mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

大田泰示選手がベイスターズに入団した場合の戦術的選択肢



12月9日 日本ハムファイターズからノーテンダーとなった大田泰示選手の獲得に向けてベイスターズが調査を行い、すでに交渉を行ったというニュースが出た。


複数球団が調査という報道も少し前にあったので未だどの様に決着するのかわからないが、実名が挙がっているのはDeNAだけであり、過去の例ではこうした場合には比較的スムーズに決まることが多かったように思う。


大田選手は強打・好守の外野手だが、ベイスターズの外野陣は3人のレギュラーが確立しているベイスターズでは不要なのではないかという意見もあれば、右の代打やオースティンの故障時のバックアップ、桑原の成績が去年のレベルに戻った場合の保険などを考えると良い補強だという声もある。


こうした場合に良くピンズド(ピンポイントでズドン)という言葉が使われる。チーム編成上明確なアナにピッタリはまるような選手を補強するという意味で、これが一番わかりやすい補強の価値だろう。


たしかに、大田選手の獲得はベイスターズにとってピンズドではない。

しかし、ベイスターズの現時点での問題はそもそも明確なアナがあることではないのだ。


1年間戦う中でチームが必ず直面する様々な困難な状況でベストメンバーが組めなくなった場合でも戦力が落ちないようにするための選手層の厚みが足りないことにあると思う。

実際、今シーズン初めに外国人選手の入国が遅れた時やオースティンが故障した時期などは戦力低下が顕著だった。


大田選手の獲得は、この「厚み」を増すという意味で非常に価値があると私は思う。

今日の記事ではこの厚みということを様々な状況での戦術的な選択肢がどの様に増えるかということで考えてみたいと思う。


まず、登場人物のデータをざっとあげておく(敬称略)


大田泰示

打撃 キャリアハイ(2019年)

試合数132、打率.289、出塁率.325、盗塁6、本塁打20、打点77、OPS .776(前年は.812)

打撃 2021年

試合数76、打率.204、出塁率.257、盗塁1、本塁打3、打点20、OPS .556

守備(通算)

一塁手 34試合  守備率.973

外野手 653試合 守備率.993


佐野啓太

打撃 キャリアハイ(2020年)

試合数106、打率.328、出塁率.395、盗塁0、本塁打20、打点69、OPS .927

打撃 2021年

試合数143、打率.303、出塁率.376、盗塁1、本塁打17、打点72、OPS .842

守備(通算)

一塁手 21試合  守備率.991

外野手 326試合 守備率.981


タイラー・オースティン

打撃 キャリアハイ(2021年)

試合数107、打率.303、出塁率.405、盗塁1、本塁打28、打点74、OPS 1.006

守備(2020年度までの通算)

一塁手 100試合 守備率.997 (MLB)

外野手 61試合 守備率.988


桑原将志

打撃 キャリアハイ(2021年)

試合数135、打率.310、出塁率.369、盗塁12、本塁打14、打点43、OPS .843

守備(通算)

一塁手 4試合 守備率.909

外野手 692試合 守備率.986


ネフタリ・ソト

打撃 キャリアハイ(2019年)

試合数141、打率.269(前年は.310)、出塁率.348(前年は.364)、盗塁0、本塁打43、打点108、OPS .902(前年は1.002)

打撃 2021年

試合数123、打率.234、出塁率.302、盗塁0、本塁打21、打点62、OPS .738

守備(通算)

一塁手 213試合 守備率.995

二塁手 138試合 守備率.977

外野手 194試合 守備率.987


こうして並べて見ると、打撃に関しては、オースティン、桑原、佐野の今シーズンの好調ぶりと大田、ソトの不調ぶりが際立っている。また、好調時のオースティンとソトの破壊力は凄まじく、二人とも揃えば凄い打線になる。

なお、桑原は昨年までの不調から今季飛躍的に成績を伸ばしており、これが継続できるかどうかが鍵だろう。


守備に関しては、ファーストで行けそうなのが(他のポジションよりはマシという場合も含めて)、ソト、佐野、大田、オースティン。

そして、外野は全員がこなせると言いたいが、ソトのライトは非常に怖かったのでできれば避けたい。


さて、それでは大田泰示選手がベイスターズに入団した場合に戦術的選択肢を考えてみよう。


① 右の代打として

今シーズン、左の代打としては楠本泰史が台頭し、かなり高い代打率を維持した時期があった。来年はさらに飛躍し、レギュラー3人を脅かすと共に、代打の切り札としての切れ味を増して欲しい。


しかし、右の代打となると少し寂しい。新人時から期待された細川は伸び悩んでおり、2年目だった蛯名達夫はファームで好成績を収めたが一軍では一割台の打率にとどまり、10月に入って右足関節のクリーニング手術を受けた。


試合後半に左のセットアッパーが出てきた時などは手詰まりの感があったので、ここで大田選手がピッチャーや下位打線の左の野手(戸柱、柴田など)の代打として勝負強いバッティングを見せてくれると大変心強い。


② 試合後半の守備固めとして

今シーズンも試合後半にオースティンやソトを下げる場面はしばしばあった。この場合も、代わりに出てくる選手たち(関根や神里など)には申し訳ないが、打席が回ってきた際のスタメン二人との迫力の差は目立っていた。


例えば、8回終了時に守備固めの交代をして9回表に逆転されたとする。9回裏の攻撃で再逆転できるか、打順はちょうどクリーンアップだ、と言った場合に、4番が守備要員だとやはりガッカリする。


この様な状況で大田選手が出てきたら相手バッテリーとしても警戒せざるを得ず、先頭バッターを四球で出塁させて崩れていく、と言ったシナリオはかなり予想しやすい(と言うか、逆にベイスターズがこう言う攻めをされて窮地に立ったことが何度かあった)。


③ オースティン故障時のスタメンとして

タイラー・オースティンは誰もが認めるNPB屈指の強打者で守備や走塁でも積極的なプレーを見せてくれるスター選手だ。

しかしそれだけに故障のリスクもある。実際、去年も今年も彼が故障で離脱した時期はあった。


来シーズンも入国が遅れると言う事態はさすがに回避してくれると思うが、今シーズン序盤の得点力不足を思い出せば、オースティンの故障離脱時の打線のレベル低下を回避する策は極めて重要だと思う。


ここでも、かつてシーズン20本のホームランを放ったこともある大田選手がライトのスタメンとして出場してくれれば、相手バッテリーに対して一定の圧力をかけることができる。


④ ソト不調時の代役として

ソトの今シーズンの成績は入国の遅れによる調整不足やスランプというものかも知れない。しかし、2年連続して本塁打王のタイトルをとった2018年、2019年以降、各チームの研究が進んで攻略法が編み出されたように見える時もある。


そうだとしても、ソト選手がさらに研究・研鑽することで乗り越えて行って欲しいと思うし、場合によってはラミレス前監督に臨時コーチをお願いすると言った方策も考えられると思う。


しかし、リスク管理としては、ソトの成績が今年と同等以下となるケースも考える必要があるだろう。

この場合、巨人時代にファーストを守っていた大田選手が代わりを務めることも考えられるし、一塁手が本職だったこともある佐野やオースティンがファーストに入って、大田選手が日本ハムでも守りなれたライトあるいはレフトを守ってスタメンと言うことも考えられる。


⑤ 桑原不調時の代役として

リスク管理という意味で言うと、数年ぶりに復活した桑原が来シーズンも同じように活躍してくれる(ことを祈ってはいるが)と決めてかかることはできない。

この場合、巨人時代後半に主戦場としていた中堅手として桑原の代わりをつとめることもできるだろう。


⑥ 佐野あるいはオースティンのファーストへのコンバート時の外野レギュラーとして

ソトの不調が上に述べた理由で長引き、場合によっては復活が難しいと判断せざるを得ないケースもある。

この場合には、佐野あるいはオースティンをファーストにコンバートすることが考えられる。もしかすると来春のキャンプではこの様なオプションの試行が始まるかも知れない。


この戦術を採る場合には、一つ空く外野のレギュラーポジションを巡って競争ということになるが、神里、関根、細川、楠本、蝦名と言った選手に加えて実績十分な大田選手がいれば、この競争はかなりレベルの高いものになるだろう。


いずれの選択肢もそれが効果的な戦術となるか否かは大田選手が2020年シーズンまでのような輝きを取り戻せるかどうかにかかっている。


まずは、大田選手の去就について続報を待つこととしよう。