牧秀悟選手の来年のシナリオ
このブログでも何度か取り上げたように、今シーズンの牧秀悟選手は素晴らしい成績をおさめた。
主なものだけ挙げても、次の通り。
打率.314(新人歴代2位) 、22本塁打(新人歴代8位)
14度の猛打賞(新人歴代1位) 、4度の1試合4安打(ルーキー初)
35二塁打(セ・リーグ新人1位) 、5打席連続二塁打(NPB初)
260塁打(新人歴代2位) 、サイクルヒット達成(ルーキー初) 、
新人として望み得る最高の成績であるだけでなく、リーグ全体を見渡してもまさに「一流」の仲間入りをしたと言えるだろう。
球団もこの成績に加えてグラウンドやベンチでチームを鼓舞する「ベテラン新人」と呼ばれる姿勢も評価して1300万円から5倍以上の年俸7000万円(5700万円アップ。推定)と新人野手最高の金額で契約を更改した。
惜しくも新人王のタイトルはカープの栗林投手に譲る形となったが、新人特別賞を受賞し、表彰式の壇上では
「来年はこの数字より少しでもいい成績を残したいですし、賞を取ってここの舞台にまた帰ってこれるように頑張って行きたいと思います」
と誓った。具体的には「いつかは打点王を取って帰ってきたい」と勝利に貢献する覚悟だ。
実際、牧選手のテイクバックの小さい、コンパクトで力強いスウィングは本当にこれからの成長を楽しみにさせてくれるものだ。
今シーズンの素晴らしい成績も通過点に過ぎず、これから球界を代表するスター選手への階段を駆け上がっていく姿が目に見えるようだ。
と言うように、
期待は膨らむばかりなのだが、リスク管理という意味では、何らかの理由で来年の牧選手の成績が芳しくない可能性も想定しておく必要があるように思う。
もちろん、このブログを牧選手本人が読むとは思えないので、ここで言うリスク管理というのは、私自身そして志を同じくする牧ファンの皆さんの心の準備という意味あいのものだ。
そこで、持ち前の心配症の本領を発揮して、来年の牧選手の打撃成績が低下するシナリオを技術(他チームの対策)、体力等の本人の状態、プライベートのそれぞれの観点から考えてみた。
① 技術(他チームの対策)に関するシナリオ
まず考えられるのは、今シーズンの好成績を受けて他のチームが対策を練り、マークが厳しくなることで打撃成績が低下するというシナリオだ。
しかし、牧選手の今シーズンの打撃パターンを見ると隙らしいものはほとんど見当たらない(それでもアナを探すのがプロのスコアラーのすごいところなのだろうが)。
まず右腕と左腕投手の対戦成績を見てみると、右ピッチャーに対して打率 .303 、左には .346とどちらも全く苦にしていない。
ゾーン別の打率を見ても、腰の高さは外角が.328、真ん中 .408、内角 .366と得意にしていて、高めも外角 .317、真ん中 .361、内角 .294と大好物だ。
低めはさすがに少し難しいが、それでも、外角 .238、真ん中 .338、内角 .250とまずまずである。
アウトローのぎりぎりをフォアボール覚悟で攻めるという方法はあるかも知れないが、ベイスターズの場合、牧選手の前後に佐野選手、オースティン選手、宮﨑選手、ソト選手といった強打者が並ぶためこれも難しいだろう。
他方、球種という意味では、ストレートの打率が .364と12球団トップで、フォークボールに対しても .333(阪神中野選手、オリックス吉田選手に続いて3位)と得意にしている。
ストレートに関しては150km/h台までしっかりヒットにしており、さすがに160km/h付近は打てていないが、NPBでここまで速いボールを投げられるピッチャーは限られているのでとても隙とは言えないだろう。
打球方向も、レフト線からライト線までの90°を5分割したゾーンそれぞれの割合が、左から順に26%、25%、18%、18%、14%と広角に分散しており、守備シフトも難しそうだ。
こうして見ると、他チームの対策で大きく成績が落ちるというシナリオは考えにくい。
あるとすると、オースティンはじめ他の主力打者が故障その他の理由(来年はキャンプ中から入国できますように)で不在の場合にマークがきつくなり四球覚悟でアウトロー攻めを徹底されるくらいだろうか。
② 体力等の本人の状態に関するシナリオ
今シーズンの牧選手の月間打率の推移は次の通り。
3月 .381
4月 .268
5月 .265
6月 .322
7月 .194
8月 .378
9月 .296
10月.452
4月、5月に少し打率が低下したのは、いわゆるプロの壁に当たったというもので、プロのストレートに振りまけないような対策をとって回復している。この辺りの修正力の高さも牧選手の将来が明るいと考える大きな理由の一つだ。
しかし、六月後半から長いシーズンで毎日の試合と頻繁な移動や蒸し暑さといった体力的な問題が生じて、交流戦の最終戦でゴロの捕球からランニングスローという一連のプレーの中で腰を故障してしまった。
その後、試合に出たいという一心で故障を隠していたが成績は低下し、7月には打率が1割台にまで下がった。
しかし、牧選手が幸運だったのは、この時期に東京オリンピック期間中の休みがあったことだ。その間に故障は完治し、体力も回復して後半の怒涛の大活躍に繋がった。
もちろん来年はオリンピック休みが無い。牧選手は初めて休みなく1シーズンを通して試合に出続けることとなる。
このように考えると、夏に体力低下やそれに起因する故障があってその後回復しないあるいは打撃の調子が戻らないままシーズンを終えてしまうというシナリオは技術面の理由よりは考えられるように思う。
このシナリオに対しては、夏の不調の原因をしっかり検討して、シーズンオフに一年を通して戦える体力を身につけるとともに夏場の体力回復方法などをしっかり準備してほしいと思う。
また、故障時にチームにそれを伝える勇気も必要だが、彼はもう既に今年の失敗からそれを学んでいることだろう。
一方、牧選手自身は守備を改善できるように頑張るというコメントを残している。
彼の二塁手としての守備の指標UZRは-2.3だ。
この数値は巨人の吉川尚輝選手(9.2)やヤクルトの山田哲人選手(7.1)には遥かに及ばないが、楽天の浅村選手(-5.4)や阪神の糸原選手(-9.6)は上回っている。
意地の悪いシナリオをあえて考えれば、守備練習に集中するあまりバッティングがおろそかになって調子を落とすと言う可能性があるかも知れない。
上記のUZRは確かにNPB平均をやや下回るものではあるが、打撃面での好調を考えればお釣りがくる程度のものと思う。
ファンとしては、あまり気にせずに得意な打撃で活躍して欲しい。
③ プライベートに起因するシナリオ
プライベートに関しては、心配すればキリが無いので、以下に思いつくままシナリオを挙げておく。
・フジテレビの女子アナとの交際にうつつを抜かす
・キャバクラでの夜遊びにうつつを抜かす(あるいは球団のルールに抵触して謹慎)
・新車のアウディでのドライブにうつつを抜かす(あるいは事故を起こして謹慎)
・新しい髪型が決まらずに迷走して野球がおろそかになる
・チョコレートソースをかけたドーナツが大好物になって体重オーバー
・体力強化のためにプールでバタフライを練習していて真剣になりすぎ、ゴールの時に両手10本の指全部を突き指する
・上茶谷投手にフォームをモノマネされてその誇張がフォームに反映され自分のバッティングを見失ってしまう
まあともかく来年も野球に専念して欲しい。
それにしても、人生というのは人生ゲームのようだ。何が起きても不思議ではない。
以前も書いたが、50年くらい前の黒衣の花嫁という古いフランス映画の中で、何故か記憶に残るセリフがあった。
楽観論者と悲観論者は、幸せな馬鹿と不幸せな馬鹿だ。
だとすれば、やはり、私は幸せな馬鹿になって、来シーズンに牧選手が今年以上の大活躍をすることを信じて楽しい年末年始を送ることにしよう。
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