mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

ブルックス・クリスキー投手入団決定 活躍が期待できる理由



米国のエージェントがSNSでつぶやいていた通り、ブルックス・クリスキー投手のベイスターズ入団が決定した。


年俸およそ8000万円の単年契約で2年目のオプション権等の詳細は不明だ。背番号はまだ決まっておらず、今後公表される。


昨年フェルナンド・ロメロが入団した時に発表された彼の年俸がおよそ7000万円だったので、クリスキー投手の方が少し高いのかと思ったが、そうでもないかも知れない。


現在と一年前の為替レートを比べてみると、昨年12月が約103円/ドル、現在が約114円/ドルなので、円換算すると一見差があるようだが、実は二人とも70万ドルちょうどの年俸なのだろうと思う。


この報道を受けて、ネット上ではベイスターズファンから様々な意見が寄せられている。

主だったものは次の通り。


① 奪三振率は高いが与四球が多い。威力のあるボールを投げるがコントロールがよく無いのだろう

② AAAでは奪三振率が極めて高く被本塁打数は少ないということでかなり支配的な投球をしていたようだが、MLBでは奪三振率が低下し(それでも8以上であり十分高いが)被本塁打数が急増している。MLBレベルでは速球が通用しなかったのではないか?NPBではどうだろうか?


最初の点はその通りだろうと思う。彼の投球フォームは、フォロースルーの時に身体が大きく左に流れる(もっと言うと一塁側によろける)ので、精密なコントロールを期待するのは難しいように見える。


ただし、フォーシームの回転数とスプリットチェンジの落ちは優れているので三振奪取能力が高いと言うのもよくわかる。特に、テイクバックが小さく、バッターから見ると前腕と手首が頭の後ろに隠れてしまう、いわゆるショートアームと呼ばれるフォームから急に平均153km/hの速球が来たらタイミングは合わせづらいはずだ。


二つ目の点については判断が難しい。今シーズンの彼のAAA(ヤンキースのみ)及びMLB(ヤンキースとオリオールズ)での成績を書き出してみる。


奪三振率・・・・・・・・・・13.02(AAA) 8.74(MLB)

1試合あたりの与四死球・・・ 4.45(AAA) 4.76(MLB)

1試合あたりの被本塁打・・・ 0.64(AAA) 5.56(MLB)

被打率・・・・・・・・・・・ .155(AAA) .347(MLB)

防御率・・・・・・・・・・・ 3.81(AAA) 14.29(MLB)


このデータで見ると、MLBで特に与四死球が増えたと言うことは無いようだ。奪三振率は若干低下しているがそれでも依然高い水準にある。一番の問題は、被打率が.155から.347へ、そして1試合あたりの被本塁打が0.64から5.56へといずれも急上昇している点だ。

確かに、これを見るとクリスキー選手の投球はMLBレベルでは通用せず痛打された、と言う解釈もできる。


しかし、そう決めつける前にもう一つデータを見てみよう。これは、昨年(2020年シーズン。登板は4試合のみ)での彼の成績である。


奪三振率・・・・・・・・・・19.64(2020MLB)

1試合あたりの与四死球・・・17.18(2020MLB)

1試合あたりの被本塁打・・・ 2.45(2020MLB)

被打率・・・・・・・・・・・ .200(2020MLB)

防御率・・・・・・・・・・・14.73(2020MLB)


相変わらず防御率は悪いが、被打率は低く、また、奪三振率は4試合ながら19.64と言う見たことのない数字を表している。そして、これと同じくらいにすごいのが1試合あたりの与四死球17.18と言うもので、つまり、一イニングあたりほぼ二人は四死球でランナーを出す勘定になる。この年の彼のWHIP(一イニングあたりに出塁を許すランナー数の平均)が2.73なので、実に7割が四死球によるものということになる。


2020年〜2021年にかけてのシーズンオフにヤンキースの投手コーチが四球を減らすことを彼の最優先の課題として挙げたことは想像に難くない。


そして、練習の甲斐あって、恐らく、フォーシームはほぼストライクゾーンに投げられるようになったのではないか?

ただし、ストライクゾーンの厳しいところに投げ切れるだけのコマンド(狙ったところに投げる力)があるわけではなく、甘いコースにいったボールはAAAレベルでは押し込むことができたが、MLBではヒットやホームランとなることが多かったという仮説を立てることができる。


この仮説について、今シーズンのMLBでの彼の投球データを見てみよう。


下の図は、クリスキー投手の2021年MLBでのフォーシーム(左)とスプリットチェンジ(右)のコースの分布を示すものだ。



上の仮説の通り、彼のフォーシームはおおむねストライクゾーン内に収まっている。しかし、甘いコースが多い。真ん中近くに多くのボールが集まっているし、全体として高い。そして、スプリットチェンジはむしろ低めでストライクからボールになるものが多い。


バッターからすると、ストライクゾーンの真ん中から高めはほぼフォーシームなので狙い打ちし、低めはボールになるスプリットチェンジなので手を出さない、という簡単な戦術で対処することが可能となる。


やはり、どうも、以前は暴れていたフォーシームがストライクゾーンの甘いところに収束してきたことによってMLBでは容易に攻略された、というのが彼の2021年シーズンだったように思える。


だとすれば、やるべきことは簡単。フォーシームを低く投げられるようにすることだ。

ネット上では大家コーチにカットボールを習えという声も多いが、私は、フォーシームのコマンド力の向上を最優先するべきだと思う。


恐らくこのためには彼の投球フォームを見直す必要があるのだろう(特に、フォロースルーで一塁側によろけること)。そして、このような指導は斎藤隆コーチそして名伯楽と呼ばれた小谷正勝アドバイザーの得意とするところだ。


なーんだ。やっぱり期待できそうじゃないか。