに思うのだ。


そして実際、時おり(そう、残念ながら時おりなのだ)、彼は相手を全く寄せ付けないような素晴らしい投球で完封試合を見せてくれたりもする。


簡単に言えば、私の知っている限り、濱口遥大は良い時と悪い時の差が最も大きい投手の一人なのだ。


昨年の今頃、今永投手と東投手の不在ということもあり、濱口投手は開幕投手に名乗りを上げ、ブルペンでの投球の合間に走り回ると言う独自路線のハードな練習を積み重ねていた。


そして、やや呆気にとられた三浦監督が(やや消去法と言う感じもあったが)彼を開幕投手に指名した。


3月26日の開幕試合は巨人戦。濱口投手は明らかに気負いすぎていた。
打者18人に対して奪三振6、与四球5、被安打4、被本塁打1、失点6で3回ノックアウト。それから開幕3連敗を喫し、初勝利は6試合目の4月29日だった。


17試合登板、5勝7敗、防御率3.94と苦しいシーズンに終わった。
9月1日に故障で離脱し、そのままシーズンを終えたこともあり、このところ濱ちゃんのことがあまり話題ならない日々が続いている。



ちょっと待ってくれ。みんな2017年のあの日のことを忘れたのか?


私は、何かひとつのきっかけで濱口遥大が年間10試合くらいは相手打線を完全に沈黙させるような大投手になる夢をまだ全く捨てていない。


とは言っても、濱ちゃんにコントロールを磨けとか、悪い時も悪いなりにまとめられるようになって欲しいなどと注文をつけるつもりは毛頭ない。


力のある速球を武器に通算100勝を上げ、中日とソフトバンクでは日本一も経験した中田賢一投手も制球難で「暴れ馬」とも称された。彼は昨年引退する際、そのことについてこう語っていた。


「(暴れ馬というのは)自分の中では好きな言葉。(中日時代の)落合監督にそういう投手は打ちづらい、スタイルを変えずにどんどん強い球を投げなさいと言ってもらった」


そうだ。濱ちゃんには、スタイルを変えずにどんどん強い球を投げて欲しいのだ。


昨シーズンの挫折は、今永投手も東投手も外人選手も居ない状況で暴れ馬の濱ちゃんが大黒柱の役割を演じようとしたミスマッチが原因だったのだと思う。この気負いと丁寧に行かなくてはという慎重さが彼の良さを消してしまった。


彼の大袈裟なほど大きな真上からの腕の振りで、低めに威力あるストレートと同じフォームと軌道で大きく沈むチェンジアップを決められたらバッターはなかなか打てるものではない。しかも、そこを狙って待っていても荒れ球で意味不明のコースに来たりもする。だから、不調だった去年でさえ被打率は低く抑えられているのだ。


昨日のブルペンでは一旦終了と言った後に居残りでピッチングを続け、その後方にはいつものように優しい名伯楽の小谷さんがじっと見守ってしばしばアドバイスしていた。


その甲斐あってか、濱ちゃんのフォームは去年よりも体重移動が速く、躍動感に溢れるものになっていた。
ストレートも威力があるように見えた。


濱ちゃん、今年は4本柱がチームを支えるから、バッターの調子が狂うような重い直球と魔球チェンジアップでひさしぶりに大暴れするところをみせてくれ。


勝っても負けても応援している。