mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

ベイスターズファンの小さな勲章



あれは2017年 日本一になった1998年以来の日本シリーズ出場を果たした年だった。


対戦相手は当時最強のソフトバンクホークスだ。下馬評は圧倒的にホークス有利で、ベイスターズは4連敗で終わるのではないかと言われていた。


案の定、初戦から3連敗して後がなくなった。


人々の声は、“ベイスターズは弱すぎて話にならない。セリーグの3位チームが日本シリーズに出ること自体おかしいのだ。クライマックスシリーズのあり方を変えるべきだ。”と言う批判へと高まった。


しかし第4戦。先発した新人の濱口投手が大きな仕事をやってのけた。

8回ワンアウトまでノーヒットノーランの快挙。その後もパットン、山﨑康晃投手とつないで継投ながらホークス打線を完封した。

打っては、宮﨑選手と濱口の女房役である高城捕手のホームランなど12安打で6-0と完勝した。


人々の声はあっと言う間に鎮まった。


続く第5戦もベイスターズが接戦を勝利した。

4回に筒香選手のシリーズ第1号本塁打で逆転するとその後再度リードを許したが、6回に再び筒香が適時二塁打を放ち、宮崎選手の中前適時打で同点。

更に嶺井選手の二ゴロをソフトバンクの明石選手がファンブルし、再逆転に成功した。


DeNAは8回表2死から抑えの山崎投手を投入、ソフトバンク柳田選手を空振り三振に仕留めた。9回も山崎が続投して無失点に抑え、5-4の勝利だった。


人々の声は、ベイスターズなかなかやるじゃないか。ベイスターズの野球は面白い。と言う評価に変わっていった。


そして迎えた運命の第6戦。舞台は再び福岡に戻った。


その試合でもホークスに先制を許したが、今永昇太は7回をその一点で抑えた。その間、5回には白崎選手のソロホームラン(ソロ崎)とロペスのタイムリーで3点をあげ、9回二死まで3-2とリードしていた。ベイスターズファンの祈りが通じたかと思った。


ピッチャーは山﨑康晃、バッターは内川聖一。決め球のツーシームを内川選手がすくうように打つと無情にもレフトスタンドに消えていった。3-3の同点だ。


そして、延長11回裏。川島選手のライト前ヒットでランナーは強行してホームに突っ込み、梶谷選手の送球は大きくバウンドしてキャッチャーがとることができず後逸してサヨナラ負けとなった。


梶谷はその後、肩の手術をしており、この試合の守備練習から梶谷の送球が万全ではないことをホークスベンチは気づいていたらしい。その上での強行策だった。


工藤監督以下ホークスの首脳陣も最後は余裕をなくしてなりふり構わぬ本気の勝負だったようだ。試合後に工藤さんが涙ぐんでいたことからもそれがわかる。


そして、この試合で回またぎの3回を完璧に抑えたクローザーのサファテ投手は、鉄人に見えたが、その後、股関節の怪我等で悩み引退に至ることとなる。やはりここでの無理がたたったということはあっただろう。


その時、私はどうしても断れない仕事でシドニーにいた。

1960年の大洋ホエールズ初めての日本シリーズの時はまだ生まれておらず、1998年はイギリス在住。そして今度はシドニー。


実は私はベイスターズの日本シリーズを一度もリアルタイムで観たことがないのだ。


長い暗黒時代を耐え忍んできた我々ファンにとって、この年のアレックス・ラミレス監督率いるベイスターズが日本シリーズと言う大舞台で絶対王者ソフトバンクホークスに大健闘したと言う事実は言葉では表せないほど嬉しいものだった。


そして、皆がこの先のベイスターズの明るい未来を予感したものだった。


試合が終わると、私は、南十字星に向かって叫んだ。見てろ。次こそはやってやるぞ。

しかし、その「次」と言うのはまだ来ていない(2021年12月時点)。


日本シリーズ終了後、週刊ベースボールで、「応援している球団、若手が育っている球団、羨ましい球団など、あなたが選ぶ2017年一番魅力的な球団を教えてください」という読者アンケートがあった。


アンケートの結果は以下の通り。



DeNAベイスターズが全体の84%を獲得し、3%で2位のソフトバンクを極端なほど引き離してぶっちぎりのトップだった。ジャイアンツが1%など他のセリーグのチームはそろって低調だった。


日本シリーズ直後の瞬間値であり、その時だけだと人は言うかも知れない。

しかし、私はこれが我々ベイスターズファンにとっては大きな意味を持つと思う。


先日公開された2021年ベイスターズのドキュメンタリーBay Blue Bluesでも、冒頭のDeNA首脳による三浦監督就任要請のシーンで、南場会長が、


“一つだけ約束して戴きたい。試合を見ていらっしゃるファンの皆さんがワクワクするような楽しい野球をやってください。”


と言っていた。ラミレスベイスターズの見せてくれたあの2017年のハラハラ、ドキドキするような野球は球団の文化として意識的に受け継がれているのだ。


暗黒時代、毎年最下位を独走していたのでセリーグには所属しておらず1チームだけ別のリーグ(ベリーグ)で戦っていると言われていたベイスターズが、多くのファンに応援され、他チームのファンにも羨ましいと思われ、一番魅力的だと言われる「ワクワクするような楽しい野球」を球団全体が一体となって実現した。


我々はこう言うチームのファンなのだ。

これが私の小さな勲章だ。