mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

これからまた3年三嶋一輝とともに歩もう



12月10日 三嶋一輝投手がベイスターズと3年間の契約を新たに結んだというニュースがあった。


年俸1億2000万円(現状は1億1000万円)の変動制とのこと。恐らく、最低年俸として1億2000万円が保証されていて、成績に応じて上積みがあるという契約だろう。


三嶋投手は、順調にいけば、来シーズン中にFA権を取得することになるので、早くもその後の残留が決まったことになる。

FA前年の複数年契約というのは、他のチームでは時々耳にしていたが、ベイスターズでは初めてのことだと思う。


親会社がDeNAになった直後は未だ球団経営のノウハウも十分ではなく、全てが試行錯誤という感じだったが、それから10年を経て、やっと大人の球団になってきたように思い感慨深い。


今オフの球団の動きはしっかりした原則に基づく合理的なもののように見えるし、我々ファンの心情からしても納得できる部分が多い。


FA権を取得した宮﨑選手や大和選手そして山﨑康晃投手の残留もそうだし、昨日入団会見のあった藤田一也選手の復帰もそうだ。

私にとって、今回の三嶋投手のFA前の複数年契約の知らせもとても嬉しいものだった。


昨年オフにFA宣言した二選手の引き留めがさほどでは無かったことを考えると(相手が金満球団だったことを差し引いても)、今年の球団の動きは大きく異なるように見える。


巷で言われている様に、関連企業のゲームアプリの大ヒットやNPB参加時の保証金の返還等による財務状況の好転ということもあるかも知れない。

しかし、それ以上に、フィールド内外でのチームへの献身、後輩の指導やファンサービスと言った貢献、そして怪我なく安定してプレーを続けられることを重視した結果が上に挙げた各選手への高評価となっているのだと思う。


今シーズン、試合終盤で伊勢投手と砂田投手が打ち込まれた後を三嶋投手がピシャリと抑えた試合があったが、イニング間にベンチでこの二人の背中に手をかけて親しく話し込んでいる姿が見られた。

また、牧秀悟選手に対する三嶋投手の世話焼きの様な姿も私は非常に微笑ましいと思って見ていた。


私は以前から三嶋投手のフィールディングはとても良いと思っていた。

今シーズンも走者一塁でのバントの際にきわどいタイミングで2塁でアウトをとったことがあったが、前方へのダッシュと二塁送球の速さは出色のものだった。


法政大学野球部の仲間だった依田徹平氏がYouTubeで配信しているBaseball Futureというアマチュア選手向けの野球関連の動作解析や指導の動画でも、三嶋投手は度々登場し、バント処理やけん制球について技術的なポイントを的確に解説している。


三嶋投手は、怪我が少なく、また、グラウンド内外での日頃のふるまいを見ても、こうした貢献という意味で評価の高い選手であることがうかがえる。


さて、そうは言っても、肝心なのは本業のピッチングである。


昨年と今年の成績を比べてみよう(略語に不慣れな方のために少し補足すると、WHIPというのは投手が1イニングに四死球やヒットで平均何人のランナーを塁に出すか、K/BBというのは四死球を一つ出す間に平均何個の三振をとることができるか、という数字です)。


2020年 

試合数48、投球回数47.2

勝利3、敗戦1、ホールド5、セーブ18

被打率.185、WHIP0.90 被本塁打1、防御率2.45

奪三振率8.69、K/BB 3.54


2021年 

試合数59、投球回数57.1

勝利3、敗戦5、ホールド1、セーブ23

被打率.287、WHIP1.36 被本塁打8、防御率4.08

奪三振率8.95、K/BB 4.75


昨シーズンの三嶋投手は多くの指標でキャリアハイを記録しており、特に、防御率(プロ入り後9年間の平均は4.41)、被打率(同じく平均は.259)及びWHIP(平均1.41)は彼のこれまでの平均よりもかなり良化していた。


これに比べると、今シーズンは厳しい数字が並んでいる。特に、被本塁打数が大きく増加し、被打率とWHIPもかなり悪くなっている。

その結果、2点台だった防御率が4点台まで上がってしまっている。


抑えやセットアッパーとして喫した5つの敗戦は我々ファンにとってもかなりショックだったが、本人はもっと辛かっただろうと思う。

以前このブログでも書いたが、彼自身、苦しい心境を次の様に赤裸々に語っていた。


「この順位を含めて、大事な時期に踏ん張れなかった、とずっと思っていた。僕自身も初めてクローザーの場面で逆転されたり、同点を守れなかったり。五つの負けが付いている。9年間で一番悔しい思いをした。一番泣いたし、寝られなかったことも多かった」


「この前は、投球練習中に何でそこに投げられないんだ、と。悔しくて、情けなくて。そんな経験は初めてだったし、人前で弱い姿は出したくない。1人の時は泣いたり、暴れたり。そこで吐き出して切り替えていた」


聞いているこちらも辛くなる。


しかし、実は今年、昨シーズンと比べて良くなっている点が一つある。奪三振率が8.69から8.95に上がり、K/BBが3.54から4.75と改善されているのだ。

私は、むしろ、この変化の方がベイスターズ首脳陣と三嶋投手の目指したもので、その副反応で打たれたのではないかと考えている。


奪三振率とK/BBの良化は、つまり、今シーズン三嶋投手がストライクゾーンで勝負しようとしたことを意味しているように見えるのだ。そして、これはラミレス前監督から三浦監督に代わってからのベイスターズのピッチングスタッフ全体の方向転換だったのだろうと思う(シーズン前半の先発陣が壊滅し外国人投手も不在だった時に球数を減らすという切羽詰まった事情もあったかも知れない)。


ストライクゾーンで勝負するのは理想的なピッチングであり、もちろん、それができれば最高だ。しかし、このスタイルで勝つために必要な要素のうちどれかが欠けていた場合、痛いしっぺ返しを喰うことになる。


三嶋投手の2021年のコース別の被打率のデータを見ると、興味深い傾向がある。

https://baseballdata.jp/playerP/1200049_course.html


右打者のインコースは高低によらず打ち込まれており(インハイ.375、真ん中.556、インロー.667)、左打者の真ん中も高低によらず打ち込まれている(高め.400、真ん中.533、低め.462)。


私の記憶でも、左打者のインコースを狙ったストレートがシュート回転して真ん中に入って長打になったシーンや、右打者(山田哲人選手たちだったと思う)のインハイに不用意に投げたストレートが3ランホームランになったシーンなどが、特に思い出したくはないが、刻み込まれている。


彼としては、こうした打ち込まれたコースを外してストライクゾーンで勝負したかったのだろうと思うが、上手くいかなかった。それが、「投球練習中に何でそこに投げられないんだ、と。悔しくて、情けなくて。」という彼の苦悩に現れているように思う。


今回の3年契約を結んで、三嶋投手はこう言っている。


「球団から『うちにいてほしい』と言っていただき、うれしかった。ベイスターズのために腕を振りたい」


「九回にやられた悔しさは今でも忘れられない。今まで通りじゃだめ。高校時代(福岡工)のように浜辺や山を走る。原点に戻る」


来シーズン、三嶋投手が2020年に成功したパターンに回帰するのか、あるいはストライクゾーンで勝負するための精度に磨きをかけるのか、今年チームに復帰した斎藤隆コーチと名伯楽の小谷正勝アドバイザーが最善の方法を見つけてくれるだろう。

そして、三嶋投手はこれまでもそうだったように、これ以上は無いという努力をしてくれるものと私は信じて疑わない。


前回のブログでも書いたが、我々ファンのすべきことは、次のような歌を心の中で歌いつつ、彼の辛く厳しい道を共に歩むことだと思う。


嵐の中を

顔を上げて前を向き

暗闇を恐れず歩もう


嵐の先には

きっと金色に輝く空があり

ひばりが美しくさえずる


そうだ 歩き続けよう

希望を胸に

そうすれば君は決して一人にはならない

さあ一緒に歩もう


※英国プレミアリーグの古豪リバプールが劣勢の時にサポーター全員で歌うYou’ll never walk alone.という応援歌の歌詞を私が抜粋し適当に意訳したものです。