mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

新入団ブルックス・クリスキー投手への期待と不安


ボルティモアオリオールズ所属のブルックス・クリスキー投手が先月末で退団し、アジアでプレーすることになるようだと言うニュースがあった直後、彼は我がベイスターズに入団することがほぼ確定したと言う報道があった。複数のソースからの情報なので、決まったと思って良いのだろう。


ブルックス・クリスキー投手(Brooks Joseph Kriske: 1994年2月3日アリゾナ州スコッツデール生まれ)は、名門南カリフォルニア大 (USC Trojans)でプレーした後、2016年のドラフト6巡目でニューヨークヤンキースに入団した。将来を嘱望されたいわゆる元プロスペクトである。


クリスキー投手は2017年にトミージョン手術を受けたがその後順調に回復。2020年春に3Aに上がり、同じ年の夏にヤンキースでメジャーデビューを飾った。

2021年シーズンも3Aでスタートし、夏にメジャーのロースターに登録された(ヤンキース)。


彼のピッチングは、平均95マイル(152km/h)のフォーシームと同じく85マイル(136km/h)のスプリットという2つの球種で構成されており、フォーシームが全投球数の54%、スプリットが40%を占める。スライダー(6%)も時折投げるがあまり得意ではないようだ。


フォーシームの回転数はMLB平均以上でジャイロ成分がほとんどなく、ホップする球質のようだ。他方、スプリットは球速的にはチェンジアップに近く、よく落ちる。

下の図のように、フォーシームとスプリットの時速には約10マイルの差があり、緩急をつけた投球で高い奪三振率を誇る救援タイプの投手だ。



米国のスポーツ誌でスプリットの特集があり、元巨人の澤村拓一投手と共にクリスキー投手も取り上げられていた。

https://blogs.fangraphs.com/jake-brentz-brooks-kriske-and-hirokazu-sawamura-break-down-their-changeups-and-splitters/


彼は自分のスプリットがスプリットチェンジであり、あえて球速を落として緩急差をつけていると語っている。そして、この球種の握り方(下図)を見せて、ラプソードという近年日本でも導入されている球速、回転数や回転軸などの測定器のデータを詳しく説明している。




こうした詳しいデータが公開されているのは米国のスポーツ文化の優れた点だと思う。

このインタビューの中でも彼は言っているのだが、スプリットチェンジは捕手の右膝めがけて投げるそうだ。これがストライクゾーンからボールに外れて行くと三振奪取率の高い決め球となる訳だが、捕手の膝下から落ちるボールなので必然的にワンバウンドが多くなる(下図)。



ここまでが、今年7月にクリスキー投手の経験した悲しい出来事の背景だ。


7月22日、延長10回裏4-3と1点リードで迎えたレッドソックス戦。前夜に続いて登板したクリスキー投手はMLB記録の1イニング4暴投などで2点を失い逆転サヨナラ負けした。その直後、彼は3Aに落とされ、9月にはチームを去ってオリオールズに移籍することとなった。


この試合をYouTubeで見てみたが、暴投のほとんどは彼の得意なスプリットチェンジがワンバウンドしたボールだった。

特に最初の暴投は真ん中低めからキャッチャーの直前でワンバウンドするボールで、クリンスキー投手としては平常運転。上の図の濃い赤色の部分つまり一番多く投げているボールだ。これを後逸されたら投げる球がない。

日本のテレビ中継だったら、今のは最低限止めてあげないとピッチャー可愛そうですねー、と解説者が言うようなボールだ。実際、このプレーの後、クリスキー投手は平静さを失っていくように見える。


メジャーの捕手はこんなに下手なのか、と思って少し調べてみると、この日のキャッチャーはR. ブラントレーと言う人で、第二捕手のカイル・ヒガシヤマがコロナ陽性と判明したためこの試合の直前に急遽3Aから招集された選手だった。恐らく、クリスキー投手の良く落ちるスプリットチェンジを受けるのは初めてだっただろう。


そう思って動画を見返してみると、ブラントレー捕手はワンバウンドするスプリットチェンジを全くとれる気配がないのだ。


この試合の後、ブラントレー捕手も3Aに降格されていることを見ても、ヤンキース首脳陣は新記録の暴投もクリスキー投手だけの責任ではないと考えたのだろう。


クリスキー投手の3Aでの成績は素晴らしく、25試合で13.2と言う極めて高い奪三振率、防御率も3.68とまずまずだ。しかし、メジャーでは2年間通算で15投球回、奪三振率は11.4と高いが、防御率は14.29と跳ねあがっている。


このブログでも何度か書いたように、私は、来シーズンの我がベイスターズのクローザー候補として、山﨑康晃や三嶋一輝の復活、あるいは伊勢大夢の成長に期待している。

しかし、彼らと競う人材として、奪三振率の高いクリスキー投手が入団することは、さらに期待をふくらませるような話だ。彼の速くノビのあるフォーシームとブレーキの効いた良く落ちるスプリットチェンジはワクワクするような希望でもある。


しかし、連続ワイルドピッチやその後のメンタル的な不安定さは大丈夫だろうか?


先ほどのブラントレー捕手の件もあるように、この点については、壁性能の高いキャッチャーとの共同作業だろう。抑えの投手とともに登場する抑え捕手と言う可能性もあるだろう。

ベイスターズのスカウトや編成もこの点を含め、ベイスターズであれば彼のスプリットチェンジがワンバウンドしたボールを止められるキャッチャーとペアを組ませることができると判断したのだろう。


私はこの判断を信じ、ひたすら期待と希望をふくらませようと思う。