mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

そろそろ横浜DeNAベイスターズの創世記を再開すべき時がきた

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの著した「サピエンス全史」という本はベストセラーになったし、漫画版も出たようなのでお読みになった方も多いと思う。


この本では、冒頭で、人類とその他の動物の最も重要な差異は何かということについての考察を行っていて、著者は共同作業に注目している。


とは言っても、アリから猿まで多くの動物が群れを作って共同作業を行っているわけで、共同作業を行うかどうかという点が人類とその他の動物を区別するポイントになるということではない。


共同作業を行う上で必要な意思疎通の手段の有無だろうか?それも違う。多くの動物は言語以外の方法で必要な情報を伝達する術を持っているそうだ。


問題は共同作業を行う群の規模だ。


ハラリ先生によると、人類以外の動物が一つの目標に向かって共同することのできる群の大きさは最大でも150だそうだ。この上限は、お互いに知り合いであり共通の経験を持つコミュニティの最大規模で、アリから猿まで人間以外のあらゆる動物で同じらしい。


人類はどうだろうか?ピラミッドのような巨大な建造物は数万人の作業員が共同していたし、もっと大人数の軍隊が共に戦うこともあった。さらに、国家ということになると億を超える人口が場合によっては共同することもある(コロナ禍での対策もそうだ)。


再びハラリ先生によると、あらゆる動物の中で人間だけが150人という上限を数桁超えるような巨大な集団を作って同じ目的のもとに共同できる理由は、我々人間だけが、神話、創世記、国生みの物語などの一つの虚構を集団で共有して信じることができることにあるそうだ。

同じ物語を共有することが共通のアイデンティティとなって、巨大な集団が共に働きあるいは戦うことができるようになる。


いつもながら前置きが長くてすみません。


野球チームだって一緒だ。


指導者や父兄まで含めてせいぜい数十人から百人程度の少年野球やアマチュア野球のチームは、顔を知り合っていて共同の体験をしてきたグループ、いわば「同じ釜の飯を食った仲間」としてたたかうことができる。


これが、甲子園常連の強豪や大学野球の有力なチームなどになると話は変わってくるが、彼らは、それぞれ学校という既存の集団としての物語を持っているので数千人といった応援団が駆けつけることができる。校歌や校旗そして学校の歴史といったものがこれだけの大所帯の一体感をもたらすことになる。


これに比べて、プロ野球の球団とそのファンというのは必然性のない寄り合い所帯である。ファン同士はお互いに知り合いではない場合が多い。そしてその数は数十万人から数百万人に達するのだ。


そう。プロ野球チームのファンこそ、共通の物語を必要としている。

そして、巨人や阪神に代表される伝統のチームは100年に及ぶ歴史やかつてのスター選手の偉業そして名勝負といった要素を含む彼らの物語が数百万人に共通のアイデンティティになっている。


福岡ソフトバンクや北海道日本ハムファイターズそして楽天ゴールデンイーグルスなどは新天地にチームが移転してきた時から始まった物語が地域のファンの皆さんを中心としてしっかりと共有されている。



前身の頃から既に横浜にいるが、旧親会社の見当違いな球団経営によって大洋ホエールズから続く物語もレジェント達との繋がりも失ってしまっていた我々横浜DeNAベイスターズのファンは皆で共有することのできるようなはっきりとした物語の無いまま既に10年が経過しつつある。


しかし、球団創立70周年のイベントあたりから始まったDeNA球団の取り組みは、中断してしまったホエールズ〜ベイスターズの物語をつなぎ合わせ、我々ファンが共有することのできるアイデンティティを再構築しつつあるように思う。


石井琢朗、斎藤隆、鈴木尚典、相川亮二といった球団OB等のコーチとしての復帰や、小谷正勝さんのアドバイザーとしての復帰もこうした物語の再生の一部になっていると思う。そして、外国人等の処遇や筒香らの大リーグ挑戦の容認と帰国した場合の復帰要請もDeNAベイスターズという球団の色を決めていく重要な判断だったと思う。



今オフの契約更改は最下位の割には大幅減俸は少なく、個人成績に応じてしっかり年俸アップの査定も行われているように思う。これも、我々の共有する再び始まった物語の雰囲気を醸し出している。


そう、DeNAは球団経営参入から10年をへて、止まっていたチームの物語を再びつむぎ始めることを決めたのだ。そして、私たちは、やっともう一度共通の目的のために一緒に声を出し戦う数百万人の大集団になることができる。