mizuyashikiのブログ

横浜ベイスターズを中心にその時に考えていることを書きます。

年の瀬に山﨑康晃がリスペクトを取り戻すことを願う



プロ野球の投手、特にクローザーはメンタルが重要だと言われる。


本人のメンタルはもちろんのこと、対戦する打者のメンタルも重要な要素となる。

そして、スタンドを埋め尽くす(コロナ禍の今は出来ないが)我々ファンのメンタルだってクローザーとバッターの一対一の勝負に影響を与えていることだろう。


新人王を獲った年から、山﨑康晃投手はこの心理戦で優位に立って来た。


絶対的な決め球であったツーシームの存在が打者を追いつめていたし、ゾンビネーションの登場曲と共にスタンド中のファンのうねるような康晃ジャンプも味方にしていた。


しかし、昨年半ばあたりからこの関係性は崩れつつある。


彼が最終回で対戦するバッターには余裕があるように見え、伝家の宝刀ツーシームもボールになるコースは見極められ、浮いて甘く入った球は半速球のように痛打される。


そして、セーブ失敗が続くと、かつて歓声を送りジャンプしていた人たちは、彼の体型や生活など色々と批判し始めた。


最終回の心理戦のバランスの逆転には、その根本に山﨑投手に向けられていたリスペクトが失われつつあると言う現状があるように思えてならない。


彼はもう一度このリスペクトを取り戻し、心理戦のバランスを再逆転させること、相手チームに「9回は山﨑が出てくるからまずいぞ。」と思わせることはできるだろうか?


現状に到った背景として、私は、対戦相手による攻略と山﨑投手自身の不調と言う二つのファクターがあると思う。これらのそれぞれについて、彼に逆転の目はあるのだろうか?


① 対戦相手による攻略の上をいく対策


今日の記事によると、打者にツーシームを見極められると言う問題に対して、山﨑投手は次のような対策を講じてきたと言うことだ。


「今季は新たな球種で投球の幅を広げた。初めてツーシームとスプリットを分けてみた」


「縦割れのスライダー、カーブを投げた」


「いろんなことを試行錯誤してやった結果、前半戦に関しては非常にチームの力になれたなと思っている」


これらの対策の全てが有効だった訳ではないだろう。しかし、彼の投球の引き出しが増えたことは確かだ。


思えば、彼は新人の時から圧倒的な成功を収めてきたために、大学時代に磨いたコアとなる球種二つのみで勝ち続けてきたと言う経緯がある。


新人時代のオリエンタルラジオのように、この挫折を知らない成功にはつまづいた時の引き出しの無さと言う脆さもまた同時に生んでしまっていたのではないか?


彼の最初の大きな挫折である今の状況は、彼に本当の意味の強さと巧さそしてズルさも与える好機なのかも知れない。


② 山﨑投手自身の復調


しかし、こうした変化球が生きるも死ぬも、その生命線となるのはストレートのキレなのだ。この点についても、山﨑投手自身が次のように言っている。


“来季は球種を増やすことはあまり考えていない。


クオリティーを全体的に底上げしたい。


特に直球を磨き直し、強さを取り戻すつもりだ。”


実際、今シーズンも右打者への全投球の3割近くはアウトローに投げ切っていて、このコースの被打率は.043とほぼ完璧に抑えている。


絶対絶命の場面で強く質の良いフォーシームをここに投げ切るコントロールとメンタルを取り戻すことができれば抑え切る確率は高まる。


名伯楽の小谷ピッチングアドバイザーはこう言っていた。


「俺は足だと思うね。左足上げる時に、カーンと勢いよく上げるじゃん。


もう少しゆったり上げれば、何とかなると思うな。


良かった時は、リリースの時に左膝がピーンと伸びてた。今は曲がったままだから、一塁側によろける。」


今年は、彼自身、プライベートでも非常に厳しく悲しい出来事があった。

母子家庭で彼をここまで育ててくれた母のベリアさんが10月に亡くなったのだ。


山﨑投手が新人の年、彼はシーズンシートを買ってお母さんにプレゼントしていた。

康晃ジャンプの後、観戦されていたベリアさんに我々ファンが皆で拍手を送ったこともあった。嬉しそうに微笑んでいらっしゃった顔が記憶に残っている。



冒頭に述べた最終回の心理戦において、彼のこの心のダメージが無視できないものだったことは想像に難くない。このことは、彼の月別防御率の推移にも現れているように思う。


我々には、彼がこの哀しみから立ち直ってくれるのを祈ることしかできない。


来年に向けて、山﨑投手は復帰した斎藤隆投手コーチと二人三脚で進んで行くことを公言している。同じく復帰した小谷アドバイザーの的確な助言もきっと有効だろう。


そして、今冬、ライバルたちが待つ厚木に向かう。

オフの自主トレは今季守護神を務めた三嶋、抑えの座を虎視眈々(たんたん)と狙う伊勢らと行う。


「決して仲良しクラブではない。みんな負けたくない気持ちを持っていると思うので、気持ちを再認識できればと思うと、今から本当に楽しみ」と高揚感に胸を膨らませた。


プロ棋士たちの命がけの勝負の世界を描いた漫画「3月のライオン」で、主人公の桐山零が次のように語る箇所がある。


倒れても、倒れても、飛び散った自分の破片を掻き集め、何度でも立ち上がり進んでいく


私はこの年の瀬に、山﨑康晃投手が飛び散った自分の破片をかき集め、立ち上がって再びリスペクトを集めるという大逆転を見せてくれることを祈っている。